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【薬剤師】スポーツファーマシストについて

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

2021年に東京オリンピックが開催されたことを皮切りに、スポーツに対する薬剤師ならではの関わり方が注目されています。それが、スポーツ医学やアンチ・ドーピングを専門にする「スポーツファーマシスト」です。公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によって認定される資格制度です。

また、ニュースなどでたびたび取り上げられる、スポーツ選手のドーピングによる失格やメダル剥奪なども話題にのぼります。その中で、スポーツ選手本人が意図せずにドーピング行為をしてしまう話もよく耳にします。

ドーピング行為を反対する「アンチ・ドーピング」は国内でも活発になり、薬の専門家である薬剤師の活躍が期待されています。今回は、アンチ・ドーピングについての理解を深めるとともに、ドーピング行為を防ぐためのスポーツファーマシストの対応などについて解説していきます。


1.「アンチ・ドーピング」とは?

ドーピングは、競技能力や運動能力を増幅させる可能性のある医薬品や技術を不正に使用したり、その使用を隠す行為です。本来、身体能力を最大限に発揮して行うべきであるにもかかわらず、その行為はフェアプレー精神に反するとしてスポーツ界で禁止されています。

アンチ・ドーピングは、言葉のとおり、そのようなドーピング行為に反対・対抗する活動です。本来あるべき公平なスポーツ競技として成り立たせるために、教育や啓発活動・検査などが実施されています。

1999年に設立された「世界アンチ・ドーピング機構(WADA)」は、国際的な共通ルールとしてアンチ・ドーピング規則で示されています。

1. 採取した尿や血液に禁止物質が存在すること
2. 禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること
3. ドーピング検査を拒否または避けること
4. ドーピングコントロールを妨害または妨害しようとすること
5. 居場所情報関連の義務を果たさないこと
6. 正当な理由なく禁止物質・禁止方法を持っていること
7. 禁止物質・禁止方法を不正に取引し、入手しようとすること
8. アスリートに対して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てること
9. アンチ・ドーピング規則違反を手伝い、促し、共謀し、関与すること
10. アンチ・ドーピング規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つこと

(1)禁止物質

(2)ドーピングがスポーツ選手に与える影響

筋肉増強や持久力増強などを目的に、常用量をはるかに超えた用量の医薬品を服用すると、選手に健康被害があられたり、後遺症に苦しんだりする場合もあります。最悪のケースでは命を落とす選手もいるなど、安易に手を染めることは非常に危険な行為です。

また、検査によってドーピングの使用が認められれば、選手生命にも影響が出るでしょう。過去にも、ドーピングにより社会的信用を失い、現役を続けることが難しくなった選手も多く存在します。自分自身のこれまでの努力が水の泡となるばかりか、チームメイトからの信頼や応援するファンの期待を裏切ることになり、すべてを失うことになってしまうのです。

2.「スポーツファーマシスト」とは?

『スポーツファーマシスト』とは、最新のアンチ・ドーピングに関する知識を持った薬剤師です。2009年、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)により、「公認スポーツファーマシスト認定制度」が発足しました。以降、日本薬剤師会の協力も受けながら、様々な角度からアンチ・ドーピング活動に取り組んでいることが知られています。

公正さを重んじるスポーツ競技の世界において、ドーピングは重大なルール違反。選手生命に影響を及ぼすこともある危険な行為です。問題となるのは、身体能力や集中力の向上を目的とした意図的なドーピングだけではありません。禁止成分が含まれていると知らずに市販薬やサプリメントを使用してしまう、「うっかりドーピング」も問題となっています。

国際的なスポーツ大会はもちろん、アマチュアのスポーツ大会においても、ドーピングの危険性はつきものです。健康や医薬品について悩むアスリートの頼れる相談相手として、薬剤師の活躍が期待されています。

スポーツファーマシストが活躍できる最も大きな舞台は、世界的規模の国際スポーツ大会です。ドーピングによる選手資格やメダルの剥奪などの深刻な事態を防ぐため、担うべき役割は自然と大きくなります。また、アンチ・ドーピングへの意識の高まりに伴い、今後は小規模な大会においてもドーピング管理が行われることが考えられるでしょう。

こうしたスポーツ大会に参加するアスリートへの対応が、スポーツファーマシストの役割です。ドーピング検査、医薬品に関する相談や情報提供、どうしても薬を使用しなければならないときの治療使用特例(TUE)の対応などが求められています。

そのほか、地域や学校教育の現場にて、医薬品の適正使用について話をしたり、アンチ・ドーピングに関する情報提供をしたりすることも重要な役割です。講演会やカウンセリングなどを通して、国民に対して啓蒙活動を行うことが"真の役割"と言えるでしょう。

つまり、スポーツ協会や学校団体などのほか、地域のスポーツセンターなどにおいてもスポーツファーマシストは大いに活躍できるのです。また、アンチ・ドーピング活動だけでなく、健康管理や栄養管理など様々な面で力を発揮していくことも期待されています。

3.「スポーツファーマシスト」の取得方法

スポーツファーマシストになるには、基礎講習会と実務講習の2つを受講し、知識到達度確認試験に合格する必要があります。対象者は、「基礎講習会の受講時点で薬剤師の資格を有する者(年齢不問)」。つまり、薬剤師国家試験に合格したばかりでも、薬剤師免許の申請さえ間に合えば資格が取得できるのです。

資格取得に向けた、講習の受講〆切は4月~5月頃。すべての講習を終えて試験を受けるのに約1年かかり、翌年4月1日に認定されます。具体的なスケジュールや講習・試験の内容については、下記でご紹介します。

