令和2年 司法試験論文会社法 答案作成時の思考過程

設問1と設問2の配点は60:40.なので、設問1では失敗できないと感じてしまった。私の豆腐メンタルは、「失敗できない」とか、「きちんとしなきゃ」とか「時間がない」とかで容易に砕け散り、おそろしい失敗を引き起こす。今回は、目がすべった。もう一度いおう、目がすべった。

どこですべったか。それは、1段落目2行目「公開会社でない会社」である。本件普通株式に譲渡制限がついている旨がのちのち表示されず。普通株式という名前に引きずられて、公開会社だと思い込んでしまったのである。別の記事で詳しく述べるが、本番ではこういうミスをよくするのである、ワタクシ。なので、対策として、○をつけたり答案構成に書いたりした。にもかかわらず、目滑りが起こったのである。なぜだ。

以下、甲社が公開会社と思い込んだ哀れな子羊の思考過程である。公開会社であるせいで起こる問題はおそらく答案例で言うところの②の主張がやりすぎというところのみである(参照条文がずれてくるのはつらい)。招集通知の重要性や、説明義務の内容などは、公開/非公開ではなく、取締役会設置/非設置の方が影響するので、そこまで・・・・うん、凹むわ。

1段落目。甲社は取締役会設置会社であり、監査役、会計監査人がいる。一種類の株式を発行しており、発行可能株式総数・発行済株式総数・株主がAとBであることが書かれている。取締役はACDであり、Bは単に株主なだけ。

2段落目。資金繰りに窮しているという話。答案作成時は頭がパニックで読み飛ばしていた模様。へー、高い技術力だったんだー・・・使い道落ち着いてもわからんな。

3段落目。2億円の資金調達必須。株式発行が最善。そりゃあ、借入金みたいに返済義務ないもんな・・・。そこで、議決権ありの剰余金配当優先株式をだす、と。ん?デメリットない株式だな、と思う。それくらいしないと、2億円の資金調達は無理なのかな・・・。

4段落目。今思えば、なぜ特定の者に対する株式割り当てかわからなかったけど、もともと非公開会社なら、そりゃあ自分でさがすよなー・・・(´・ω・`)。本件優先株式の評価額は一株4万円。この情報が出てきたということは、おそらく有利発行がくる。公開会社と思い込んでいるワタクシ、差止め無視くらいかなぁと高みの見物。

5段落目。PQ2万円で5000株を譲らない。持ち株比率・・・。ちなみに、答案作成時は持株比率の名前すらころりと忘れてでてこなかった、末期である。有利発行確定

6段落目。株主Bの反対して計画が挫折する可能性が小さくないことが示唆。Bさんを排除するんかなぁ、とぼんやり思う。

7段落目。令和2年3月17日、全員参加の取締役会。ここに瑕疵はなさそう。定款変更の件・新株式発行の件を分けて書いていることからすると、これは分けて検討しないと行かんのだろうなあ、と戦々恐々。このあたりでもう「定款変更」パニックである。汗が止まらん。

8段落目、定款変更と新株式発行の件について招集通知がない。これは株主総会決議取消事由だ!と思う。後に不存在にならないかと検討するも、違った時のダメージを想像して守りに入り、取消し事由にする。読んだ時点では、取消しとしか考えていない。目的事項を招集通知に記載するよう求めている条文を使わないといけないなぁ、探さなきゃ、と気が重くなる。

9段落目。令和2年3月25日株主総会。この時点で、なぜ非公開と気づかない・・・!公開会社だともろもろ!もろもろ!時間が足りないでしょうが!まあ、パニックのときって視野が異常に狭くなるよね。うんうん。つらい・・・。
 定時株主総会でBに堂々と嘘をつくC。2万円が合理的というもっともついてはいけない嘘をつく。公開会社だと思い込んでいるので、「この状態で差止め打てって言われるのBには酷やなぁ。差止めの機会を実質的に奪われたってかいとこう」と勝手に処理をする。しかも、こういう差止めムリ系の話は実際に聞いたことがあったため、「なるほど、こういうひねりか、司法試験委員会・・・!」と勝手にどやっていた。見直しせずにUPするとこういうことになる。まあ、そういうコンセプトで書いたからいいんだけど。結局、スタンダードな非公開会社における有利発行について、株主総会特別決議がない場合は無効事由になる、といういつもの話でフィニッシュとなる。ほんとつらい。

