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生成AIとジャーナルクラブ Claude 3.5編——第2回 MGH Case Recordの要約


主な対象者

本記事では、MGH Case Recordのエッセンスを抽出し、それに基づいた臨床推論の教育を研修医や専攻医に対して行う指導医(卒後6年目以上を想定)をサポートするプロンプトを紹介しています。
本記事では、新たな内容として、学習者にとっての価値をスクリーニングするプロンプトも紹介しています。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #抄読会 #Claude #プロンプト #臨床推論 #NEJM #MGH #AIとやってみた

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました。

はじめに

ジャーナルクラブもそうですが、カンファレンスでのレクチャーを用意するのも時間や労力のリソース投入が多く、自身の診療・研究や管理業務、および家庭との両立が求められる指導医にはなかなか大変です。

以前に、Claude 3 OpusやGoogle AI Studioを用いて、New England Journal of Medicine、そこで定期的に掲載されているMGH Case Record——初学者には難解と定評がある——の内容を題材に学びを最大化するためのプロンプトを作成してみました。

2024年6月21日、突如Claude 3.5 Sonnetが公開されました。
先のClaude 3 Sonnetでは難しくOpusを使用したこのテーマにおいて、どの程度使えるのか試みました。

結論を先に言うと、自己学習程度であれば、ここでもチェーンプロンプトに頼らなくても活用できるくらいの内容は抽出してくれます。ですが他人に向けてプレゼンテーションするとなると、4つ程度に分割して一つひとつの質を上げた方が良いと感じました。
分割バージョンについては、上記のリンクをご参照いただけましたら幸いです。

プロンプトの前に  ファイルの添付

ファイルの添付はプロンプトを書く前でも後でも良いですが、その際の注意点です。
添付できるファイルにはサイズの上限があり、1個あたり10Mbまで(あるいは20万トークンまで)ですが、余程図の多いものでなければ大丈夫でしょう。ファイル名が長過ぎたり、ファイル名にセミコロン(;)が付いていても添付できないようです。ファイル名をバンクーバー方式(PubMedで記載されている「ジャーナル名.出版年巻(号):ページ」の方式)で保存している方は変更して添付する必要があります。

スクリーニングのためのプロンプト

今回、もっと簡単に当該の症例提示の学習効果をスクリーニングするためのプロンプトを作成してみました。
評価はちょっと甘い気もしますが、スクリーニング程度には十分と思います。

(ここから)
<role>
#あなたは臨床経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。論文査読にも優れています。
</role>
<instruction>
#添付したファイルの内容を、下記のような目標を定めた時の教育効果について、5段階評価(1〜5;5が最も高い)を行ってください。
##目標:症例提示から鑑別診断を考え、最終診断の疾患について短くレビューし、日常の診療に活かすためのclinical pearlを3,4個獲得すること。
##対象:卒後1〜5年目の内科系医師。
##形式:スライドを用いたプレゼンテーション。所要時間は20〜30分程度。
##評価項目:以下の項目について、1〜5の5段階評価を行う。
###関連性:日常の診療で遭遇する機会は十分あるか。
###新規性:一般的な内科系医師の知識水準と比較して、新しい内容が含まれているか
###難易度:一般的な内科系医師の知識への付加価値の水準が高すぎず低すぎない範囲か
###興味深さ:内科医が「面白い」と思える内容かどうか
###構造化:新しい学びはsemantic qualifierを活用して一文で言い表すことができるか
#もし合計点が20点以上であれば、3,4個のclinical pearlsを実際に示してください。
<instruction>
(ここまで)

###の各項目は、臨床研究で重要とされるFINERやFIRMNESSといったチェック項目を、今回の内容にカスタムしてアレンジしたものです。
先にpearlsなどを確認することで、教材として使ってみるかどうか素早く判断出来ると思います。

一括プロンプト

参考までに、一括バージョンのプロンプトも提示させていただきます。
分割して提示する場合は、以下のプロンプトからXMLタグ(<>で括られた文字)を消去し、「#続けて、以下の指示も実行してください。」の直前までで区切って4分割すると、上記のリンクと同様の構造になります。

