「香りの器 高砂コレクション展」
本日(9日)から3月21日まで、パナソニック汐留美術館において、掲題の展覧会が開催されます。
主催はパナソニック汐留美術館及び東京新聞で、一部の特別追加作品を除いて、展示作品の殆んどは高砂香料工業株式会社(以下、高砂香料)が長年に亘って蒐集して来られたコレクション(以下、高砂コレクション)から選び出されたものたち(約240点)です。
高砂香料は昨年2月に創業100周年を迎えられ、記念にカレンダー『日本の香、美と技』を制作されるに際し、撮影を十文字美信氏に依頼されたのですが、その十文字さんから「香道具だから、監修して!」とご依頼を受け、喜んで引き受けました。
なにしろ、あの巨匠が撮影を引き受けられたということは対象となるコレクションのクオリティが極めて高いことを示していましたし、これまで様々な機会でコラボレーションを行なって、十文字さんとは楽しい苦労しか体験して来ませんでしたから。
話せば長くなって大変なことになりますので…採り上げられた作品はいずれも素晴らしいもので、2日間に亘る撮影はとても充実した時間となりました。
完成したカレンダーはこれまで見たこともないほど美しく、資料的にも優れたものになりましたし、作品解説を行なわれたのが、東京国立博物館の漆工室長時代に香道具展の開催に際して展示作品の監修をご依頼いただいたことがあった公益財団法人永青文庫館長 小松大秀氏だったことも、嬉しいご縁を感じた次第でした。
前置きが長くなりましたが、撮影の際に十文字さんからご紹介いただいた高砂香料IR広報室の鈴木 隆氏・南 ゆか女史からご依頼を頂戴して、今回の展覧会の準備作業に立ち会わせていただきました。
カレンダーに登場した数々の名品に、新春早々に再び会うことが叶ったわけですが、それら工芸品を作らせた施主(大名家や姫君?)の優れた美意識、そして極めて優美で上品な意匠を実現した蒔絵師等の感性とそれを体現する高度な技術の精巧さ、それを下支えする職人たちの気質・心意気のようなものに改めて接し、心を打たれました。
香道具というカテゴリーを超越して、日本が世界に誇り得る伝統工芸の極致を目の当たりにすることができる展示内容を、ぜひ堪能していただきたいと推奨します。
広報室のご諒解を得て一部をスマホで撮影・公開させていただきますが、画質も悪く、実物には遥かに及びません。
そして今回は、歴史的名香も一部が展示されており、高砂コレクションが工芸品のみならず香木のコレクションとしても極めて貴重で高い価値を誇るものであることを示しています。
例えば『縮(ちぢみ)』は香木の木目の様子が命銘の根拠になったことが良く理解できますし、『柴船』も、木目や色味、醸し出す雰囲気などが文献に記載される様子と一致しているように見受けられます。
そして『蘭奢待』は源三位頼政所持とされるもので、徳川美術館などに現存する数種類の同銘の香木のうち最も薫り高い、五味完備と称えられる伽羅の『蘭奢待』と同木と思われます。
また、錫の器に納められている六十一種の手鑑香も、伝来が確かで内容も信憑性が極めて高い名香たちです。
東京ステーションギャラリー冨田館長監修の下、パナソニック汐留美術館では、川上副館長をはじめ一丸となって新型コロナウイルス対策を徹底して展覧会に臨んでおられます。
観覧の際には、同館ウェブサイト内「ご来館されるみなさまへ」をご参照下さいませ。
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210109/
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