【GTA5二次創作小説】ジュン・カサイとは何者なのか
ゲーム『グランド・セフト・オート5』の二次創作小説として細々と執筆してきた『グランド・セフト・オート5ジュン・カサイ(GTAVJK)』が完結しました。完結までお読み下さった皆様、本当にありがとうございました。
本編の後書きではあのように淡白な装いをしましたが、やはり自分の作品については語りたいと思い、恥ずかしながら本稿を書くことにしました。ここでは、GTAVJK唯一のオリジナルキャラクターであるジュン・カサイ(a.k.a. JK)がどのように生まれたのか、一体どんな人物を想定していたのかを紹介したいと思います。一体何人の方がこれを読んでいるかは分かりませんが(読者0人すらありそう)作品の理解を深めるのにご活用いただければ幸いです。
GTAVJKとジュン・カサイの誕生
「GTA5に日系人の女の子をしれっと登場させる」
このアイデアが生まれたのは、うろ覚えですが、2015〜2016年頃だったと思います。フランクリン、マイケル、トレバーの3人が横並びに立っていて、トレバーの肩の上に小さな女の子が乗っているという絵面を、仕事中にふと思いついたのが始まりです。
それから「各ミッションに女の子がひょこっと登場するのは面白いんじゃないか?」と思い、仕事が暇な時に脳内でストーリーを考えていました。ただ、その頃はJKという設定もなく、少女は英語が喋れず無口で、無垢で、ほとんど意志を持たない愛玩動物のような感じで登場するだけでした。多分、その頃ちょうど読んでいた漫画『ひなまつり』のヒナっぽい感じに影響されていたのだと思います。(ちなみにジュンのスタンダードな服装はヒナに影響を受けてます)
ジュン・カサイという人物が意志を持つようになるのは2016秋〜2017年春頃、一念発起しプロットを書き始めた時です。このプロットはGTA5のストーリーミッション全てを箇条書きで羅列し、そこにジュンが登場する想定で物語の骨子を記載したもので、数年前まではiPhoneのメモにあったはずなのですが消失しました。そのため、正確な日付けは分からないですが、これがGTAVJKの始まりだと捉えています。「GTA5にJKが登場するからタイトルはGTAVJKが面白いんじゃないか」という理由で、少女が女子高生という設定も付与されました。JKがイニシャルにも当てはまるという設定を付与し、さらにGTA3の世界観も引用し、ジュン・カサイという姓名が決定したのもこの時だったと思います。ちなみに、ジュンという名前はJから始まる女性の名前で思いついたのがこれしかなかったからです。
この「第一のプロット」は、序盤「フランクリンとラマー」と「最終章」以降のエンディングを除く物語の基礎となり、GTAVJKの原型となっています。しかしここに登場するジュン・カサイは舞台装置的な存在でしかなく、人物設定すら希薄な存在でした。
「1周目」で変容するジュン
GTAVJKは2回執筆しています。
1回目は2017年5月4日、「回収稼業」が最も古いファイルです。すでにジュンとフランクリンが出会った前提で始まっています。(なお、フランクリンとジュンの出会いのシーンは最後まで決まらず、ずっと後になってから書きました)
私はこの1回目の執筆をゲームと同様に「1周目」と呼んでいます。しかしその出来は……あまりにも稚拙で、とてもお見せできるものではございません。私としてもそれを自覚した上で「プロット作りの延長として書こう」という軽いノリのもと、いつ挫折するかも分からない1周目に挑みました。
ただ、飽き性なくせに意外にも継続し、2020年1月15日にプランCのエピローグのファイルが作成されています。およそ2年半に渡る執筆でGTAVJKの1周目は完結しました。その後、ちゃんと人様に読んでもらえるクオリティにすることと、後述のジュンという人物像を詰めた状態で登場させたいという2つの理由から、丸ごと書き直すことを決意しました。それが2020年1月18日の「フランクリンとラマー」から新たに書き始めた「2周目」です。
さて、この1周目におけるジュンは、実は今とは別人に近いキャラクターでした。まず、わりと純粋無垢で普通の女の子でした。序盤では皮肉や悪口もあまり聞かれず、毒のないキャラでした。仕事の暇つぶしで思いついた外観だけのキャラを継承していたのです。今にして思えば、ただいるだけのマスコット的な扱いです。
しかしストーリーが進むにつれ、ジュンは別のキャラに成長していきました。理由は、中盤以降でジュン視点のミッションが増えたことだと思います。彼女視点で書く際に「こいつは何を考えてこんなことをしているんだ?」という疑問にぶち当たります。フランクリン、マイケル、トレバーはすでに完成されたキャラクターであるから問題ないのですが、ジュンだけはスカスカの空洞化した人物のような印象のまま書いていました。そのため、どんどん後付けでジュンというキャラが肉付けされていき、結果、序盤と終盤では別人みたいになりました。「成長譚としてもこれは無理がありすぎる!」ということで2周目を書くことになったわけです。
なお、この件についてはミッション「誰かヨガって言いました?」で自分へのアイロニーとしてマイケルの台詞に反映させました。
この台詞、実は1周目の毒のないジュンのことを指しています。ジュン・カサイというキャラクターは最初、GTAVJKにとって、作者である私にとって、単に都合のいい存在でしかありませんでした。他のキャラクターのよき理解者であるし、若者のくせに中年に寄り添ってくれる。何の根拠もなく、何のイデオロギーもない。当時執筆してた私は、この頃に「こりゃマズい」と思うようになったようです。
そうして始まった確たるジュンを探す「2周目」の執筆。次から、皆様に「提供」してきたジュン・カサイの解説をします。
ジュン・カサイはほぼオリジナルキャラではない
いきなり何を言うんだお前は?
