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おいしいものには2がある #AWAKE24 2ndを終えて

序文


 本記事は、2022年11月25日から27日にかけてVRChat上で行われた、
「AWAKE24 2nd」という実質24時間音楽フェスイベントについて、
企画運営者という立場から振り返るもの。
 実際は所属するバンド「JOHNNY HENRY」と、会場でありオーナーを務めるVRライブハウス「V-Kitazawa AWAKE」と共に共同運営したイベントである。

 まずは関係者の皆さんお疲れ様でした。今回もすごかった。消費カロリーが。
 AWAKEというライブハウスについては、前回の記事に詳細があるので割愛する。
 前回記事を読む必要はないが、反省点やテーマの違いなど、対比するものはあるのでお時間のある方はどうぞ!

ちなみにほかの方のレポートもぜひご参考に…


強い思想・強い愛

 前回の記事で、テーマは「アンダーグラウンド」と振り返った。
これはあくまで個人的に考えていたことだが、今回も個人的裏テーマがあった。普遍的かつさらにざっくりしたものになったが、「カルチャー」である。

 VRChatという狭い狭いいちVRSNSの中で、さらに狭い音楽という文化ではあるが、昨年のAWAKE24からさらに拡大を続けている。DJ枠の削減や委託イベントなど(後述)もあって、顔ぶれは変わりつつも変わらず、と言ったところ。下記は前回のタイムテーブル。

 そして今回!

当然スケジュールの都合で参加いただけなかったユニットなどもいるのだが、公募していただいた枠などはかなりの変化がある。ここAWAKEがVRChatの音楽の中心というわけではないが、この一年弱で拡大しつつも代謝していることがよくわかる。

組み込まれた「委託イベント」

 「カルチャー」というテーマを掲げるなら、AWAKEというハコで営まれてきた文化を無視するのは明らかにテーマから逸れることとなる。

 VR Hiphop Unit 「CROWK」のメンバーであり、サイファーグループ「C3」の主催であるWisK氏が企画するHiphopとDJのイベント「Grenade」、VRDJのあしじゃが氏がなんかオシャレな曲を流すDJイベント「サムオシャ」の両イベントは、AWAKEのレギュラーイベントとして実に5回以上の開催を数えている。

貫録を見せつけたGrenadeのCROWK。写真は先日のワンマンからだが、常に満員の盛況ぶりであった。


 今回のAWAKE24は、それら育まれてきたイベント=カルチャーとして、専用の枠を設けてタイムテーブルをはじめ出演者まで丸ごと委託するという形を取った。決して運営コスト削減のためではない。断じて。

 結果としては、Part1の熱気に煽られてか普段とは違う熱さを見せてくれたGrenade、クールダウンさせつつも心地よいビートで朝まで観客を踊らせ緩やかに休憩〜オープンマイクまで繋いでくれたサムオシャと、イベントの流れとして非常に綺麗なものになったと思う。そこに組み込まれることで、レギュラー開催の時とは違った一面を見ることができたのも嬉しかった。AWAKE24自体が、その文化の一部なのだと実感することができたのである。

サムオシャ主催のあしじゃが氏。定期的に酔いつぶれてDJする。

変わらない「現地」へのこだわり

 一部のブロックでは配信ありとしたが、AWAKEというハコが誕生以来ずっとこだわり続けてきたのは「現地」へのこだわり。
ワールドに入って(駅を出て)、中央通りを進むとだんだんと日は暮れ、道の脇にひっそりと入口がある。控えめなシャッターが上がった入口に入り階段を降りると、まるで足りていないロッカーと無骨なカウンターがあり、脇にはこれまた人を入れる気があるんだかないんだかわからないホールへの扉が…と、「ライブハウスに訪れるまで」のトータルを体験として提供してきた。

現場の盛り上がりをぜひ体験してほしい


 とはいえ、実は現地有観客でのイベント開催はかなりのリスクを伴う。パッと思いつくだけでも、
・荒らしが侵入する可能性
・負荷によるフレームレート低下
・演者が落ちた際のリカバリの難しさ
・事前の告知が煩雑化する
・話し声が演者の音に被る(これをリスクとするかは人による)
・クレームや意図しない挙動の可能性
など、もはや枚挙にいとまがないと言える。
24時間超というロングランイベントゆえ、トラブル発生した際にタイムテーブルの影響する範囲が広く、最近の大型イベントでは無観客の配信のみという形式をとる場合も多く、これからは主流になるだろう。

