恐い間取りを読んだ。

うちの妹は幽霊やら心霊やらの類は全然信じてないけど、怖い話の本ばっかり読んでいる。若い時から。

一番アホだと思ったのは、新耳袋を読んでた頃のことだ。朝の四時に起きた妹は、前日から読んでた新耳袋の続きを読み出したらしい。その頃、何故か父の会社では社員に般若心経を写経させるという、謎の取り組みがあり、家にはお手本と写経の紙があった。写経したら、会社に提出するのだ。全然信じてない癖に急に怖くなった妹は、会社から渡されていた写経の紙全部に、写経した。お陰で父はすぐにそれを会社に提出できたという事だろうか。

怖いなら読まなきゃいいのに。アホすぎて呆れた。

恐い間取りはそんな妹が買ってきた本だ。一巻は随分前に読んでいたので、二巻を読んだ後、改めて一巻を読み返した。

一巻は松原タニシが大阪をホームにしていた事もあってか、近所の話もいくつかあったが、二巻は大阪以外の事故物件の話が多く、あまり、親近感は湧かなかった。心霊現象やら事故物件に親近感もクソもないけど。近くのことだと、ああ、あの辺か。と周辺の雰囲気が頭に思い浮かんでリアリティが増す。

どこまで本当なのかは知らないけど。

昔、こちらは人間の怖い話を書いた本を読んでいて、どうも胡散臭い表現が多かった為、色々調べてみた結果、そこに書かれている事が嘘だということに思いに至った。とにかく、こういう話は半分くらいフィクションだと思って読むことにしている。

恐い間取りには当然、掲載されてない(事故物件じゃない為)けど、ウチの近所には、大阪では有名な心霊スポットの巨大廃病院があった。いつだったか忘れたけど、解体されて、今はもう無くなっているが、未だに病院名を検索すると心霊スポットとして紹介されている。

ワタシが物心ついた頃から、川向こうに佇むその病院は廃業していたし、母に聞いても、やってた事すら知らないと言う。

小学生の頃、禁止されていたけど、友達らと連れ立って前まで行ってみたが、怖くて中には入れなかった。

高校生の頃、妹の友人は中に入ったらしい。そこで見たのは幽霊じゃなくて、顔を銀色に塗ったスキンヘッドの男だった。ぎゃーっと走って逃げたらしいので、その男が何者なのかは謎だが、ヤバい人間なのは間違いない。むしろ、幽霊よりも実害を及ぼしそうなヤバい人間の方が怖い気がする。

噂としては、斧を持ったお婆さんに追いかけられる(おっさんの場合もある)、病院から電話がある。などあったが、そんなに沢山の噂は無かった。川一本挟んだ心霊スポットで、みんな一回は絶対行ったことある筈なのに、具体的な話もないので、心霊スポットということ自体が誰かの作り話だったんだろうと思う。そもそも、病院が閉鎖された原因についての噂も、医者が狂って職員や患者を殺しまくったとか、おかしな人体実験をしていた為とか、医療ミスが相次ぎ、死人が増えたため倒産したとか、割とありがちな話ばかりだった。

ワタシが覚えてる事と言えば、窓際にハンガーで掛けられた白衣が印象的だったことぐらいだ。あれも本当に白衣だったかどうか……。

そんな感じで、半分くらいしか信じてないワタシも、何度かちょっと目(耳)を疑う事態に遭遇したことがある。

一つは妹が姪っ子を産んで、家族全員がウチに寝泊まりしていた時期のことだ。母はスペイン旅行へ出かけており、家には甥っ子と妹の旦那とワタシと妹と生まれたばかりの姪っ子が居た。

キッチンのカウンター越しに、甥っ子と妹の旦那と向かい合わせに話をしていた時、甥っ子と妹の旦那の後ろにある、寝室の引き戸が物凄い勢いでバン!と閉まったのだ。妹は別室で姪っ子と寝ていたし、寝室には誰もいない。あれにはビビった。一回サッシに戸がぶつかって、反発でまた戸が開いたくらいの勢いだった。(表現下手過ぎ)戸が閉まるのをみたのはワタシだけだが、閉じた音で振り返った甥っ子と妹の旦那は、跳ね返って戸が開いていくのを見た。凄かったのは、妹の旦那と甥っ子は、何事も無かった様に、その部屋で寝た事だ。

そしてもうひとつは、友人の家に母から電話があった時だ。ワタシが自分のスマホの着信に気付かなかった為、そこにいるだろうと、友人宅に母が電話してきたのだ。

母の携帯に、つい先ほど自宅から電話があった。というのだ。

「怖いからまだ家に入ってない、早く帰って来て」

との事だった。

急いで家に向かうと、交差点で母が待っていた。母の携帯には確かに、自宅からの着信があった。時間はつい十分程前だ。母は電話があったので、ワタシが家に居ると思い、鍵を開けたのだが、電気が全部消えており、どう見ても誰もいないので、怖くなって家に入らないまま、ワタシに電話したらしい。家に電話してみれば?と電話させたが、当然、誰も出ない。

明日も仕事だし、家に入らないわけにもいかないので、玄関まで行ってみたが、怖くて入れない。もし、泥棒や強盗だったらどうしよう。という怖さがあった。玄関を開けっぱなしで、とりあえず洗面所に靴のまま上がり、モップを掴んだ。襲われたらこれで応戦しよう。と思ったからだ。

入り口から全部のドアを開けて行き、リビングに到達したわけだけど、結局、誰も居なかった。

だったら、誰が電話したんだ?という話になった。泥棒が、母が鍵を開けたまま、家を離れたすきに逃げたのかも知れない。

そんな風に考えたワタシは、何か盗まれてないか確認する為に玄関から一番近い、自室に行ってみた。そこで、原因が判明する。ウチは内装をした際に、パソコンを部屋で使うので、電話線をワタシの部屋に持って行った。そのため電話の親機がワタシの部屋にある。その受話器が上がっていたのだ。

ウチでは猫を二匹飼っており、その猫のどちらかが、どうも机の上に乗った様だった。足を引っ掛けたか何かで受話器が上がって、ついでに短縮に登録されていた母の携帯のボタンを押してしまったのだろう。

途端にホッとした。なんだか分からないままというのは、もやもやして怖い。原因が分かって安心して寝られる。と、母にも報告した。

結局、猫かよ。

ということで、安心して寝られた。

この話には矛盾があるが、それは読んだ方に見つけて頂きたい。

余談だが、その二匹の猫も、数年前に天国に召されたので、ウチにはもう猫は居ない。

友人や妹にワタシの部屋から電話すると必ず言われる。

「結構大きな声で猫が鳴いてる」

と。

こないだ久しぶりに友人にあった時

「ヤマダ、猫飼った?」

と、聞かれた。

え?なんで?と訊ねると

「いや、別に……」

と、濁された。

それが今、めちゃくちゃ気になってる。なんであんな事を訊いたんだろう。

そう言えば、一時期、母が占いにハマった事があった。ウチの父はそういうのが嫌いなので、父がいる時は行かなかったのだが、父が亡くなってからは数件、霊媒師だか占い師だかのところへ訪れていた。どこへ行っても必ず、家の中を斜めに霊道が通ってると言われたらしい。

当時は、へーと、遠い目で聞いてただけのワタシだけど、仕事が見つからないのは、それが原因なんじゃないの!?と、今、思ってる。






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