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【薬剤師】薬剤師過剰について

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

薬剤師は、調剤薬局やドラッグストア、病院など薬に関わる現場で活躍する専門職です。患者や客がお薬に困らない環境は、薬の専門家である薬剤師の活躍があって作られるといっても過言ではないでしょう。

ところが、「薬剤師は余る」と、薬剤師なら一度は聞いたことがあるかもしれません。今回は、「薬剤師は余る」と言われる原因や期待されている業務についてまとめたいと思います。より多くの方に求められる薬剤師になるためのヒントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


1.「薬剤師は余る」と言われる理由

(1)DX化やICTなどデジタル技術の活用が進んでいる

デジタル技術の活用は医療分野を含めた社会全体で進みつつありますが、薬剤師業界ではたとえば処方箋の電子化やオンライン服薬指導、調剤ロボットなどが浸透しつつあります。さらに最近では医療分野のDX化も進められており、2022年3月には厚生労働省より「第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 薬局薬剤師DXの推進について」が公開され、データヘルス改革によるICT活用の概要と薬局薬剤師に期待されている役割、目指す将来像などが示されました。

こうしたデジタル技術の進歩により、今まで薬剤師が担ってきた業務は、より正確かつ効率的に行えるようになりました。本来あってはならない調剤過誤や個人情報漏洩などのミスも、デジタル技術の積極的な活用で改善が期待できるでしょう。「薬剤師はいらない」という誤った認識は、こうした背景が生み出したと言えそうです。

(2)他職種や患者さまから業務内容がわかりにくい

「薬剤師はいらない」といわれてしまう理由の一つに、他職種や患者さまから見て薬剤師の業務内容がわかりにくく、薬剤師の存在意義が理解されていないことがあります。

薬剤師は処方箋を預かったら、薬歴管理、調剤、監査、内容に不明点や確認事項があれば医師への疑義照会を行うこともあります。ところが、調剤室の外からでは薬剤師が何をしているのかがわかりにくく、薬に関する知識を提供する場も少なかったことから「医師が処方した薬の用意をするだけでは?」と思われてしまうケースも少なくありませんでした。

(3)対物業務が占める割合が多かった

そもそもこれまでの薬剤師業務では、医薬分業の推進から調剤や監査などの対物業務を中心に行うことが求められてきました。しかし、対物業務は単調に感じやすい傾向があり、そうした薬剤師の仕事に意義を見出せなくなってしまう方も少なくありません。

また、2019年には厚生労働省から「調剤業務のあり方について」(0402通知)が出され、非薬剤師でもピッキングや患者さまへの薬の郵送といった調剤に直接関わらない業務を行えるようになりました。こうした経緯も後押しし、「薬剤師の担っていた役割が脅かされている」「薬剤師はいらないのでは」と薬剤師の将来に不安を抱える方が後を立たないのです。

2.「薬剤師は余る」と言われる実情

(1)薬剤師は飽和状態に向かっている

厚生労働省は2021年、「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」を開き、将来的には薬剤師の数が過剰となることが指摘されています。また、同時に薬剤師業務の充実と資質向上に向けた取り組みが行われなければ需要が減少することも予想されており、薬剤師の業務内容の見直しが重要な課題です。

また、2021年のOECD(経済協力開発機構)の報告によると、日本の薬局や病院で調剤に従事する薬剤師数は人口1000人当たり1.9人(OECD平均の2.25倍)と圧倒的に多く、また増加傾向にあります。

実際、薬剤師の有効求人倍率は減少傾向にあります。また、薬剤師一人当たりの処方箋枚数は減少傾向にあります。

それでも、これまで薬学部の定員を減らすなどといった施策は取られませんでした。その大きな理由として、地域偏在により、都市部では薬剤師が充足しているものの、地方では薬剤師不足に陥っていることが挙げられます。

(2)ICTやAI技術の発達による薬剤師業務の減少

薬剤師の将来性が懸念される理由に、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)技術の急速な発達があります。薬局におけるロボットの活用が進み、調剤過誤や患者さまの待ち時間の短縮につながるメリットがある一方で、薬剤師業務の減少が懸念されているのです。

さらに近年ではモバイル端末(スマートフォンやタブレットなど)やクラウド技術の普及により、オンライン服薬指導やオンライン資格確認が導入されるなど、薬局のDX化(デジタルトランスフォーメーション)も急速に進められています。こうした背景も後押しし、「将来、薬剤師の仕事がなくなるのでは...」と危機感を感じている方は少なくありません。

3.これから求められる薬剤師像

薬剤師にとって厳しい状況が続く中で、そんな逆境に負けずに、生き残る薬剤師になるためにはどうすればよいのでしょうか?

