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雪の朝

いつもはちょっとズルをして、途中まで車で行く。
でもときどき、早くに目が覚めて歩いていく時がある。

不思議な夢をみて、目覚ましも鳴らぬうちにぱちりと目が覚めた。
大切な人がたくさん出てきた夢だった。

凍てつく朝だった。
しかし心があたたかいと寒さを感じぬのか、その日の勤行は歩いて行こうと思った。

昨晩降った雪が凍りついて、足跡もつかぬ朝。
カシ、カシ、カシ、カシ。
長靴をはいて、かたい雪の上をあるく。

うつくしいなぁ。

目の前の情景を残そうとスマホのカメラを向けるが、画面はまっくろのまま。
こんなに明るく見えるのに、本当は暗いんだ。
鹿の足跡の横を歩く。
大きな鹿、小さな鹿、足跡いろいろ。


少ない街頭のあかりを反射してきらきらと地面が光る。
雨の日のぬるりとしたきらめきでもなく、新雪のふわりとした輝きでもない、鋭くチカチカと光る、凍てついた雪独特の反射。

こんなに美しいのに、やっぱりカメラには写らない。

ときおりつるりと滑る地面がある。
雪もない地面のようで、見えない氷がアイススケート場のようにはっている場所。(アイススケートをしたことはないのだけど、きっとこんなイメージなのだとおもう)
英語ではこれを『ブラックアイス』と呼ぶらしい。
少し前までブラック"アイ"だとおもっていて、なんとファンタジーなネーミングだろうかと感動していたのだけど、実は案外普通の名前だった。
だよねー。


山道に入り、お堂に近くなるとからだが熱くなるので上着を脱ぐ。
家でじっとしているとストーブを焚いていてもあんなに寒いのに、お山を歩くと10分でポカポカ。

お堂に着くと、香の香りがふわりとした。

こんな朝も良い。

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