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「キャスト~悪魔の王子と氷の姫~」第1話 Devil meets ice girl

 この世の中には世間では一般の人々には知られていない異形な生き物が存在する。
 それはヴァンパイアやゾンビと言った存在だ。
 それをある組織は悪魔と呼んだ。
 これは悪魔を退治するものと悪魔の子孫との何某かの物語である。

 廃校になった小学校の一室で悪魔に手を差し伸べている男がいた。

 春。
 それは別れの季節でもあるが出会いの季節でもある。
 沼田高校ぬまたこうこう入学式。
 一人の男にまた新たな学生生活が始まる。
 男の名は阿久津真仁あくつまひと
 今日から高校一年生になる男だ。
 ただ普通の男子高校生ではなかった。
 地毛が赤髪なのだ。
 それを見て他の何も知らない生徒は真仁をヤンキーと思っていたのだろう一様に避ける態度をとっていた。
 入学式を終え、真仁は1年2組の教室へと向かった。
 白衣を着た教師が教壇の前に立って言った。
 その教師は左手首に黒いリストバンドをしている。
「入学式お疲れさん。今日から1年間このクラスを担当する浅見陽介あさみようすけだ。化学専門だ。よろしく。じゃあ、順番に自己紹介していってくれ。えーっと、まずは阿久津から順にやってくれ」
「はい」
 真仁は椅子から立ち上がった。
「阿久津真仁です。たぶんこの髪が気になる方もいらっしゃると思いますがハーフでして、地毛です。よろしくお願いします」
真仁がそう自己紹介すると、隣の席の同じ中学の海藤かいどうからヤジが飛んできた。
「おい、悪魔。もっと言うことあるだろう。数々の伝説言っていけ」
 真仁はそれを無視して着席する。
 次々に自己紹介が行われた。
 そして、ある女の番が回ってきた。
 女の髪型はショートカットでツインテールだった。まだ春で少し寒いというのにすでに夏服を着ていた。さらに異様なのが水色の手袋をしており、それには黒い盾の中に白い剣が描かれたマークが付いていた。
氷河姫華ひょうがひめかです。違う県から引っ越しして、この高校へやってきました。知らないことが多いと思いますがよろしくお願いします」
 真仁はそれを見て少し面倒臭そうな顔をした。
 ホームルームが終わり1年生はそれぞれ友達作りの雰囲気になっていった。
 真仁は気だるそうに帰ろうとしていると姫華が真仁の机の前に立った。
「あなたはなんで悪魔って言われているの」
「ああ、“阿久津真仁”略して悪魔って感じだ」
 と軽く説明するとそこにその話を聞いていた先ほどヤジを飛ばした海藤がやってきた。
「えーっと、確か氷河姫華ちゃんだよね。こいつが悪魔って言われるのはそれだけが理由じゃないんだぜ」
「どういうこと? 確か数々の伝説があるとか」
 姫華は不思議そうな顔をして海藤を見た。
「俺はこいつを小学生の頃から知っているが悪魔って異名が付いたのは、確か小1の時だ。」
海藤は椅子に足を組みながらまるで自分のことの様に自慢気に話始めた。
「俺たちが山で遊んでたんだよ。そしたら、イノシシが出てこっちに向かってきたんだよ。でもそれをこいつは立ち止まってイノシシの顔面にパンチ一発食らわせてノシたんだよ。そこから名前もあってみんな悪魔って呼ぶようになったな」
「人間業ではないですね」
 姫華は怪訝そうな顔をして真仁を見た。
「海藤。もういいだろ。俺は高校生活は穏便にすませたいんだよ」
 真仁は呆れた顔をしていた。
 しかし、海藤は話を続ける。
「いやいやまだあるぜ。それからまあいろいろ上級生とも喧嘩なったりしていたけど、一番ヤバイと思ったのは去年の夏の話だな」
「おいそれはマジでやめろ」
 真仁が止めようとしたが海藤は話を止めなかった。