10段落目。払い込んだので効力発生。4万を2万で買うという、どえらいセール状態なのは、変わらない、と。

設問1 本件決議1及び決議2には瑕疵があり、そのことが本件株式の効力に影響を及ぼす。令和2年5月14日の時点で、どんな訴訟をし、どんな主張をするか。
 あれ、新株発行無効の訴えと、株主総会決議取消の訴えってどういう関係なんだろう、ととまどう。めんどうくさくなり、なんとか訴えを経ることなく主張できる決議不存在に持ち込めないか検討するも、微妙なラインなので、守りに入り、取消を選択。合併無効の時のように吸収させるのかな、とも思ったけれど、自分が弁護士として案件任されたら、とりあえず併合提起して守りに入るなあ、と考える。仮に吸収説でも、どうせ3ヶ月以内に主張するとかうんとかすんとか言うんだし、今回は3ヶ月以内で提訴できるんだから、株主総会決議取消の訴えも同時にやれい!と決めてしまう。
別の(これは有料記事にするけど)記事で詳しく書くが。実務では取消の訴えも新株発行無効の訴えに加えて行うようである(三苫裕編著「会社訴訟・紛争実務の基礎 ケースで学ぶ実務対応」有斐閣 2017 140頁)。学説では吸収説が多数説とされているらしい(高橋美加ほか「会社法」第2版 弘文堂 2018 307頁~308頁)。・・・どっちでもええんやん。かなりきちんと調べないとわからないので、またの機会に。試験的には、どっちで書いても合否に影響はなさそうである。

さて、主張としては、招集通知の瑕疵・説明内容虚偽→株主総会決議取消→定款変更なくしてされた株式の発行・株主総会特別決議がない有利発行(公開会社だと思い込んでたので、差止めの機会がないと主張)=新株発行無効ということになる。

設問2。新株発行が適法に行われた場合である。

11段落目。優先的な剰余金配当が苦しくなってきているようである。剰余金配当の負担を減らすために、何をするのかなあ。
 一株千円の優先配当は大きいなあ、と思う。しかも、不足額は累積。累積は重たいなあ・・・。
累積額も減らしたいな。

12段落目。株式併合。勝手に、株式併合するときは議決権を減らして少数株主権を使えなくさせたりするもんだと思っていたので、剰余金配当の負担を軽くしたくて併合とは!とびっくりした。そして、2株につき1株というぬるい併合比率にもびっくりした。問題で解いたことあるのと比べて、PQに対する当たりが優しいなあ。
 取締役Aがからんだ株主総会決議がされているので、これが問題になるのかな、と思う。ただ、特別利害関係人以外問題なさそうで、焦る。所定の通知をする、書面備えおく、などほかの手続は履践されていると思い、え、他の差止め事由は?!とパニックに
 Pは反対する旨の通知をしているともあったので、反対株主の買取請求も書くようにしようと思う。あれ、端数?と混乱したが、とりあえず書く。

設問2(1) 株主に生じるまたは生じるおそれがある不利益を説明、とあるので、支配権維持と経済的利益に分けて書く。累積不足額について触れたい、という熱いパッションのせいで、ちと無理をする。が、後悔はない。出題趣旨が出たらまた勉強するのみ。

設問2(2) 効力発生前なので、とりあえず差止めと反対株主の買い取り請求を書く。株主総会決議取消との関係がここでも一瞬気になるも、ここではそもそも株主総会決議取消の訴えをかかない選択肢をとる。これがいいのか悪いのか、調べてまた書こうと思う。

恥の多い答案であったが、2時間縛りで民法後というのは相当自分に負荷がかかっている、とこころから実感できた。平成24年(合格した年)も、民事系で大量にやらかしているが、これはもう魔の二日目というしかない。苦手意識が強いというのも一因かもしれない。こうした難点を解消するのにどうすればいいのか(むしろなんで受かった)。おそらくは、公開会社か否か・取締役会設置か否か、を答案構成に書くことが失敗を防ぐために必要かと思われる。むしろ、ぱにくったメンタルをいかに鎮めるかも考えねばなるまい。

ただ言えることは、パニックに陥っても受かることはできる、ということである。別の記事で実際に本番(予備試験・司法試験・修習中の起案)でやらかした数々のミスを取り上げ、合否・評価に影響したか、どうしたら防げたか(防げなかったとしても、いかに影響を最小限にとどめたか)を考察しようと思う。

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