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バンドリってプロレスだ

「迷うことを迷わない」そう銘打って放送を始めたBanG Dream! It’s MyGO!!!!!。自分はバンドリの大ファンであるため、当然今シリーズも視聴することにした。

夏アニメに放送ということで、春の段階から大きな広告や特番を目にする機会が増え始める。すごい力の入り用だなと思いながらも、バンドリの大ファンである自分にとって、供給が増えることはとても喜ばしい。四月の4thライブでの発表に始まり、5月末の制作発表会からは怒涛の特番ラッシュ。外に目を向けると、街には特大看板、電車の中にはこれ宣伝になるのか…と言わんばかりのセリフが散りばめられた数多のポスター達。そして6月29日には1〜3話一挙放送。なんという大盤振る舞い。そこから毎週木曜日は、バンドリ!TV LIVE 2023をみた後にBanG Dream! It’s MyGO!!!!!の最新話を見るというムーブを続けてきた。

ついに最終話を迎え、続編にあたるBanG Dream! Ave Mujicaの制作も発表された。続編がいつあるのかまだ分からないが、そう遠くないうちにあるのではないかと思う。というか、そうでないと困る。あんな最終話を見せられ、一年も二年も待たされるなんて耐えられない。この行き場の無くなった気持ち達を早く吐き出したい。そう思っていたところ、感想文コンテストなるものがあると公式からアナウンスされた。これはいい機会だと思って、このコンテストに感想文を投稿することにしてみた。

はじめに

BanG Dream!とは、アニメ、ゲーム、リアルライブなどの多岐に渡って展開されているメディアミックスプロジェクトであり、高校生がガールズバンドを結成し、バンド活動を通して成長していく物語である。これまで様々なバンドが登場しており、去年からは8つ目のバンドMyGO!!!!!が仲間に加わった。なんと言ってもバンドリの凄さは、キャラクターを演じるキャストがリアルライブを行っているということである。MyGO!!!!も同じくキャストがリアルライブを行っている。しかし、当初は顔を隠し正体を明かぬままライブを行うという新しい試みが行われていた。そこから約一年、四月の4thライブでキャストが解禁された。今回のBanG Dream! It’s MyGO!!!!!はそんな新バンドMyGO!!!!!を主人公とした新しいスピンオフアニメシリーズである。

バンドリってプロレスだ

バンドリには多くのバンドやキャラクターがいて、バンドを通して物語が進んで行く。手を取り合い、時には一度背を向け合い、出会いと別れを経験し、人と人とのぶつかり合いを経て夢を撃ち抜く物語だ。

この物語、どこかで見覚えがある。そう、プロレスだ。大きな志を持って入団し、デビュー後も様々な困難に耐え、仲間と手を取り時には裏切られながら、最高峰のベルトを巻くという夢を叶える。ブシロードという企業を抜きにしても、バンドリとプロレスに近しいものを感じる。物語が紡がれていく中心となるライブハウスの名前はRiNG。プロレスの物語もリング上で紡がれており、何かを感じずにはいられない。故に、今回の感想文では、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!というものをプロレス的な視点で見てみることにする。

第7話。ライブハウスRiNG

紡がれるストーリー

プロレスの醍醐味。それは、たくさんのストーリーが紡がれていることである。レスラーのストーリー。対面するレスラーとのストーリー。ユニットのストーリー。団体のストーリー。プロレスというものが始まって以来の数え切れないほどの、そして途切れることのないストーリーがリングを通して重なり合い、人間ドラマが織りなされている。一度ドラマに浸かってしまったら、どんどん奥へと引き込まれてくほどとても奥が深い。プロレスとはまさに、現在進行形で紡がれる大河ドラマなのである。

バンドリというコンテンツにも、同じ遺伝子を感じる。戸山香澄がGlitter*Greenに星の鼓動に似た何かを感じたその時から、今日まで数え切れないほどのストーリーが紡がれている。そのストーリーの最先端が今回のBanG Dream! It’s MyGO!!!!!であり、長年紡がれてきたストーリーを肌で感じることができる。

BanG Dream! It’s MyGO!!!!!は10人の少女によってストーリーが紡がれおり、少女達が手を取り合いぶつかり合いながらライブを成功させていく物語である。それぞれにバックボーンや信念があり、未来への道を閉ざしてしまった者、居場所を求めて放浪とする者、目的のためなら手段を選ばない者、たくさんのストーリーがぶつかり合いライブへと繋がっていく。物語は出会いから集大成となるライブまで描かれており、デビューからベルト戴冠までを描くプロレスと非常に親和性が高い。プロレスではリング上で物語が大きく動くように、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!ではライブハウスRiNGで行うライブにて大きく物語が動く。要所要所でライブの回が設けられており、ライブの度に新たなストーリーが始まっていく。

BanG Dream! It’s MyGO!!!!!は初見でも楽しめるようになっている。バンドを通して紆余曲折を経て成長するという、これまでのバンドリシリーズの型はそのままに、これまでシリーズを支えてきたキャラクターやバンド達はカメオ出演するという形をとっている。これが既にストーリーの邂逅である。初見でも十分に楽しめるが、もっとバンドリの世界を知っていくとなお楽しめるというところに、とてもプロレスを感じる。特に、12話での香澄と燈のマイク渡しは、バンドリをずっと追っている身からするとエモエモのエモであった。多くは語らないが、このような仕掛けがBanG Dream! It’s MyGO!!!!!にはたくさん散りばめられており、ストーリーの重なりを十分に楽しむことができる。

