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八丈島のキャバクラは、私に現実に向き合う力をくれた。

「どこか遠くに行きたい」

29歳のGW。私は疲弊していた。仕事で取引先ともうまくいかず、上司にも怒られる日々。
自分にこの仕事は向いているのか?そもそもこの仕事に意味はあるのか?自分のやりたいことは何なのか?

考えれば考えるほど答えはでない。胸が苦しい。このどうしようもない現実から逃れたい。

そんな思いから一人で八丈島へ降り立った。言うなれば現実逃避の旅。回りは知らない人だらけ。誰にも何も言われない。

旅の恥はかき捨て。TVでたまた見かけた島のキャバクラに行ってみることにした。現実逃避中の現実逃避。普段付き合いで行くだけで一人で行ったことなんてなかった。

しかしこの現実逃避で行ったキャバクラは私の何かを変えた。現実に向き合う力をくれた。その一部始終を島の2人のキャバクラ嬢との会話からご覧いただきたい。

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ショートの黒髪清楚系のマリナちゃん(26)
都内のキャバクラでもやっていけるくらいの美形色白さんで接客、言葉遣いがものすごい丁寧。

僕  「なんで八丈島のキャバクラで働いてるの?」
マリナ「なんとなく笑」
僕     「きっかけは?」
マリナ「私奄美大島出身で鹿児島でキャバクラしてて、一緒に働いてた友達に誘われてなんとなく八丈島きたの。」
僕  「そうなんだ。友達は今も一緒にいるの?」
マリナ「来て3週間くらいで鹿児島帰っちゃった笑 私は今二年半島にいる笑」
僕  「そうなんだ、海とか好きだったの?」
マリナ「好きじゃない、アニメが好き」
僕  「笑」

一言でいうとノリで島に来た様子。お酒も入り打ち解けてきたので踏み込んだことを聞いてみる。

僕  「マリナちゃん彼氏とかはいるの?」
マリナ「この前まで同棲してたけど別れちゃった」
僕  「何で別れたの?」
マリナ「その人、島のインフラ系の会社の跡取りだったの。結婚したらずっと島にいることになるのね。お金遣いも荒い人だったから価値観もあわなくて。親の言うことは絶対みたいな人だったんだ。彼と付き合って一時期私キャバクラも辞めてたんだけどね。恋愛って難しいね。弟も先月結婚するんだ。焦っちゃうよね。」
僕  「そうだね。(何もいえなくなり沈黙)」

普段恋愛については島のお客さんには話さない分、観光客の私には赤裸々に語ってくれた。30歳手前の女性の仕事、恋愛のリアルが垣間見れた。流れで将来の話になる。

僕  「これからもずっと八丈島いるの?」
マリナ「私、来月島でるんだ」
僕  「そうなの!?なんで?」
マリナ「2年半の間に何十人も島を出ていく人たちを見てたの。私もなにかやりたいこと見つけないとなあって思ってて。それでやりたいこと見つけたんだ。化粧品関係の仕事。今資格取るために勉強してるんだ」
僕  「そっか。やりたいこと見つかってよかったね、おめでとう!」
マリナ「うん、ありがとう」

1時間の接客中一番、目がキラキラしていたように感じた。ノリで来た島で仕事をして恋愛もした。同じ境遇の女の子達が人生を決めて島を離れていく姿も何度も見る中で自分の人生のやりたいことを見つけたんだろう。

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巨乳ぽっちゃり系のゆみちゃん(36)
年齢聞いてびっくりしたものの堂々としていて自分に自信がある勝気なタイプ。接客はこなれたもので雰囲気は◎。

僕  「なんで八丈島のキャバクラで働いてるの?」
ゆみ 「私宮古島に3年、小笠原諸島に2年いて、それで今八丈島2年住んでるの。島回ってて働くっていうとキャバクラが一番融通が利くからさ」
僕  「すごいね?なんで島回るようになったの?」
ゆみ 「山形の短大出て地元の会社で働いてんだけど、会社がつぶれっちゃたのね。元々親が厳しかったのもあるんだけど、それでタガが外れちゃったの。好きに生きたいと思ったんだ。刺激が欲しくてさ。」
僕  「そうなんだ。キャバクラの仕事も大変そうだけど。」
ゆみ 「八丈島はそうでもないよ。宮古島は大変だったよ。ボトル開けないと料金発生しないから飲みすぎて体壊しちゃったこともあるもん。それにくらべると八丈島は時間制だからやりやすいよ」
僕  「そうなんだ、じゃあ延長お願いします笑」

急に込み入った話に突入するのが八丈島クオリティなのか?再び踏み込んだことを聞いてみる。

僕  「ゆみちゃん彼氏とかいるの?」
ゆみ 「いるよ。7つ下。最近島に来てあと数年は島にいるみたい。」
僕  「そうなの?じゃあ、ゆみちゃんも数年こっちにいるの?」
ゆみ 「どうだろ?でもすぐは離れられないよね。」
僕  「結婚とか考えるとってこと?」
ゆみ 「そうだね、もう年だし考えないとね」

仕事、結婚の悩みは大人になると誰しも抱える悩みだ。

僕  「休みとか普段はなにしてるの?」
ゆみ 「毎日3時間歩いてるよ。」
僕  「毎日3時間?」
ゆみ 「そう、毎日歩いてるから島じゃちょっとした有名人だよ。あとはシュークリーム作ったり、マッサージもやってるよ」
僕  「シュークリーム!?マッサージ!?」
ゆみ 「シュークリームの企画してて島で売り出してるんだ。カフェでも販売してるから行ってみて。マッサージは島にマッサージの先生がいて習ってるんだ。結構忙しいよ」
僕  「昼はシュークリームとマッサージ、夜はキャバクラ、あとは3時間の散歩。めちゃくちゃ忙しいね笑」

島の人=のんびりしているというイメージが覆された。一言でいうと意識高い系。都会のビジネスマンより忙しいかもしれない。そういえば接客からも随所にプロ意識が感じられる。場所、環境は関係ない、自分の意志さえあればやりたいことをみつけて、実行できる。チャンスは目の前にごろごろ転がっている。

2人の話を聞いて酔っぱらいながらふと気づいたことがあった。

島のキャバ嬢は私のように現実逃避で来て働いてるんじゃない。自分の人生と向き合いながら懸命に働いている。現実と向き合うために懸命に働き、何かをつかもうとしている。

自分はどうなんだろうか?

現実逃避で八丈島のキャバクラに一人で来た自分が恥ずかしくなった。自分は島のキャバ嬢とは正反対の姿勢で人生を生きている。

「現実と向き合おう、自分の人生を見直そう」
そう決めた八丈島の夜だった。

#八丈島 #キャバクラ #人生 #平成最後の夏

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