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山田古形の小説

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山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
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#眠れない夜に

【小説】あわてんぼう様に捧げる演舞

 薄紅色をした舞台の上で、ヤアは細く短い木の杖を掲げた。  杖の先端には分厚い紐と小さな鈴が括り付けられている。ヤアが腕を勢いよく振り上げると、シャラシャラと軽やかな音が鳴った。  勢いのままに杖はヤアの手からすっぽ抜け、月光を浴びながら空へ飛び上がった。ぽかんと口を開けるヤアをよそに、杖は空中で滑らかに三回転半し、鈴の音を響かせながら落下してヤアの着物の背中側に滑り込んだ。 「うひゃひゃ」  毛羽立った紐の感触が背中をくすぐる。ヤアは素っ頓狂なうめき声を上げながら着物から杖