香木アワー#4
先月31日に、第4回目の香木アワーを開催しました。
皆さまから「截香の実際を間近に見たい!」とのご要望が多いため、最上質の緑油伽羅・沈香一種類ずつを挽くところから始めました。
いずれも、『香木三昧』に登場する『心臓が半分壊死していて、最上質の伽羅・沈香の香気を吸入することで辛うじて命を保っている!』と主張されるキムさんに頼まれたものでした。
その後、きっかけは良く覚えていませんが、香木の塊に含まれる白い部分、つまり樹脂化の密度が極めて低い部分は、どんな香りを出すのか?という話題が出ました。そこで、実例をご覧に入れた上で炷き比べてみることにしました。サンプルに使ったのはシャム沈香、タイ産の真那賀でした。
同じタイ産でも、真南蛮より遥かに希少と言える真那賀の一例です。
塊の外側には濃密な樹脂化の形跡が認められますが、中に向かうにつれて密度にバラツキが見られ、中心部に至っては恐らく樹脂化が全く進行せずに原木(沈香樹)のまま永い歳月の経過とともに朽ち果て、空洞化しています。
断面を詳しく見ると、以下のような具合です。
沈香樹の組織は「管状の、ストローを束ねたようなもの」と説明しますが、黒く見える部分は、ストローの約80~100%に樹脂分が詰まった状態で、白く見える部分は、恐らく数%しか樹脂化していないと思われます。
それぞれを比較すると、次の写真の通りです。
白く見える部分でも、断面が煌めいて見えるのがおわかりいただけますでしょうか?
これは香木に特有(と、勝手に解釈していますが…)の現象で、恐らくは樹脂分の存在を示唆しているものと推察しています。つまり、「白く見えても樹脂分が無いわけではない!」ということです。
比較の為に、全く樹脂化していない沈香樹(カンボジア産)の挽き粉がありましたので、炷いてみました。
黒い部分は、伽羅立ちもするけれど伽羅には出せない甘さを濃密に出し、白い部分は、とてもか細いけれど確かな真那賀の香気を感じさせました。
同木でありながら部位の違いで全く異なる立ち方をする様子は、実に興味深いものです(それでも「匂いの筋は共通している」と言えます)。
そして全く樹脂化していない真っ白な挽き粉を加熱して得られるものは、「ただの木の匂い」であることを、皆さまに実感していただけました。
ついでに他の真那賀の古木を選んでご覧いただき、黒い部分と白い部分とを炷き比べてみました。
まだ少し時間があったので、「伽羅を真那賀として使う」という実例を炷いて、説明させていただきました(もちろん香雅堂の香木ではありません)。
写真(下)の通り、見た目は完全に伽羅ですが、木所は真那賀とされています。
味は「ア二カ」とされている通り、加熱するとかなり強烈な甘みが目立ちます。苦みも辛みも具えていますが、いわゆる「堂々とした伽羅らしい伽羅」とは言い難いタイプです。
なによりも、この伽羅が出す「甘」は真那賀の「甘」とは異質と言えます。
皆さまに感想を伺ったところ、大半は伽羅と聞かれていましたが、真那賀として違和感を感じない方もおられ、このような伽羅が真那賀として用いられるケースが多いことに今更ながら気付かされます。
もう4回も開催した香木アワー。
徐々に、何となく、方向性が見えてきたように思います。
それは【簡易な電子香炉を用いての、気楽な聞香会(截香実演付き)】♫
延々と香炉を回し続けても火加減を一定に保てるという電子香炉の美点を活かして、色んな香木を聞き比べる愉しみを堪能する催しを企画できれば…と、社長に相談してみることにします。
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