そう思われるかもしれませんが、この点に関してはpixivのコメントで気づいてくれた方もいました。本当に鋭い方もいるものですね。
と言うのも、ジュンはGTA5の3主人公の要素を合体させた存在として肉付けをおこなったキャラであるのです。以下の要素です。
フランクリン:友情、調和としてのジュン。義理に厚く、友達を裏切らない。周囲で諍いが起きると調停役になる。
マイケル:家族としてのジュン。世間一般的な“普通”の家族に対する羨望があり、その理想を自分自身の力量や人となりを考慮せずに追い求めてしまう。また、癇癪持ちである点でも一致する。
トレバー:仕事としてのジュン。心の隙間を埋めるように「仕事」を自らに課し、成果と報酬を求める。また、狂気を内在する点でも一致する。
つまりフランクリン、マイケル、トレバーの要素を併せ持つキャラクターであるということを大前提とし、ジュンというキャラクターを作ったのです。割合としては3:3:3で、残りの1がオリジナル要素のジュン。これを「オリキャラ」と言っていいものか……読者の判断にお任せします。
次回以降になりますが、ジュンの成長の物語とは、3主人公が持っていながらジュンには欠落していた「友情」「家族」「仕事」の3要素を手に入れていくことが本筋にあたります。
GTA主人公としてのジュン
ジュンをGTA5の主人公にするためには、まずGTAシリーズの歴代主人公を分析する必要がありました。歴代GTA主人公に共通する要素は4つあります。
地頭が良い。ある程度教養があり、常識がある。
ツッコミ役である。多くのサブキャラクターが主人公よりもバカであったり、異常者である。また、他のキャラよりも良識がある場合が多い。差別主義者ではない。
強い。プレイアブルキャラクターであるため。
犯罪者である。
トニーも、トミーも、CJも、そしてニコも、上記3点で共通しています。トレバーですら同様です。(一切喋ることのないGTA3の彼は例外的ですが)つまり、この4点がGTAの主人公になる資格であり、その上で長所・短所や特徴などを作っていけば良いのです。
ジュンもGTA5の4人目の主人公になるからには、上記4つの資格を満たしてもらう必要がありました。
底辺高だが日常会話を難なくこなせるほどに英語を習得可能な地頭の良さ。
数々の異常者と変質者に絡まれるくらいには常識人で、ツッコミ役をこなす。
女子高生という設定が意味をなさないレベルでニンジャのように立ち回る。
犯罪者である。
1は、GTAVJKを思いついた時には想定していなかったので、「2周目」の執筆での後付けでした。しかし、少女成長物語であるという前提もあるので、未完成ながら可能性を秘めたキャラにするのに苦労しました。結果、異世界に転生して俺つえーとまでは行かないけど、俺つえーをやっている大人達の助けを得て無双する主人公が出来上がりました。
2は、特にサブストーリーの変質者と不審者ミッションで活用しました。常にツッコミ役ですね。ちなみにツッコミの感じは『ボボボーボ・ボーボボ』のビュティや『魔人探偵脳噛ネウロ』の桂木弥子を参考にしています。(両作者は師弟関係です)また、GTA主人公の重要な資格に「差別主義者ではない」というものがあります。これは「国境警備隊」編で実現しています。
3は、プレイアブルキャラクターなので当然というか、仕方がないというか。しかし設定では女子高生なので、「叔父に剣術などをしごかれた」「ヤクザの鉄砲玉をやらされていた」「才能がすごくあった」という要素てんこ盛りでなんとか対応しました。もう女子高生じゃないよこれ。
4はさらりと書いてますが、結構重要です。GTAでは簡単に人を殺して物を盗みますが、その罪を何とも思わないでいながらジュンというキャラの魅力を損なわないようにするのが難しかったです。特に序盤は、たとえば「万引き連続達成記録」を誇らしげに語るとか、そう言った細かい点で倫理観が抜けた年頃の少女感を醸し出すように工夫しました。
いつもの悪い癖で、何か書こうとするたびに字数が多くなってしまう。
次回は、GTAVJKの少女成長譚としての性質についてくどくどと説きたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?