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路上役者亮佑×シーリア企画「絶唱」ミリしら稽古レポート

※本レポートは、まだ稽古すら始まっていない舞台「絶唱」(12月2日・3日上演)の稽古場を勝手に想像して感想を綴る、全て架空で妄想のレポートです。



◆稽古1日目


路上役者亮佑の朝は早い。
昼過ぎ開始の稽古だとしても、早朝からウォーミングアップを欠かさない。
毎朝必ずラヂオ体操を第一〜第五まで全てこなす。演出家からの様々な要求に応えるために、役者としてどんな動きでもできるように鍛えているらしい。日々のラヂオ体操の積み重ねにより、現在ではスーパーマンの如くビルとビルの間を宙返りしながら飛び渡れるようになった。
それもこれも、今回の「絶唱」のため。一人芝居に必要だと、脚本・演出の白瀬一華に騙されたのだ。
しかし、送られてきた脚本第一稿の登場人物にはスーパーマンもいなければ、ビルも存在しない。代わりに存在するのは「シンクロナイズドスイミング」の文字。
一体どういうことなんだ、話が違うじゃないか。その疑念をぶつけるために本日の稽古の火蓋は切られた。


◆稽古2日目


白瀬一華流の稽古は一瞬で終わる。
前々回公演の「テイクアウトできますか?」では14回ほどあった稽古のうち2回を自主休み、9回を早上がりした。
前回の「永遠を、愛を誓います。」では合計10回の稽古だったが、それさえも毎回3時間弱で切り上げてしまう。
白瀬一華の口癖は、
「もう飽きた。そろそろ帰らない?」。
プロデューサーである私は、使いもしないのに…と思いながら少し多めの時間で稽古場を予約している。
さて、今回の路上役者亮佑は果たして何回の稽古で終わるのだろうか。

新たに改訂された台本を手に稽古場へやってきた路上役者亮佑は、来るなり叫んだ。

「僕は!この1週間、シンクロナイズドスイミングを毎日10時間練習しました!なのに、台本から消えてるじゃないですか!」

あぁ……なんということだ……。また白瀬一華の気まぐれが発動してしまった。私はプロデューサーとしてこの怒り暴れる路上役者亮佑を鎮めねばならない。落ち着いてください、そもそも劇場にプールが作れるわけなかったんですから……と宥める私に、死にものぐるいの亮佑さんは声を荒げる。
「僕がこうやって泳いでいる間に、何枚のチケットが売れたと思ってますか?あなたたちは何枚チケットを売ってくれましたか?ふざけるのも大概にしてください」
正論すぎる。今回の集客はほぼ路上役者亮佑が呼びかけたお客さんがほとんどだ。300人呼ぶぞ、という彼の気概がなければ今回の企画は成立しない。
シーリア企画はまだ立ち上げてようやく1年の団体。1回目も2回目も百合作品。百合だけをやりたいわけではないという意思表示のため、今回の公演をシーリア企画として引き受けたが、これまで観にきてくれたお客さんの来場予定は片手ほど。
返す言葉もなかった。ピヨピヨひよっこプロデューサーなんぞに路上役者亮佑との共同主催はまだ早かったんだ。
己の力不足に思わず涙ぐんでしまう。
一体どうしてくれるんだ、白瀬一華────!



◆稽古3日目


一人芝居へのプレッシャーと焦りで怒り狂う路上役者亮佑。
己の無力さに泣き喚くプロデューサーの私。
まさかの稽古場に来なかった白瀬一華。
最悪の稽古2日目を終えての3日目。

「どう?調子は。」
白瀬一華がニコニコと路上役者亮佑に尋ねる。
「そっすね、あのー、最悪っすね」
路上役者亮佑もニコニコだが、目が笑っていない。
こんなんじゃ収拾がつかない。本番まで残り1週間。できたのは1秒も本編に登場しない、見事なシンクロナイズドスイミング。白瀬一華と何度も芝居を作ってきた私も流石にそろそろ焦りを感じる。
張り詰めた空気の中、白瀬一華が口を開いた。

「いやぁ、いい稽古になったね!!」

………………あぁ、そうだ、これが白瀬一華流の"稽古"だった。

「亮佑くんが感じるその感情こそが、絶唱に乗せて欲しい感情なんだよ。プレッシャーも怒りも焦りも全部織り込み済みで私はこの脚本を書いた。だから、亮佑くんはもう舞台に立てる。あとは、セリフを覚えて演じるだけ。君の生き様が絶唱だよ」

路上役者亮佑はよくわからないという顔をしている。そりゃそうだ。脚本を読み合わせてすらいないのに、稽古したと言うのだから。
しかし演出家がそう言うのならば、信じるしかない。
「よくわからないけど、わかりました。僕、芝居します」
芝居バカたちは握手をして、肩を抱き合う。プロデューサーとしては、二人が無事に和解してくれて何より。これでようやくちゃんと稽古ができそうだ。今日は残り3時間もある。

「よし、じゃあ飽きたし帰ろうか」

こうして、台本を一文字も読まないまま稽古3日目が終わった。

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路上役者亮佑×シーリア企画
『絶唱』
2023年12月2日-3日

出演:路上役者亮佑
作曲・演奏:rio.

脚本・演出:白瀬一華

【会場】
バルスタジオ
東京都板橋区高島平8-15-10 パレット高島平B2

【チケット】
↓ご予約はこちら↓
https://ticket.corich.jp/apply/280554/000/
全席自由席/当日清算

<12月2日(土) 13時/ 12月3日(日) 13時>
一般 5000円 
学生 0円 ※要学生証

<12月2日(土) 18時>
路上風チケット 10000円*完売

▽カンフェティ
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続く……?


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