 しかしあえて有観客にこだわりつづけるのは、同じ空間で同じ体験をし、違う感想を共有したりわかちあうことのできる体験として提供するためである。演奏後の演者がしれっと客席に混じって話ができるなんて最高じゃないか。おそらくライブハウスやAWAKEにいちどでも訪れたことがある方ならわかっていただけると思う。これも大切にしたい「カルチャー」といえるはずだ。

楽屋で演者同士のコミュニケーションが発生するのも現地ならでは

DJ枠の削減

 断腸の思いで決断したのは、表題のDJ削減。前回開催時にもっとも後悔したのは、深夜〜午前の時間帯にDJを組み込んだために、お客さんが少ない状況を生み出してしまったことだった。
 もちろんAWAKEでDJイベントが開催されることは少なくはないし、個人的にも三者三様のネタを持ち寄ってフロアを盛り上げていくDJは音楽イベントにとって欠かせない存在だと感じている。だが再び同じことを繰り返すわけにはいかず、サムオシャ企画とpart6の少数枠に限り、新たな試みを入れることとなった。もっとうまくやりたい。

オープンマイク枠の設定

 現在VRChatで音楽をやっている人間が必ずと言っていいほど一度は訪れ、サロンとして機能している「Spot Light Talks」と「玉響」(たまゆらって読むよ)の2ワールド。それぞれ土曜日、日曜日の夜を定期営業日として、直前にエントリーしたり枠が空いていれば飛び入りもあり得るオープンマイク営業の形式を取っている。
 AWAKE24の朝方にこれを導入してはどうか?と提案してくれたのはスタッフだったが、当時筆者は管理の煩雑化を懸念して反対していたような気がする。

 しかし当日、蓋を開けてみると朝9時という早い時間に関わらず多くの人が訪れ、エントリーリストは10時には埋まり11時ごろにはインスタンスフルになるという盛況ぶりを見せた。
 これについては、訪れれば気軽に演奏できるかもしれないという期待感とAWAKEの通常はブッキングオンリーという参入障壁の高さが下がったからかもしれない。いずれにせよ自分の視野狭窄を恥じるばかりだが、今後の運営に有用な大きな知見を得る結果となった。「カルチャー」を育てていくなら、参入しやすさを意識するのは必須事項である。

「Spot Light Talks」の青猫店長が来てくれたのは、普段交わらないが界隈のつながりの強さを感じる出来事であった

運営の所感

 前回よりかなり楽となったのは間違いなく、スタッフの練度向上やノウハウ蓄積によりトラブル対応も迅速にこの上なく、大きくタイムテーブルがずれることは最後までなかった(強いて言うならトリのバンドが終了時間を大きく押したが)

 事前準備に関しても参加者に指摘いただいてから動くこともあったものの「まぁなんとかなった」というところで、むしろもっとこうしろよというのがあればフィードバックが欲しいところである。バックステージパスを書き忘れたのはほんとすいませんでした。改善点があるとすればもっと事前に役割の割り振りを明確化しておくべきだったとは思う。

完走した感想ですが

固いのおわり!!!!!!!つかれました!!!!!
正直言うとめっちゃつかれました!!!!!
休憩用の時間とかちゃんと設けたんだけどなんだかんだ2時間半しか眠れなくて、そのあとほんとは見たかったブロックで仮眠をとっちゃったりと自分自身が最大限に楽しめなかったのがくやしーーー!!!!

こういうロングイベントって不思議な魔法がかかるもので、普段は共演しない演者が続いたりしていつもとはちがう「流れ」が生まれてきてだんだん熱を帯びてく感じがたまんねぇんだよなーと前回思ってましたが、今回もちゃんとありました!grenadeのみんながpart1の演者に衝撃を受けてて、やれんのかよ…みたいな空気になりつつちゃんと自らのパフォーマンスで完全にクロスカウンターにしたの最高だった。こういうのまた見たい。

とはいえ自分も出演者なので出番前に音合わせしたりとこれも楽しめなくなる要素のひとつではあり、でもこんな熱いイベントに参加しないなんてあり得ん…というジレンマもありつつ参加者全員に拍手したいです。

今回も公募枠は定員オーバーしてしまい、抽選・選考をする結果にはなりましたが3日ほど頭を抱えました。ほんと次回も応募してほしいです。次回はないけど。先述したように、カルチャーの生まれる場であり交差点であってほしいと思っているので来年の顔ぶれがどう変わるか、不安半分楽しみ半分です。

あとティアさんに代わって代打を果たしてくれたシュネーちゃんくうさん。本当に突然にかかわらず最高のパフォーマンスありがとうございました!あのタイミング(当日朝)でトリ前やってくれってかなりの無茶を言ったのですが、音合わせしつつ会場の盛り上がりを見てお願いして本当に良かったと思った…!!!