「こいつには姉がいるんだけどさ。まあ入学式で見たろ? 赤毛のロングの生徒会長。その人がこいつの姉で阿久津真央あくつまおっていうんだけど。ニックネームが魔王っていうんだよ。その人は地元じゃ名前を知らない人はいなくてな。その人と一緒に悪魔姉弟って言われてるんだけど。俺たちの地元は暴走族が頻繁に出てくるところでちょうどこいつの家が峠の麓に有ってさ、暴走族が走り回ってるんだよ。それにキレたこいつの姉貴が単身、暴走族のたまり場に乗り込んでいったんだけど。こいつはそれを止めに向かったって言ってるんだけど。結局は暴走族30人くらいを二人で全員病院送りにしたんだよ。それも単車を全部破壊してな。どうだすげぇだろ」
「おい俺はバイクを壊してねー。全部姉ちゃんがやったことだ!」
「確かにそれは悪魔と呼ばれるくらい強いね」
「まあ姫華ちゃん。なんか人に絡まれるとかあったらこいつを頼るといいぜ。こいつ正義感とか強くて誰でも守るからな」
「もういいだろ。俺はこの高校生活だけはマジで平和に暮らしたいんだよ。海藤あまり人にそういう話をするなよ」
「無理だろ。俺が話さなくても同じ中学の奴らが話すだろ。それにお前の姉貴もうすでにこの学校で有名みたいだぞ。暴走族壊滅事件も上級生で知らない奴はいないらしいぞ」
「お前はなんでそう情報屋みたいなんだよ」
「俺はゴシップ好きなんでな」
 真仁は立ち上がり、
「まあ氷河さん。あまり俺とは関わらない方がいいよ。じゃあね」
海藤と姫華の元から立ち去った。
 真仁が校門を出ようとしたときである。
 後ろから走ってくる音が聞こえた。
「阿久津真仁!」
 真仁が振り向くと姫華がそこにはいた。
「なんですか、氷河さん?」
「ちょっと体を調べさせてもらってもいいかな」
 真仁は嫌そうな顔をした。
「痴女ですか?」
「そ、そういう意味じゃない! 何かのシンボルのタトゥーがないか調べたいんだよ」
「そんなイタイことは俺はしないんでね。じゃあね」
「ちょっと待った!」
 姫華は真仁の学ランの襟をつかんで引っ張った。
「ちょっと何するんだ」
 そして、姫華は見てしまった。
 真仁の襟首に赤い逆五芒星のマークがあった。
「やっぱりあなた悪魔と関係があるみたいね」
「これはただのアザだ! そんな悪魔とかとは関りはない」
 姫華は右手の皮手袋を外して見せた。
 姫華の右手の甲に白い雪の結晶のマークがあった。
「このマークは神から受け取ったシンボルマーク。聖……」
「ちょっと待て!わかった。あまりこんな大衆の面前でする会話でもないだろう? その話は今日、角山公園に夜9時に来てくれ。そこで話そう」
「悪魔と関係があるにしては話が早い。わかった! そこに行く!」
「ああ、じゃあとりあえず家には帰してもらうぜ。あと、そのマークはあまり人に見せるなよ。イタイ子だと思われるからな」
 姫華は周りをキョロキョロ見渡してすぐに手袋を着けた。
 その様子をある人物が見ていた。

 夜9時前。
 角山公園かどやまこうえんの広場のベンチで真仁は私服姿で一人腕を組んで姫華を待っていた。
 そして、足音がコツコツと鳴る。
「約束通り待っているとは、私と戦う気があるみたいね」
 水色の軍服に身を包んだ姫華がそこにいた。
「まあ待て。やはり、聖騎士軍の者だったか。手袋のマークで察してはいたが。俺はただ話し合いをしたいだけだ」
「さてどんな言い訳をするのかしら」
 姫華は腕を組んでベンチに座る真仁を睨みつけた。
「俺は悪魔の子孫だ。まあ悪魔の血が4分の1入ったクオーターだがな。だが、それだけだ。別に聖騎士軍と争うつもりもない。ただの人間として生きていきたい。それが俺の望みだ」
「ふんッ! そんな言い訳通用すると思う? 悪魔は人類の敵! 滅ぼさなければならない存在なの」
「わかってるって聖騎士軍の目的は悪魔の撲滅。俺もよく知っているよ。それに氷河の一族ならなおさらな。聖騎士軍日本支部の支部長を代々、受け継いでいる一族だ。さぞ高尚な考えのもと行動しているのだろう。だが、一つだけ言いたいことがあるそれは……」