第12話。戸山香澄

ストーリーの節目である13話。続編の制作が発表されたものの、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!にとって最終話である。賛否両論あったが、プロレス的な視点で見ると、大正解である。MyGO!!!!!の物語がひと段落したと思ったら、Ave Mujicaなるバンドが登場しBanG Dream! It’s MyGO!!!!!の余韻を掻っ攫っていく様はまさにプロレスである。レスラーとレスラーのストーリーがリング上でぶつかり合い、試合終了とともにひと段落したそのとき、余韻をぶち壊すように、足早に次の展開へと強引に引っ張っていくあの感覚。胸を躍らせるあの感覚を、まさかバンドアニメで味わうことになるとは。ますます目が離せなくなった。

第13話。全てを掻っ攫っていったAve Mujica

豊かなキャラクター性

プロレスのもう一つの醍醐味。それは豊かなキャラクター性だ。プロレスラーそれぞれに豊かな個性があり、独自のキャラクターやイメージを構築している。面白いストーリーには必ず面白いキャラクターが必要で、豊かなキャラクター性がプロレスの面白みを格段と深くさせている。

MyGO!!!!!のメンバーも凄まじいキャラクター性を持っている。ボーカルの燈は感性がとても独特。MyGO!!!!!では作詞を担当しており、燈が綴る歌詞に燈の描く世界観が色濃く現れている。その歌詞をメロディーにのせるのはドラムの立希。立希は燈をとてもとても気にかけており(半ば依存状態)、二人が織りなすmygoの曲は、キラキラドキドキのように夢を見せてくれるようなものではなく、引っ張ってくれるというよりは寄り添ってくれるものである。ライブでは曲に入る際に、燈の語りが行われ、その曲に込めた思いを生の言葉で浴びることができる。その語りにそっと寄り添うのがギターの楽奈。楽奈は野良猫と言われるぐらい自由奔放な性格で、鍛え上げられたギターテクニックの上にフリースタイルな演奏ができ、言わばアドリブ激つよギタリストである。その楽奈が燈の語りにギターの演奏をのせ、最高の形で曲に入る。これが良い。とても良い。強烈なキャラクター性を持ったメンバーが集うMyGO!!!!!。このキャラクター性によってバンドの世界観がはっきりと輪郭を表し、それに曲がバッチリとハマっているため、常に酔いしれることができる。

第12話。MyGO!!!!!のライブシーン

クセの強いメンバーが集まっているため、話の展開はスムーズに進むことはない。特にBanG Dream! It’s MyGO!!!!!に登場するキャラクター達は協調性が全くないため、重く、堅苦しく、ドロドロとした展開が長いこと続いている。そのため訪れるカタルシスは凄まじく、10話はバンドリ一の神回と言っていい。7話での衝撃、8、9話での絶望を経てからの10話。オープニングの映像はパラレルワールドかと思うほどかけ離れた展開を、一話で一気に打開したその様は、指揮を取る柿本広大監督がバンドリアニメの一つの到達点と評するほどである。迷子のようにさまよう個性を、最高級に昇華したものとなっている。社会的に見るとあまり良いとはされない個性ではあるが、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!においてはこれで正解なのである。迷子でも良い。迷子でも進め。前も見えず、何もできず、それでも迷いながら進むその姿も、また美しいのである。綺麗さだけが美しさではないのだから。

第9話。そよと立希のぶつかり合い
第9話。愛音……

余談ではあるが、キャラクター性を出すやり方の一つに、容姿を意識するというものがある。体格や髪型など、差別化の図られた容姿が重要であるが、コスチュームもまた重要である。プロレスラーは仲間との絆を深めるようにコスチュームのカラーを揃え、そこにオリジナリティをくわえる。バンドでは衣装がそれに該当し、11話で衣装についての一コマがある。

第11話。衣装を切られたそよ

オーディエンスとのぶつかり合い

プロレスにはオーディエンスとのバトルが欠かせない。もちろん、レスラーは対面するレスラーとバトルをしている。しかし、その場にいるオーディエンスともバトルをしている。レスラーの熱とオーディエンスの熱がぶつかり合い、最高のバトルが成立したとき、そのリングは後世に語り継がれるものとなる。ときには歓声を、ときにはブーイングをあげ、最後に123のカウントを会場の全員で行う。ライブにおける、ある種コールとも言えるオーディエンスの声も、プロレスを形作る大事な要素である。

BanG Dream! It’s MyGO!!!!!もオーディエンスが大事な要素を担っていた。7話のライブシーンでは、MyGo!!!!!の番になるとオーディエンスが減るが、春日影とともにどんどんと増えていき、最後には大きな歓声をうける。10話でのライブシーンでは、燈が一人ステージで行った語りから、バンドにまたなっていく様子を見守っていたオーディエンスが、自分たちには背を向けられバンドメンバー全員で向かい合うという状況を受け入れ、燈の始めたストーリーに涙を流している。このように、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!の要所要所を担っているバンドシーンにおいて、オーディエンスによって深みが増しており、説得力が強固なものになっている。バンドメンバーとオーディエンスの熱が混じり合い、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!はいよいよ神アニメへと足を踏み入れることとなる。

第10話。燈のワンマンステージ
第7話。魂のままに叫ぶ春日影

終わりに

今回はBanG Dream! It’s MyGO!!!!!をプロレス的な視点で見た。さまざまな視点で見ても、本当に面白い作品であった。自分がバンドリの大ファンでなかったとしても、BanG Dream! It’s MyGO!!!!!は夏アニメで1番の神アニメだと断言できる。このアニメほど一週間が長く感じたアニメはない。バンドリという看板や3DCGなどの理由で視聴を躊躇うのは本当に勿体無い。それほどに心奪われるアニメであった。劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトから、ブシロードアニメの流れが大きく変わったような気がする。商業用ではなくちゃんとアニメ単品で勝負できるものが、今後も作られ続けることを切に願う。

拙い長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

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