「ウォッチ売りの少女」企画書
キャッチコピー(1文で50字まで)
あらすじ(300字まで)
第1話のストーリー(1,000字まで)
駅前で小海らみ(18)が中心となり高校生達が募金活動をしている。
武藤エム太(63)は彼女達を尻目にコンビニへと向かう。
エム太は批判的だった。
そもそもボランティアなど偽善者を演出するためのパフォーマンスに過ぎない。
高校生が参加するのは、内申点を上げたり受験の時のエピソード作りであったり。
そして高校が生徒にやらせるのも、所詮やりがい搾取と共に、社会へのアピール以外に他ならない。
結局は、全員良い人に見られたいとしか思っていないのだ。
せっかくの高校時代、留学でも勉強でも恋愛でも、自分のために力を注げば良いのに。
エム太は今日も駅のホームの最前列で電車を待つ。
毎朝のルーティーンは、毎朝の電車で少年漫画雑誌を読むこと。
だが今日の行き先は職場ではない。
ふと、少年漫画の主人公の言葉に目が止まる。
「人を助けるのに理由なんてないっスよ」
パタンと雑誌を閉じる。
その直後、近くにいた中年男性が線路に転落。
「あーあ」と一歩足を踏み出す。
すると同時に、快速通過のアナウンス。思わず踏みとどまる。
次の瞬間、小海が線路に飛び降りていた。
必死に男性を脇へ寄せる小海。
エム太は逃げるように非常停止ボタンを押しに行く。
電車が急ブレーキで迫ってくる。
けたたましい警笛音。
ギリギリで轢かれずに済む。
エム太は改札へ戻り、孫に電話をかける。
「ごめんよ〜じいちゃん、ちょっと今日行けなくなっちゃった」
電話の向こう側で「じいじ大嫌い」と大泣きする孫。
娘からは「どうせ仕事でしょ。もう定年するんだから幼稚園の間にこっちに時間使ってよ」と勘違いされる。
さらに、年寄りの時間と幼稚園児の時間の価値は雲泥の差があることを理解してくれと続く。仕方なく「明日十時に行くから」と電話を切る。
その直後、一人の少女に声をかけられる。
「時間、買いませんか?」
少女は時間を売っているのだという。
しかしエム太は断る。
簡単に言えば、今の時間が増えるのではなく、寿命が延びるということらしい。
それでは意味がない。
翌朝。
エム太は、今日こそは、と朝7時に電車に乗ろうと決意していた。
しかし、朝7時にも関わらず、小学生の少女が孤独に立っているのを見かける。
一度は素通りするものの、どうしても気になり話しかける。
少女は迷子になったらしく、大号泣。
エム太はしばらく少女をあやすが、警察官に囲まれてしまう。
誘拐犯と間違えられたらしい。
第2話以降のストーリー(3,000字まで)
誘拐犯の疑惑をかけられたエム太。
自力で説明するがなかなか信じてもらえず駅長室へ連行されるハメに。
やはり人のために、と善意で行動するのは間違いだったと後悔する。
そしてあっという間に孫との約束の時間も過ぎてしまっていた。
その時、小海が仲裁に入ってくれる。
小海は少女をあやし、エム太に声をかけてもらって安心したということを聞き出してくれ、ようやく解放。
しかし携帯には27通の娘からの着信。
娘に事情を説明しても「どうせ下心があって声かけたんでしょ」と言われ、「もう来なくて良いから」と電話を切られてしまう。
小海の学校への道すがら一緒に会話する。
エム太は孫に胸張って会える自信がないということ。
理由は「自分が子供の頃考えていた大人っていうのは、なんていうか、こう、キラキラ光ってた」。
しかしそんな大人になれていない自分が嫌。
そしてまさか誘拐を疑われるような人間に見られていたとは。自分の思った以上に年齢がいっていることを受け入れきれず情けない。
小海は告げる。
「ピッカピカで眩しいです」
後先考えずに線路に飛び出すよりも、いかなる時でも冷静に一番の最善策を取る。
エム太が非常停止ボタンを押してくれたおかげで電車に轢かれずに済んだから、と。
エム太は、本当は死ぬのが怖かっただけなのだが、本音は黙っておくことにした。
その上でなぜ小海は人のために動けるのかを尋ねる。
「今日が人生で最後の一日だからです」
感銘を受けたエム太は、ウォッチ売りの少女を探し出し、伝える。
「時間、買います」
エム太は、時間の購入自体に魅力を感じたわけではない。
ただ、気付いたのだ。
周りからの見え方が歳とっていたのではなく、エム太自身の考え方が歳をとっていたのだ。
今から残りの人生かけて叶えたい夢。
それは、孫の成長を一日でも長く見守ること。
エム太は小海と約束した。
エム太は孫の成長を見届けること。
そして小海は、水泳部の引退試合でベストタイムを更新すること。
その契りのきっかけとして時間を購入してみるのだ。
少女は話を聞きながら、ストップウォッチに接続した注射針をエム太に刺す。
そしてエム太は50万円を支払い24時間を購入。
「簡単に言えば、寿命が一日延びたとお思いください」
その頃、小海は下校中に交通事故に遭い救急搬送されていた。
一方、エム太は気まずいながらも孫との時間を楽しんでいた。
河原でバーベキューの準備をしながら娘と話す。