 ――コツコツコツ
 真仁が話をしている途中に足音が聞こえた。
 公園の街灯に少しずつ照らされていく人影が見えた。
「今日は良い日だ。悪魔の子孫と氷河の一族に出会えた。何をしにここに来たのかは知らんが俺の使命のもとに氷河の娘を殺さなければな!」
 街灯に照らされて姿が見えた。
 そこにいたのは浅見陽介。真仁たちの担任の教師だった。
「先生が何でこんなところに。それになんで氷河の娘を殺すなんて物騒なことを言うんだ?」
 真仁はベンチから立ち上がり浅見に向かって言った。
「阿久津真仁くん。君は悪魔の子孫らしいね。だったら聖騎士軍は倒すべき相手ではないのかな? 俺と一緒に氷河の娘。そして、聖騎士軍を殺さないか。それで悪魔たちの平穏は訪れるというものだ」
「浅見先生あなたも悪魔と何か関係が?」
 姫華はファイティングポーズをとった。
「俺は悪魔の子孫だが。人間とともに生きるんだよ。それが親父や母さんとの約束だ。なにがあってもその約束だけは守る」
「そうか。なら仕方ないな。氷河の娘は俺だけで殺すことにしよう」
 浅見はそう言いながらリストバンドを外した。
 そこには黒いカラスのマークが描かれていた。
「悪魔と契約している者のマーク! 排除する!」
 姫華は浅見に向かって走った。
 浅見は余裕を見せてライターで煙草に火をつける。
「近付きすぎたなお嬢さん。魂の増幅器バックドラフト!」
 ライターの火が人の大きさくらいになりものすごい勢いで姫華へ向かってきた。
「姫華さん!」
 真仁は驚いて叫んだ。
 しかし、心配している真仁を無視して、姫華は歴戦の戦士の様な顔をして叫んだ。
一瞬の静寂デイアフタートゥモロー
 姫華の前に白い氷の壁が一瞬で出来上がった。
「やはり、氷の能力か。だが相性が悪かったな。俺のキャストは火だ。氷なんて一瞬で溶かしてやる!」
 姫華の前にある氷の壁が一瞬で溶けた。
 それを見た真仁は急いで姫華のもとに駆け寄り、姫華を抱えて火の塊から避けた。
「じゃまをするな、阿久津」
「どうして助けたの」
「うるせぇ。悪魔だの聖騎士軍だのとかめんどくせー。氷河さん! お前のキャストじゃ、あいつには敵わない。ここは俺に任せとけ」
 真仁は姫華を自分の後ろに立たせると浅見に向かって手招きして挑発した。
「かかって来いよ、先生! 最強の悪魔の子孫の力見せてやるぜ!」
「悪魔が人間を助けるのか? なぜだ?」
「だからよー。悪魔だとか人間だとかは関係ないんだよ。俺は俺の正義を貫くだけだ」
「敵対するなら排除するまでだ、阿久津」
「半殺しだ。覚悟しろよ、浅見!」
 浅見は煙草に息を吹きかける、すると爆炎が起こった。
 その爆炎を難なく避ける。
 姫華はそれを離れたところで見ていた。
「阿久津くんの動きが見えないッ。どういうこと。最強の悪魔ってもしかして……」
「なんだその速さは? さっきも氷河を助けた時も見えなかったが、悪魔でもそんな動きができる奴などいない。少なくとも俺が契約した悪魔、ドゥール様はそんなスピードで動けない。最強の悪魔とはどれほどの強さなのだ」
「あんたには俺のキャストを使うまでもないかもな」
「クソッ! ガキが舐めやがって。氷河を殺すだけでよかったが仕方ない」
 浅見はポケットからスキットルを取り出すと自分の周囲に中身をぶち撒いた。
「この臭いは……、ガソリン?」
 真仁は鼻に手を当てながら言った。
「地獄の業火を見せてやろう」
 浅見はそう言うと、タバコを撒いたガソリンに落とした。
 すると、一瞬にして浅見の周りに火が付いた。
 そして、それが巨大な火柱となり、徐々に火災旋風となって真仁たちを襲ってきた。
「これはさすがにやばいだろ。この炎が街まで行ったら大勢が死ぬぞ」
「死ね、阿久津!」
「だが、ここを集合場所にしてよかった。透明で不透明の不在の存在キャスパー!」
 真仁が叫ぶと真仁の目の前に煙の様な白い人が現れた。
