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仕事帰りのトワイライト、この季節の夕暮れは夜未満のほの暗さ。ひんやりと風が吹いている。 神社公園は神社の森のおかげで、周囲より暗さが増している。 蚊取り線香のにおいがしてきた。晩秋の蚊は吸血旺盛だ。 公園の防犯灯は、遊具や低木につまづいて転ばなくてすむ程度の明るさで、夜にとけこんでいく。 そんななか、花壇のすみでしゃがんでいる老婆が白っぽく浮かび上がった。 思わず悲鳴をあげるシチュエーションだが、レギュラーな風景なので、「こんばんは」ですむ。 「こんばんは」
「そうすけのママです」 ようこさんは楽しそうに挨拶した。ゆるく束ねた髪、トップスは白いブラウス、くすんだオレンジ色のワイドパンツ。艶やかに微笑む。 場の雰囲気を攫っていくオーラが教室を和ませる。 「冗談ですよ。ばぁばです」 そりゃそうだ。敬老会なのだから。 十七人のジジババが拍手しながら笑った。 リンゴ組の園児も十七人。ふっとさみしげな子の姿が目に入る。ひとりの園児にひとりのジジババ参加というわけでもないのだから。シングル参加のジジババがいるし、カップル参加のジジバ