娘は、孫が爺ちゃんと会えると喜ぶから会うことを許した、と。
エム太がふと川へ目を向けると孫の姿が見えない。
川に流されている。
一歩踏み出すが、水が怖くて震え始める。
しかし目の前で溺れる孫。
意を決して川へ飛び込むエム太。
なんとか救い出すが、携帯は水没。
病院。
医者からの宣告。「今日明日が峠です」
エム太は”今日から”時間をつくって孫に会うのでは遅過ぎたと後悔する。
もっと前から時間をつくっていればよかった。
その時一つの案をひらめき、駆け出す。
再びウォッチ売りの少女の元へと駆け込む。
「孫に時間を買うことで寿命を伸ばせないか」と迫る。
しかし返事は「命を落とすまでの時間が延長されるのであって意識が戻るのとは別物ですよ」というもの。
生きてるだけで良い、と食い下がるが少女の対応は変わらない。
そこで「孫の成長を見届けるって決めたんだ!」と無理やり機材を奪い取ろうとする。
しかし少女の説明では「今は時間の超過需要で在庫もほとんどないのでお売りできません」とのこと。
藁をもすがる思いで、エム太はどこかに時間はこっそり保管しているのではないか、と色々な部屋へ押し入る。
すると予約と書いてある注射器を発見。奪い取ろうとするも揉み合う間に注射器が割れてしまう。
唖然とする少女を置いて他の部屋にも探しに行く。
大金が積んである金庫部屋を見つけ侵入するが、自動ロック。
閉じ込められてしまう。
暴れるがドアは開かない。
腹は鳴る。携帯は水没して使えない。服はまだ湿っていて寒い。
憔悴し倒れこむ。
少女は顔面蒼白で電話をかけるが繋がらない。
電話の相手は小海だった。
小海は病院のベッドで安静にしている。骨折だけで済んだため明日には帰れるが、水泳はできないと説明されている。鞄の中で携帯が静かに鳴っている。
金庫の中では大量のお札を身にまとって防寒しているエム太。
お札を食べて腹の足しにもしている。
「これで十万円分の料理食ったのと同じだな」
手帳に挟んだ孫の写真を見つめる。
「金も時間もこんなにあるのに助けてやれない」
エム太は考える。
超過供給ということは、自分が買った時間は誰かが売った時間だったということか?
少女の電話がようやく小海と繋がる。
時間が破損してしまったため取り置いていた分を売れない旨を伝える。
金ならいくらでも払うと言いながら金庫を開く。
こうして、エム太が閉じ込められていたことに気付く。
エム太は、予約者について尋ねる。
少女は、小海について語る。
親がつくった借金を返すためにバイト漬けの生活をしていた。
一日一日を乗り切ることだけを考え続けた日常の中で出会ったのが少女。
そこで自分の時間を売って返済。
その上で、いざとなればなんでもできるという経験から、残りの人生全てを売り、一日ずつ買い戻すという生活を始めた。背水の陣のおかげで後悔のない日々を過ごしてきた。
それを聞いたエム太は、少女に時間の売り方を尋ねる。
そしてエム太の持つ時間を査定すると、1000万円分で寿命が尽きるという。
最後の一日だけを残して売却することを決意し、注射器をポケットに大事にしまう。
寿命は残り24時間。
人生最後の夢を叶えるために。
その時、小海がオフィスへ入ってくる。
少女は平謝り。
新生児科にでも潜入して時間を強奪してくるとまで言う。
しかし小海は言う。
「私、もう時間買いません」
実は私、あの日に返済しきれなかったら殺されていたんです。
特別にこの数週間過ごすことができたので満足です。
エム太との約束を交わしたことは、明日も生きて良いと認めてもらえた気がして嬉しかったと告白。
私が死ぬ気で生きた2週間でわかったこと。
お金も、時間も、本当の仲間もなかったということ。
エム太はガバッと立ち上がり小海に注射針を差し込む。
「2つもあるだろ。自分自身と未来だ」
「俺も死ぬのは死ぬほど嫌だけど、何もしないのは死ぬより嫌だ!」
小海が涙を流し「生きたい」と唱える。
少女から「お孫さんに渡す分は?」と尋ねられる。
エム太は寿命を一万円で売り、余命一時間に。
そこで得たわずかな時間を病院へ届けにいく。孫に注射する。
孫は意識は回復せずとも、峠は越えることができた。
エム太は、自身の余命は隠したまま、娘との最後の会話を楽しむ。
娘はなんとなく勘付くが笑顔で別れる。
エム太はオフィスへ戻る道、死に際くらいは善行を、と老人の荷物を持ったり外国人に道案内したりする。
そして遂に迎える死亡時刻。
小海と少女に見守られながら横になる。
孫を見届けるという夢は、天国からでも叶えられる。
そう言いながら目を閉じる。
……が死なない。
少女が分析するには、人助けなどした中で、余命に一万円以上の価値が生まれたということ。
売り払った金額は一万円分なので残りが余っている。
それによって気付く。時間の価値を高めることで時間はいくらでも作れるのだと。誰にも価格なんてつけさせない、そう誓って時間を過ごしていく。
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