 そして、それが業火の中を突っ切り浅見の目の前に来た。
「なんだ、こいつは……!?」
 浅見がびっくりしていると、その白い人型の者が浅見の左手首に手刀を振り下ろした。
「あんたの契約が悪魔の強制的な契約ならこれで終いだな」
 浅見の左手が地面に落ちる。
 すると、先ほどまで勢いのあった火災旋風が無くなりガソリンに火がつけられた状態に戻った。
 そして、浅見はその場にドサッと倒れた。
「姫華、その軍服の階級章からしてお前軍曹だろ? すぐに浅見の捕縛とこの火災の対処のために聖騎士軍の応援呼んでおけ」
「は、はい!」
 姫華は携帯電話を取り出すとすぐに応援を呼んだ。
応援が来る間、真仁と姫華はベンチに座って待っていた。二人とも無言だった。
 すると、十分も経たずに応援が5名来た。
 一人の男が姫華のもとに駆け寄る。
 姫華もそれを見てベンチから立ち上がる。
 男が敬礼すると姫華も敬礼した。
「氷河軍曹!お待たせ致しました。悪魔との契約者の捕縛及び被害の対処に参りました。今から対処致します」
「よろしく頼む」
 男は残りの4名に命令して浅見の捕縛と火事の対応をさせた。
 男はその様子をしばらく見た後、真仁見た。
「これは、これは阿久津大佐の息子さんの真仁さんではないですか」
「ああ、やっと話の通じる軍人に会えたぜ」
「えっ阿久津大佐ってバチカン本部の大佐のこと?」
 姫華は目を丸くして驚いていた。
「ええ、そうですよ。あれ氷河軍曹は知りませんでしたか? 阿久津大佐に悪魔と人間のハーフの奥さんがいて子供もいることを?」
「はぁ? どういうこと聖騎士軍は悪魔の撲滅に動いているんじゃ」
「まさかこの街に配属になったのも氷河中将のいたずらだったりするんじゃ?」
「おじさんからこの街に行けって言われたから来ただけで、それ以外は何も聞かされていない」
「じゃあこの街のこともわかってない感じですね。ここら一帯は阿久津家の者に任されているということが聖騎士軍の暗黙のルールになっているのですよ。聖騎士軍としては悪魔を撲滅しなければなりませんが、それはあくまでも人間に害成す悪魔を撲滅することが目的であって、友好的な悪魔は撲滅の対象にはなっておりませんよ。まあその様な例外は数少ないですが。それに真仁さんのお祖父様はかの有名な最強の悪魔ルシフェルドですよ。とてもじゃないですが、聖騎士軍の精鋭が揃っても勝てるわけがありませんな」
 男は笑っていた。
「おじさんから何も聞いてない。そんな話まったく。えっ阿久津くん、ルシフェルドの子孫? 本当に? じゃあもしかして阿久津くんには私じゃ絶対勝てない?」
「ええ。たぶん勝てませんでしょうね。阿久津家の皆さんはキャストが無くても強いですから。真仁さんがオリンピックに出たら全種目で金メダルを取るような方ですよ」
「そんなにすごいの? 具体的には?」
「聖騎士軍の施設で一応は脅威がないか体力測定を行いましたが。確か50メートル走が……」
「1.23秒だ」
「だそうです」
「えっ人間じゃないじゃん!」
 姫華は畏怖した顔で真仁を見た。
「4分の1はな。一応、人間的に扱えよ。暴れるぞ」
「やめてください、真仁さん。我々全員死んでしまいます」
「冗談だ。まあ氷河のおじさんも人が悪いな。氷河さん、お前がここに来た理由は半分はおじさんの道楽だぞ」
「ちょっとおじさん凍らせてくるわ」
「まあ待てって。たぶんもう半分は浅見のことだろ。探知系のキャストを持った奴に調べさせたんだろう。悪魔と契約を行った奴がいるってことがわかって囮でお前を使ったんだろう」
「なるほど」
「あとは囮になっても大丈夫だと思った理由は俺ら姉弟がいるからだな。何かがあった時に浅見のキャストがお前より強くても俺らがいるから安心していたんだろ。たぶん俺の親父とも通じていると思うぞ」
「なんであの人はいっつも全部言わないの!」
 姫華は地団太を踏んだ。
「氷河のおじさんや親父らしい嫌がらせだな。あの師弟コンビは性格悪いからな」
