シニアのやる気はどう引き出す?
みなさんこんにちは。今回は仕事における動機づけが、年齢によってどのように変化するのか、というお話です。会社の人口構成が逆ピラミッド型になる中、シニア活用が課題だとおっしゃる人事の方が、増えている印象がありますが、シニアの動機づけ要因は、若者のそれとは変化していくようなのです。
今日の一言サマリ
内的動機でシニアは輝く
参考にした論文
Kooij, Dorien T A M et al., 2011, Age and work‐related motives: Results of a meta‐analysis, Journal of organizational behavior
仕事の動機づけと年齢との関連を調べる研究
仕事の動機と年齢の関連について、過去に多くの研究がされてきましたが、今回取り上げるKooijは、過去発表された86件の研究をメタ分析することでこの関係を明らかにしようとしました。
わかったこと - シニアは内発的動機を強める
メタ分析の結果、以下のようなことが明らかになりました。
新たな学習の機会や昇進など、成長関連動機や外的動機は年齢が高くなるにつれて弱まる
(ただし、ブルーカラー労働者では成長関連動機と年齢と正の関係がありました)
Kooijはこの結果を加齢に伴う流動知性(短期記憶など)の衰えによるものかもしれないと推察しています。
達成や仕事上の喜びや既存スキルの活用といった内的動機は、年齢が高くなるにつれて強まる
上記に加え、自律(自分の裁量で仕事が進められること)、興味深い仕事、人助けや社会貢献に対する動機は年齢と正の関係がありました。
実践への示唆
上記のように、シニアの働く動機は、若手とは違う傾向を持っていることがわかりました。ビジネスの現場ではこの知見をどのように活用できるでしょうか。
まず、シニアにとってはやりがいや人助けが重要な動機となるため、組織内でメンター的な役割を与えることはシニアのやる気を引き出すことにつながる可能性があります。過去の経験に基づく指導は、既存スキルの活用にもなり、動機付け効果が期待できます。
また、自律性や達成感、興味深い仕事もシニアの動機となるため、課題解決などのプロジェクトを任せることも有効と考えられます。
一方で、新たなスキル獲得を目的とした学習機会が、達成感や本人の興味などの内的動機と結びつけられることなく提供された場合、シニアの動機づけにはつながらないと思われます。
多くの会社でポストオフや役職定年制度が導入されており、シニアの従業員のモチベーションダウンが課題となっています。働かないおじさん・おばさんというネガティブなワードもメディアで散見されます。
しかしシニアにはシニアの動機づけ要因があり、そこを刺激することでシニアの持つ経験や知見を組織のために投入してもらうことは可能だと考えられます。
私のクライアントに、営業本部長まで勤めたあと役職定年で人事部の一般社員に異動になった方がいらっしゃいます。彼は毎朝5時から自己啓発に励み、キャリアコンサルタントを含む複数の資格を取得したそうです。
このようにシニアでも成長関連動機を高く保っている例もあるため、統計的データを過信することなく、個々の社員と話し合ってその人にとっての動機づけ要因を見つけることが何より重要です。
今回は、年齢に伴う動機付け要因の変化を取り上げました。高齢化時代、各自が自分の動機づけ要因を認識していつまでも輝けるようにしたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?