(1)4~5月:受講者募集受付

毎年4月下旬より、公認スポーツファーマシストのホームページにて募集の受付が始まります。申し込みの際、6~7月頃に行われる基礎講習会を東京会場と大阪会場のどちらで受けるかを選択します。その後、期日までに受講料を振り込めば申し込み終了です。

募集の受付は、毎年4月~5月のみで、タイミングを逃すと翌年になってしまうので注意が必要です。毎年3月に募集告知があるので、ホームページを確認するようにしましょう。

また、募集人数には制限があり、定員を超えた場合は抽選となります。必ずしも希望する年に資格取得できるとは限らないことを念頭に入れておきましょう。

(2)6~7月:基礎講習会への参加

東京会場・大阪会場のいずれかにて、基礎講習会を受講します。1日を通して行われ、スポーツファーマシストの概念や役割、ドーピングの問い合わせに対する対応、使用できるツールなどの説明を受けます。

(3)11月~12月:実務講習への参加受付

登録したメールアドレスに、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)からメールが送られてきます。参加受付は短時間で済ませることができますが、期限を過ぎてしまうと実務講習や知識到達度確認試験が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

(4)12月~1月:実務講習、知識到達度確認試験、認定申請

実務講習の参加受付を済ませている方に、受講の案内メールが届きます。実務講習はインターネットを用いたe-ラーニング形式で行います。同様に、知識到達度確認試験もインターネットで行うので、自宅など落ち着ける場所で臨めるでしょう。

試験合格後、指定の口座に認定料を振り込めば認定申請は完了です。

(5)4月1日:認定

4月1日、『スポーツファーマシスト』として認定された旨のメールが届きます。

資格取得後、認定者用ログイン画面で勤め先の薬局などが登録できるようになります。これに対応すれば、日本アンチ・ドーピング機構ホームページにある、「スポーツファーマシストを探す」機能で検索結果に表示されるようになります。

(6)認定取得後

資格の有効期限は4年間。以降は、4年毎の更新が必要です。資格維持のためには、毎年e-ラーニングによる実務講習を受講した上で、4年目にe-ラーニングにて基礎講習と実務講習を受講。その後、知識到達度確認試験に合格する必要があります。

手続きや講習の受講は、すべてインターネット上で出来るので、取得時のように会場に足を運ぶ必要はありません。講習の内容は基本的に取得時と同じですが、新薬の情報などがアップデートされるので、内容をしっかりと確認するようにしましょう。

4.「日本アンチ・ドーピング機構(JADA)」の役割

日本でも、アンチ・ドーピングに対する公的な組織として、「日本アンチ・ドーピング機構(JADA)」が2001年に設立されました。JADAでは主に次の2本柱で活動を行っています。

・スポーツにおいて報告されるドーピングをゼロにする
・ドーピング行為が起こらないよう予防的な活動を行う

必ずしもJADAのアンチ・ドーピングの目的は、不当にドーピングを行う選手を一掃排除することではありません。ドーピングのリスクや正しい予防知識の普及活動を行うことで、選手をドーピングから守り、スポーツ競技に際する「フェアネス」を維持するのが目的です。

また、スポーツ界で問題となっているのが、本人が意図せずドーピング使用と判定されてしまう「うっかりドーピング」。体調不良で購入した風邪薬や漢方薬などに含まれている成分で、ドーピング検査の陽性反応と判定される事例が多数報告されているのです。これは、興奮薬としてその使用が禁止されている「メチルエフェドリン」を含むか、主成分とする「麻黄」を含む薬を使用した場合などに起こり得ます。

うっかりドーピングは、決して選手だけの責任ではなく、周囲のバックアップ体制や市販薬購入時のフォロー不足にも問題があります。社会全体でスポーツ選手をバックアップし、薬の専門家である薬剤師が主体となってスポーツの価値を守っていく必要があるでしょう。

5.薬剤師に求められる対応

アンチ・ドーピングを推進するにあたり、地域の薬局と薬剤師が担う役割は思っている以上に大きなものです。薬剤師として果たすべき意識を高め、適切な対応ができるようアンチ・ドーピング活動に取り組む必要があります。

2019年に発刊された「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2019年版」は、薬剤師が店頭で選手から問い合わせを受けた場合の対応手順についてまとめています。

<問い合わせがあった場合の流れ>

使用可能薬リスト一覧を確認
※「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」に記載。

一覧に掲載が「ある」・「ない」のいずれかを確認
・「ある」場合は、該当ページを確認して使用の可を回答する
・「ない」場合は、WADAの禁止薬物に該当するか「禁止表国際基準」より確認

不明な場合は、グローバルDROを検索するなどして確認
※それでも不明な場合は、薬剤師会、都道府県薬剤師会、日本薬剤師会などにもエスカレートさせて確認する手順が定められています。

地域の薬局などに勤める薬剤師も、スポーツ選手が処方箋を持参した場合などを想定し、「アンチ・ドーピング」に対する意識を強くもっておくことが重要です。薬剤師は、上記の手順についても熟知しておきましょう。

6.まとめ

スポーツへの関心が高まるなか、薬剤師によるアンチ・ドーピング活動に期待が寄せられています。直接的に関わる機会はあまりないかもしれませんが、一人ひとりの薬剤師がアンチ・ドーピングの意識を持って日々の業務に取り組むことで、防げる問題もあるはずです。

薬剤師が活躍するのは薬局や病院だけにとどまらず、地域全体へと広がりを見せています。

その一つが、世界的規模の国際スポーツ大会であり、『スポーツファーマシスト』を取得することで、アスリートをサポートできるチャンスを掴めるかもしれません。

また、アンチ・ドーピング活動により、地域の皆さまの健康増進を促すことも社会貢献です。この機会にぜひアンチ・ドーピングについて考えてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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