これからの薬剤師・薬局のあり方と求められる役割は、平成27年に厚生労働省から出された『患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~』のなかで示されています。

1.立地から機能へ
いわゆる門前薬局など立地に依存し、便利さだけで患者に選択される存在から脱却し、薬剤師としての専門性や、24時間対応・在宅対応等の様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらえるようにする。

2.対物業務から対人業務へ
患者に選択してもらえる薬剤師・薬局となるため、専門性やコミュニケーション能力の向上を通じ、薬剤の調製などの対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフトを図る。

3.バラバラから一つへ
患者・住民がかかりつけ薬剤師・薬局を選択することにより、服薬情報が一つにまとまり、飲み合わせの確認や残薬管理など安心できる薬物療法を受けることができる。薬剤師・薬局が調剤業務のみを行い、地域で孤立する存在ではなく、かかりつけ医を始めとした多職種・他機関と連携して地域包括ケアの一翼を担う存在となる。

つまりこれからの薬剤師には、薬と健康に対する幅広い知識や豊富な経験を活かし、AIによる自動化やIT化では実現できない対人業務における活躍が期待されています。そのために薬剤師は専門性やコミュニケーション能力を磨き、かかりつけ薬剤師として患者さまや地域住民の健康サポートに貢献することが求められているのです。

薬剤師の担う役割は大きな転換期を迎えており、徐々に起こる変化に不安を感じている声もあります。しかし、それは「薬剤師は余る」のではなく、薬剤師のもつ薬の深い知識をさらに生かすための変化であることを覚えておきましょう。

ポイントは以下のスキルを獲得することだと思います。

(1)コミュニケーション能力を磨く

対物業務から対人業務へとシフトチェンジが進むなか、コミュニケーション能力が今まで以上に必要とされることは間違いありません。コミュニケーションを円滑にするためには、相手の性格や理解度に応じた言葉選び、傾聴の姿勢、相手の考えに共感を示すことも大切です。また、目線や相槌などの仕草、会話以外の配慮も重要な要素でしょう。

相手と信頼関係を築くうえで、日々のコミュニケーションは欠かせません。患者さまやご家族はもちろん、医師や看護師などの医療従事者、他職種・他機関のスタッフと信頼関係を築くことが、結果的に質の高い医療の提供につながるでしょう。

(2)資格を取得しスキルアップを目指す

患者さまによって必要とされる知識は異なるため、ニーズにあわせて自身の知識もアップデートしていかなければなりません。また、高度な薬物治療を要する患者さまを担当する場合には、自らもより専門性を高めていく必要があります。「認定薬剤師」や「専門薬剤師」を取得することで、スキルアップを目指すのもおすすめです。

認定・専門資格は、その領域に関する一定の知識を持つ薬剤師であることの証明になります。薬物治療以外でも興味のある分野があれば自主的に学んでも良いでしょう。こうした取り組みが、自分だけのキャリアや強みをもつ一歩になるはずです。

(3)在宅医療

少子高齢化が顕著な日本において、在宅医療のニーズは今後も増え続けることが予想されています。薬剤師には、患者宅への医薬品・衛生材料の供給だけでなく、薬歴管理や服薬指導、副作用等のモニタリング、在宅担当医への処方支援、残薬管理などの役割を担う必要があります。

(4)かかりつけ薬剤師として患者をサポートする

2015年10月に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」によって、対物業務(薬中心の業務)から対人業務(患者中心の業務)への転換が求められるようになりました。その中でも重要な役割に位置付けられているのが、かかりつけ業務です。かかりつけ薬剤師には、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間対応・在宅対応および医療機関等との連携などの役割が求められています。

それ以外にもかかりつけ医や医療機関には、患者から得た情報を必要に応じてフィードバックしたり、処方提案を実施したりすることが求められます。とくに服薬状況や副作用の有無、飲み残しがある場合には残薬管理と処方の変更提案も含めて行い、患者の健康をサポートしていきましょう。

(5)セルフメディケーションの推進

急速な高齢化や生活習慣病の増加などを背景に、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てをする「セルフメディケーション」が注目されています。調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師には、身近な薬の専門家としてとしての役割が期待されています。

4.まとめ

薬剤師の業務は対物業務が重視されてきた経緯から、薬剤師以外の方から見て具体的な業務内容がわかりにくく、「薬剤師は余る」と考えられてしまうことがありました。しかし、近年は対人業務へのシフトチェンジが進んでいるため、世間が抱く薬剤師のイメージは少しずつ変化していくでしょう。

しかし、対物業務と対人業務そのどちらにおいても、薬剤師がもつ薬への深い知識があってこそ成り立つということを忘れてはいけません。薬剤師として研鑽していく姿勢を忘れず、今後は薬剤師のもつ専門知識を対人業務で発揮し、各方面から必要とされる薬剤師になりましょう。

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