ジュラシック・ワールド   2022/1/10

ぼくは化石

今日も地下で眠っています

もうどれくらい眠ったでしょう

数年、それとも数億年
そんなことも分からないほど

でもどっちでもいいです
どうせこの先も眠るのですから

現にこういう今だって
地表には降りつもっているでしょう

ちりあくたがつきつぎと
ぼくはますます埋もれます

それにしてもまさか自分が
化石なんぞになろうとは

よりによってこのぼくが
もの言わぬ石になろうとは

化石が見つかると
地表ではずいぶん重宝されるので

もしかすると化石は貴重なものと
思っている方がいるかもしれませんが
(ぼくもそう思っていました)

化石になって分かったことは
化石は地中にいるかぎりただの石です

その辺にいる石ころと変わらない
忘れられた存在です

そしてここ地中には
そんな連中がごろごろいますよ

日の目を見ることなく
誰に読まれることもなく
言葉のくせに黙りこくって
それでも熱い想いだけは持ちつづけて

お願いです
誰かぼくを読んでください
誰かぼくを発掘してください

ああ、けれども今日もネットには
たくさんの詩が書きこまれ
ぼくはどんどん埋もれます
時間という地層深くへ

ここはいったい何時代でしょう

ジュラ紀でしょうか
さっき恐竜が歩いていました

首が長かったので
たぶんブラキオサウルスか

あ、今度はなにか飛んでいる
始祖鳥ですかね
へえ、あんな色をしてたんだ…

ぼくは化石

今日も地下で眠っています

誰に読まれることもなく
言葉のくせに黙りこくって

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