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「掛けましてエ――掛けましてエ――」 ガラスを砕いたような高くひび割れた声を聞いて、私は背後を振り返った。 すっかり日の落ちた暗い歩道には、先ほどまで私のほか誰もいない様子だった。それがいつの間にか、私のすぐ後ろに、羽織を纏った着物姿の人物が立っていた。 いや、正確には、人のような輪郭に見えるだけだった。夜とはいえ周囲には街灯や自動販売機の光があるのに、全身に黒い靄のような陰影が掛かって、顔つきや衣服の詳細を捉えることができない。ただ三日月型に歪んだ口元だけが、暗闇の中
「ペンギンものまねチェッカー」 画面の文字をそのまま読み上げて、私は友人と顔を見合わせた。 縦長の筐体に組み込まれたモニターには、「タッチしてスタート」とも表示されている。指で触れてみると、それらの文言はすっと消えて、代わりに眠たげな顔つきで佇むペンギンの写真が表示された。 私は筐体の横手にある広大な水槽に目を向けた。透明な仕切りの向こうで、モニターの写真と同種のキングペンギン達が、緩慢な動作で岩場をぺたぺたと歩いている。 「ぐわぁおぐぁぐわぁっぐぉ」 駄々をこねる怪