12月の推奨香木は「いわゆる馬蹄形」、でも香気はオーソドックスな真南蛮♫


A :馬の蹄に見えるでしょうか?
B :反対側はこんな感じです
C: 裏側はこんな感じですが…

いつの頃から名付けられたものか定かでは無いのですが、「馬蹄形」と称される香木が存在します。
存じ上げる範囲内ではそれらはベトナムにもタイにもインドネシアにも産出し、品質はご多分に漏れず千差万別です。

共通する外見的な特徴は、文字通り馬の蹄に似ていることです。

香木がそのような外見を呈して発見されるまでに、一体どのような経緯があったのか、実に不思議に思えます。
なぜなら、馬蹄形の塊の裏側は、例外なく、朽ち果てたように変質しているからです。

その謎に関してどのような推論が存在するか詳しく存じ上げないのですが、香雅堂では、ある仮説を立てて私見としています。
それは、「裏に見える側( C )が上」で、「表に見える側(  が下」であること。
そして(C)の面は「切り株が樹脂化した後に雨水の浸食によって朽ち果てた後に発見・採取されたもの」という推測です。
中国の古書に「水によって樹脂を結ぶ」というような表現があるのを見た記憶がありますが、そうでは無くて、あくまでも樹脂化した後に朽ちたものと考えています。
そのため、朽ち果ててはいても、加熱すると香木らしい香気を仄かながらも放ってくれます。

馬蹄形の香木の難点は、朽ち果てた箇所を取り除くことが困難であること、そして何よりも綺麗な長四角に截香することがほぼ不可能であることです。

それでも敢えて推奨香木として採り上げるのは、近年においてタイ産の上質な香木が枯渇するにつれて昔ながらの真南蛮が減少の一途を辿り、代わってインドネシア産の沈香が堂々と真南蛮として販売されるという事態を招いているからです。
木所の特徴を表わすことが出来る香木が入手困難になれば、「六国五味」の概念を後世に伝え続けることが益々困難になります。

今回の馬蹄形は、昭和時代より以前に渡来したと思われる古木で、派手な立ち方はしないのですが上品な軽やかさを感じさせ、真南蛮に特有の甘味や鹹味及び辛味をバランスよく具えます。

書付等は存在しませんが『烏帽子岩』とのメモが残っており、それを尊重させて戴きます。

断面には樹脂分の煌きが見受けられます

分木は上の画像のような截香の結果によることになってしまい申し訳ございません。
鑑賞香・一炷聞には向きますが組香には適していませんので、その旨、ご承知おき下さいます様お願い申し上げます。
(組香用には「仮銘 白雲」や「仮銘 朧月夜」を推奨いたします)





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