【小説】下りた赤い幕の向こう
「よ。脚本家先生」
私が声を掛けると、貝崎は長椅子から滑り落ちた。
「ぎぇッ」
「うわ、ちょっと、大丈夫?」
白く滑らかな床に尻餅をついた貝崎に手を差し出す。貝崎は「へ、平気」と頬を赤らめて、私の手を取らずに立ち上がった。私は「ならいいけど」と返しながら、行き場をなくした手をぐいと伸ばしてストレッチにリサイクルした。
スカートをそっと撫でつけて、貝崎は長椅子の端に座り直した。私はもう一方の端に座って「なんでこんなとこに」と周囲を見回した。
廊下の突き当たりの横手、奥ま