個人的には前回の雪辱は果たしつつも、まだまだ課題があるなーと。でもやっぱ現場仕切ってるのは結構楽しくて、来年も楽しみたいなぁと思っています。来年はないけど。

自分の出番


去年に続き、みずから企画し自らトリをやるという出来レースを演じましたがやっぱり楽しい。幕が上がった時のみんなの「はやくやれ」っていう焦燥感がHMD越しに伝わってきてすごくよかった。

胸に迫るものを感じつつもちゃんと歌わなきゃいけないし、言いたいこと言ってたらいくらでも時間経つし、明日は仕事だし…と意外と色々考えながらやってましたがまーめちゃくちゃでしたね。最近はパフォーマンスよりクオリティ重視(無観客が多かったため)のライブが多かったのですが、目の前にあんだけアツアツのお客さんが並んでたら無理よそりゃ。トラッキング飛びまくったけどなんかもうそういう話じゃなかったです。

ライブ中いつも「何をするべきなんだろう」と考えながらやってますが、今回は緞帳が上がって時点でわかっていて、「みんなと心を一つにすること」でした。いつもならとても難しいことなんですが、今回はホームで、しかも最初から心を開いてくれていたのでとても簡単でした。あんな夜遅くまでありがとうございました。

そしてアンコールなのですが、みんなが一緒に歌ってくれるのめちゃくちゃ嬉しかったです。YAMADA個人のポリシーの問題でコールアンドレスポンスの練習はやらないのですが、愛にすべてをに至ってはAメロまで歌ってる人いるじゃん。ウソだろ。ふつうそこ覚える?

たぶんVRで一番盛り上がったライブをやれたんじゃないかと思うけど、これも24時間の魔法みたいのがかかってたなぁ…毎回こうなってほしいなぁ…楽しかったなぁ…

AWAKEスタッフのみんなへ

今回も長丁場ありがとうございました!
思えばジョニヘとAWAKEはまったく同期なので3年間運営してきたことになります。
3年…?3年てすごくない?VRC人生の半分以上をバンドとライブハウスにつぎ込んできたのか…?すごいね…?
とはいいつつもほんとは自分がやったことなど偉そうにしたくらいなもので、継続的なアップデートはコクリコちゃんとたいらしゃんの努力のたまものであり、自分がいなくても無事イベントが回るのも継続して取り組んでくれたスタッフの練度によるものです。

モデリング、ディティール、照明シェーダーなど数々のアップグレードを急ピッチで実装してもらい、めでたく迎えた当日。
スタッフたちがトラブルにも全く動じることなく冷静に対処してくれたおかげで香盤も大きく狂うことなく、最後まで走り切れました。本当に感謝~~~~!!!!この人たち居ないとどうにもならなさすぎるから!!!!!

ここまで一緒にやってると信頼関係としてちょっと特殊というか、同僚のような戦友というかなんというか…なんと表現していいかわからないのですが、一緒にいるとほかの友達とは違う感覚を覚えます。ジョニヘとしても個人としてもお世話になりっぱなしだから、絶対いつかちゃんと恩返しがしたい。信じてもらってるからこそちゃんとした形で報いたいと思える人たちです。あきらめたくねー!!!!!と思えるのはみんなのおかげ!!!!

終演後のスタッフ(+藍葉じるあ)集合写真。
囲まれていることに安心感を覚えるものの、シフトの都合で映れなかったスタッフがいることにひどく寂しさを覚える写真。



次回とは

ありません。前回も言ったけど次回はありません。
でもなんかやっちゃう気がします!

このnoteは感想文であるとともに反省文でもあるので、次回があるならこれを読み返して頑張るんじゃないかなぁ。次はもうちょっとこうしたい、みたいな。来年夏ごろにもう一度これを読んで、あの熱狂と興奮を思い出して、またやりたいと思ったらもぞもぞと動き出すんじゃないかなぁ…

結局のところ、金銭的な数字にならないイベントに出演者を募り、何日もかけて準備し、夜を徹してスタッフに働いてもらい、得られるのはただただ純粋にお客さんの楽しんでいる姿や感想のみ。来年誘ったころには「去年出てもそんなにいいことなかったしな…」とお断りされるケースもあるかもしれない。立ち返れば、もう一度あの景色を見たいか?それだけが我々を熱くする。あくまで「カルチャー」に根差したイベントだからこそ、界隈の終焉とともにその命脈を絶たれる定めのイベント。来年にもう一度、24時間という刹那のきらめきを見せるか?それはやはり、お客さんがこのイベントの再来を求めるかどうか、ただそれにかかっているのである。

以上の言葉をもって本記事の結びとしたい。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
YAMADA先生の次回作にご期待ください。


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