 ――プルプルプル
 目の前の男の携帯電話が鳴った。
「はい、村上伍長です。はい! はい! 了解致しました。失礼いたします」
 村上と名乗った男は携帯電話をしまうと姫華の方に向いた。
「ただいま、氷河中将からお電話があり、なにやらこの街で不吉なことが起こる可能性が高いとのことで真仁さんたちと一緒に活動を共にして対処に当たるように氷河軍曹に伝えるようにとのことでした」
「なぜ伍長に言って私には言わないんだ、あの人は!?」
「不吉なことか……。もしかすると悪魔たちの覇権争いが起こるのかもな。人間を使った悪魔たちの覇権争いと日本支配が目的なら、まずはこの街を叩きたいだろうな。聖騎士軍日本支部も近くて俺たちがいるからな。それにもし俺たち姉弟を倒して悪魔が俺たちを喰らえば、祖父ちゃん並みとはいかないがトップクラスに強い悪魔になれるからな」
「そうなれば、日本支部もお終いですね」
「最悪を考えて行動した方がいいな」
「とりあえず後始末はできました。軍曹と真仁さんは家にお帰りになって下さい。後の証拠などの隠滅や浅見の処遇については我々でなんとかします」
「迅速な対応ありがとう、伍長。それと阿久津くんはまた後日いろいろと話を聞かせてもらうから」
「まあ、そのうちな。じゃあな」
 真仁と姫華は角山公園を去り家へと帰った。

 次の日。
 真仁と姫華のクラスのホームルームが始まった。
 教室に入ってきたのは教頭だった。
「皆さんにご報告がございます。浅見先生はしばらくの間、怪我により休暇を取ることになりました。しばらくの間、副担任の風間先生が担任を務めます」
 教室の扉を開け若いロングヘアーの教師が入ってきて教壇に立つ。
「副担任の風間春香かざま はるかです。今日からこのクラスの臨時の担任を務めます。よろしくお願いします。まだ教師としては日が浅いですが皆さんよろしくお願いいたします」
 ホームルームも何とか終わり部活動紹介が体育館で始まった。
 そして、ある部活の部活動紹介が始まる。
 体育館のステージに楽器を持った3人の生徒が並んで立っていた。
「軽音部部長、阿久津真央だ。今から部活動の紹介を始める。まあ紹介って言ってもややこしい説明は抜きだ。私たちの演奏を聴きやがれ」
 激しいプログレの音楽が鳴り響く。
 珍しく、ベースボーカルだった。そのベースを弾いているのが真央だった。
 演奏が終わる。
「私は軽音部の紹介は以上だ。あとはなんだ、昨日も説明したけど一応私は生徒会長も務めている。何か、文句があるやつは私の所まで来やがれ。以上だ」
 演奏とMCで拍手喝采が起こっていた。
 それと同時に一部の生徒からはどよめきも起こっていた。
 なんという演奏。そして、なんという横暴さ。そんな感じでこそこそ話していた。
 
 一通りの部活紹介が終わり、一同は自分たちの教室へと戻った。
 ホームルームも終わり、一通りのグループが出来そうになって、どこの部活に入るかなどを話していた。
 真仁は絶対に軽音部に入らないと決めていた。
 しかし、どこか部活には入ろうかなと考えていた。
 そこに、一人の女子生徒が近づいてきた。
 真仁は姫華かと思ったがどうやら違った。
 真仁の目の前に立ったのはアームカバーを着けた女子生徒だった。
「阿久津真仁だな」
「ああ、そうだが。あんたは確か恩田おんだレミ」
「阿久津真央っていうのはあんたの姉か?」
「ああ、そうだが」
「あの人は頭がイッてるな。だから私は軽音部には入らない」
「ああ。そうですか。それを報告しにここに来たんですか」
「いや違う。あんたは悪魔って呼ばれてるそうだな。だからちょっと気になってな。あんたとなら上手くやっていけそうな気がしてな。どうだ、私とオカ研にはいらないか」
「は?」
 真仁は唖然としていた。
「あんたには特別に見せて置こう」
 レミはそう言うと袖とアームカバーを捲り、腕を見せてきた。