<role>
#あなたは臨床経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。論文査読にも優れています。
#添付したファイルの内容を、教育効果を最大化する目的でプレゼンテーションしてください。
</role>
<instruction>
#一つずつ手順に沿って進めてください。まずは以下の指示を実行して下さい。

  1. 症例提示の部分を、以下の要素を含めて、聴き手がワクワクして、次にどんな展開があるのか聞き入ることを目指してプレゼンテーションしてください。

  • 病歴:主訴、現病歴、既往歴、その他病歴(社会歴、家族歴など)。現病歴は患者の病像がリアルにイメージできるよう、症状や身体所見の詳細を時系列に沿って述べる。病歴の途中で医療機関を受診している場合は、そこでの主要な身体所見や検査所見、受けた治療とその後の経過についても簡潔に述べる。

  • 身体所見:バイタルサイン、全身状態。以下、頭頸部所見、胸部所見、腹部所見、四肢所見、皮膚所見、神経所見について、情報が得られる範囲で過不足なくまとめる。

  • 主要な検査所見:血液検査、尿検査、画像検査、その他のより専門的な検査

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 鑑別診断についても、以下の要素を含めて、聴衆を魅了するプレゼンテーションを行う。

  • まず、症例提示部分のsemantic qualifierを挙げて、その症例の特徴を一文で表現する。

  • 次にそれ基づいた鑑別診断を、症例提示の文脈に依存しない形で箇条書きで列挙する。

  • その鑑別診断に基づいた、診断のためのアプローチを述べる。アルゴリズムを作成できる場合は行う。

  • 続いて、ディスカッションに基づいて考えられる主要な疾患や病態を挙げ、各々について本症例に合致する所見と合致しない所見を列挙し、可能性の高さを検討する。

  • ディスカッションで触れられていないが重要な鑑別診断がある場合は、それについても同様に、本症例に合致する所見と合致しない所見を列挙し、可能性の高さを検討する。

  • 鑑別診断を、疾患名、合致する所見、合致しない所見、本症例での可能性についてまとめて、表形式で提示する。

  • 診断に至った決め手となった所見や検査結果を示す。その所見や検査の特性(感度、特異度、結果を修飾する要因など)について簡潔に要約して示す。

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 診断後の経過についても、以下の要素を含めて、聴衆を魅了するプレゼンテーションを行う。

  • 診断に至った後に行われた治療と、治療法の適応について述べる。行われた治療が標準的な内容でない場合は、それを選択した根拠も提示する。

  • 治療後の経過や転帰、フォローアップの要点を簡潔に記載する。

  1. 最終診断に関して、以下の内容について、一般的な内容と症例の文脈に関連した考察をプレゼンテーションする。

  • 疾患概念と疫学

  • 臨床症状と所見:典型的な場合と非典型的な場合を含める。非典型的となりやすい要因があればそれも考察する。

  • 診断法:診断基準やゴールドスタンダードとなる検査所見について。

  • 治療法

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. この症例から学ぶべき重要な臨床的ポイントや示唆を3~4つの箇条書きでまとめてください。

  2. この論文のキーワードを5つ、ハッシュタグをつけて提示してください。

  3. 更に学びたい人へ、引用文献の中でおすすめの論文を3~5個挙げてください。挙げた論文一つひとつに対して、特徴を一文で記載してください。症例報告の発表年から5年以内に出版された比較的新しい論文を少なくとも1つは含めるようにしてください。バンクーバー方式でお願いします。

  4. この論文をデータベースに保存したいです。バンクーバー方式で記載してください。

</instruction>

終わりに

ここまでのプロンプトを用いることで、ものの数分でMGH Case Recordを題材とした教育資料の骨格が出来上がります。あとは細かい部分の原文との整合性の確認をやったり、必要な図表を用意するなどすれば十分でしょう。Claude 3.5の言語処理能力は大変優れており添付のPDFファイルの要約という条件なら概ね信頼できるのですが、最後の確認は人間が行う必要があります。その点は忘れないようにしてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。

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