マガジンのカバー画像

山田古形の小説

27
山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
運営しているクリエイター

#ショートショート

都市伝説『ナゾカケ』

「掛けましてエ――掛けましてエ――」  ガラスを砕いたような高くひび割れた声を聞いて、私は背後を振り返った。  すっかり日の落ちた暗い歩道には、先ほどまで私のほか誰もいない様子だった。それがいつの間にか、私のすぐ後ろに、羽織を纏った着物姿の人物が立っていた。  いや、正確には、人のような輪郭に見えるだけだった。夜とはいえ周囲には街灯や自動販売機の光があるのに、全身に黒い靄のような陰影が掛かって、顔つきや衣服の詳細を捉えることができない。ただ三日月型に歪んだ口元だけが、暗闇の中

ペンギンものまねメダリスト

「ペンギンものまねチェッカー」  画面の文字をそのまま読み上げて、私は友人と顔を見合わせた。  縦長の筐体に組み込まれたモニターには、「タッチしてスタート」とも表示されている。指で触れてみると、それらの文言はすっと消えて、代わりに眠たげな顔つきで佇むペンギンの写真が表示された。  私は筐体の横手にある広大な水槽に目を向けた。透明な仕切りの向こうで、モニターの写真と同種のキングペンギン達が、緩慢な動作で岩場をぺたぺたと歩いている。 「ぐわぁおぐぁぐわぁっぐぉ」  駄々をこねる怪