 そこにはオオカミのマークが描かれていた。
「タトゥーでも彫ったのか」
「いいやこれはクロスロードでギターを持って悪魔に祈ったんだよ。そしたら、いつの間にかできた」
「ちょっと待ったー」
 姫華が慌てて真仁たちの元へ駆け寄ってきた。
「あなた、悪魔と契約したの?」
「あんたは氷河姫華だったな。なんだ悪魔との契約を知っているのか?」
「悪魔との契約ってのは……」
「待ってここで話すのはやめようぜ。屋上で話そう」
「確かにこんな公衆の面前で話すことではないわね」
「これをあんたたちは知っているのか?」
「まあいい。行こうぜ」
 真仁たちは屋上へと向かった。
 真仁は屋上に誰もいないことを確認すると話し始めた。
「恩田さん。あなたのその腕にあるのはキャストと言う能力が目覚めた印だ。それもあのクロスロードの伝承を使ったものだろう。それが悪魔によるものなのか神によるものかはわからないが、そいつを身に付けるってことは危険な目にも合うってことだ」
「キャスト?」
 レミは何のことだかわからない顔をしていた。
「ええ。“キャスト”。Cast a spell on me から取ってキャストという特別な能力のことよ。そのマークが腕にできてから不思議なことは起こらなかったかしら?」
「うーん。路上で弾き語りをしていると妙に人が寄ってきやすくなったのと、その場にいる人がよくケガをするようにはなった気がするな」
「やはり、悪魔との契約だわ。即刻支部に連絡を取って処遇を決めましょう」
「まあ待て、氷河さん。こいつは何かに悩んでいるんじゃないか?」
「阿久津くんはよくわかったな。そうこのキャストとか言うので人が寄ってくるのは良いのだが、怪我をさせてしまっていることが問題だ。ロックで人を傷つけてはいけない。ロックは人を救うための音楽だ。だからこれをどうにか制御できないかと考えている。ところで支部ってなんのことだ?」
「まあ、聞き流せ。その能力については確かに制御が必要だ。どうやら最近になって得たようだな。いつ得たんだ」
「約2週間前だ」
「それなら制御できないのも当たり前だな」
「氷河さん。ここは俺に任せてくれないか。一応ここの責任は俺たち姉弟が受け持ってる。あんたたちの出る幕ではない」
「しかし、私はこんな悪魔との契約をみすみす見逃すわけにはいかない」
「いいや。ここの管轄は俺たちだ」
「何を話しているんだ。私にもわかるように説明しろ」
 困惑しているレミをよそに真仁と姫華はいがみ合っていた。
 その時だった。
 屋上の入り口のドアが開いたのである。
 ドアから出てきたのは男子生徒だった。
 いがみ合ってる二人をよそにレミを抱きかかえて炎の翼を広げ空へと舞った。
「うおッ!なんだこれッ」
「氷河の一族と阿久津家の奴だな。こんな格好の餌食を与えてくれてありがとう。俺の名は沼田高校3年4組、兵頭信明ひょうどう のぶあき。こいつをドゥール様のエサにさせていただく。それではさらばだ」
「おい、恩田さんが攫われたぞ」
「どうすれば……」
「とりあえず、サーチ能力の持った人に連絡して恩田さんを探してくれ俺は追いかける」
「まず、阿久津くんとの連絡先を交換しないと」
「そうだったな。電話番号でいいか」
「うん」
 二人は連絡先を交換した。
「恩田さんの居場所がわかったら連絡をくれ俺は追いかけてみる」
「どうやって」
「俺のキャストはいろいろ便利なんだよ。じゃあ行くぞ」
 真仁はそう言うと屋上のフェンスを飛び越えた。
「えっここ5階だよ」
「大丈夫だ。問題ない」
 姫華はフェンスに近づいて落ちていく真仁を見ていた。
 真仁はスタっと地面に着地すると何事もなかったかの様に走り出す。
「最強の悪魔の子孫ってなんでもありなのね」
 それを見て安堵した姫華はすぐに聖騎士軍日本支部へと連絡を入れた。

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