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【薬剤師】セルフメディケーションについて

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

現代の社会では、急速な高齢化や生活習慣病の増加などを背景に、自身の健康に強い関心を持つ国民が増えています。中でも、調剤薬局やドラッグストアの薬剤師などのアドバイスを受け、一般用医薬品を用いて予防や治療を行う「セルフメディケーション」が注目されるようになりました。

今回は、セルフメディケーションについてまとめたいと思います。


1.セルフメディケーションとは?

セルフメディケーションとは、直訳すると「自己治療」や「自主服薬」を表しています。

これまでは病気になれば病院を受診して、医師の指導のもとで治療を行うことが主体でしたが、軽度の症状の緩和や予防においては一般用医薬品を使用して治療を行うことが求められるようになりました。受診の手間や費用を省くだけでなく、国民医療保険費の抑制や日常的な健康管理にもつながることが期待されているようです。

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」(WHOの定義)です。セルフメディケーションを推進していくことは、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを促進することはもちろん、医療費の適正化にもつながります。

国内でも、一般用医薬品承認審査合理化等検討会において検討が重ねられ、2002年に中間報告がまとめられています。また、2017年には「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が新設され、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、条件を満たせば購入費用の所得控除を受けられるようになりました。

患者さま自身が健康と向き合う時代が来つつあります。

セルフメディケーションによって、次のようなメリットやデメリットがあります。

<メリット>

  • 日常的な健康管理に繋がる

  • 医療や薬の知識を身につけることができる

  • 医療機関で受診するための時間と費用を省くことができる

  • 国民医療費を抑制できる

  • 医療機関、医療従事者における過負荷(医師の過労、「3分診療」など)を軽減できる

  • セルフメディケーション税制により所得控除が可能になる

<デメリット>

  • 慢性的に服用すると深刻な副作用を起こす可能性がある

  • 医療機関で受診することを避けることにより、重大な疾患などの発覚が遅れる可能性がある

  • 間違った自己診断により、適切に治療を受けることができない可能性がある

  • 医師に適切な医学的助言を求める機会が減る

  • 誤って過少または過剰に投与することで、期待される効果を得ることができない

  • 濫用のおそれのある医薬品を過剰摂取することにより、薬物乱用、薬物依存の可能性がある

  • 医師、薬剤師を介さないことで、他の薬、サプリメントや食品との相互作用が起こる可能性がある

  • 自分の健康状態には自分で責任を持つという自覚が必要不可欠である

  • あくまで生活習慣や食習慣が健康維持の基本であるので、医薬品に頼り切るような発想から抜け出す必要がある

  • 医療や薬の知識が必要となるので、それなりに学習する努力が必要である

  • 保険が効かないため、自己負担が増える

  • 効果の証明されていない健康食品を販売する業者や、一部に悪徳な事業者もある

2.セルフメディケーション税制とは?

「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」とは、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用医薬品から転用された医薬品)などを購入した際に、条件を満たせば購入費用の所得控除を受けることが出来る制度です。つまり、年間の年間のOTC医薬品購入代金の一部が、総所得金額などから控除されるというものとなっています。

この項目では、「セルフメディケーション税制」について詳しく説明していきましょう。

(1)対象者となるのは?

セルフメディケーション税制の対象となるには、健康の維持増進および疾病の予防に向けて一定の取り組みを行っている方が、本人または生計を一にする配偶者など親族用に控除対象のOTC医薬品を12,000円以上購入することが条件です。その上で、定められた手続きを行うことで、一定の金額の所得控除(医療費控除の特例)を受けることができます。

一定の取り組みとは、以下の健診・検診や予防接種です。

  • 健康保険組合や市町村国保が実施する健康診査【人間ドック、健診・検診等】

  • 市町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者対象の健診等】

  • 定期接種やインフルエンザの予防接種

  • 勤務先で実施する定期健康診断

  • メタボ検診、特定保健指導

  • 市町村実施のがん検診

(2)対象のOTC医薬品は?

以下のいずれかに該当する製品が対象となります。

  1. 医療用医薬品からOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC)

  2. 上記1.以外の外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン薬又はその他のアレルギー用薬としての効能又は効果を有すると認められるOTC医薬品から上記1.を除いたもの

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、2019年5月20日時点で1500種類を超えています。対象医薬品は、購入時のレシートや領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示される仕組みです。一部の対象医薬品は、パッケージに下記の識別マークが付いています。

(3)適用を受けるための申請方法は?

セルフメディケーション税制の適用を受けるには、確定申告を行う必要があります。確定申告の際に、確定申告書と合わせて以下の書類を添付または提示してください。購入した医薬品のレシートは不要とされていますが、提出が求められる場合もあります。念のため、確定申告期限の翌日から起算して5年は保存しておくのが望ましいでしょう。

①セルフメディケーション税制の明細書
…薬局など支払先の名称、購入した医薬品の名称、購入代金などを記入します。

②適用を受けようとする年分に一定の取り組みを行ったことを明らかにする書類
…予防接種などの領収書、がん検診の結果通知表、定期健康診断の結果通知書 など

3.セルフメディケーション時代における薬剤師の役割とは?

セルフメディケーションを勧めていくにあたり、薬の専門家である薬剤師には様々な役割が求められています。具体的にはどのように取り組むべきでしょうか。

(1)正しい情報や知識を得られる「相談できる環境づくり」

健康を維持・増進するためには、患者さま自身が正しい知識を身に着ける必要があります。中でも大切なのは、普段暮らしている地域で相談できる薬剤師を見つけることです。

これまでの薬剤師の仕事はと言うと、患者さまが病院にかかった時に薬の説明をすることが中心でした。しかし今後の薬剤師は、日々の予防や簡単な疾病の治療からOTC医薬品や健康食品・介護・食事・栄養に関することまで、健康にかかわる全般的なサポートをしていかなくてはなりません。

「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」を通じて、気軽に相談できる環境づくりすることが求められています。

(2)OTC医薬品を安心安全に使用できる適切な情報提供

OTC医薬品(一般用医薬品)は、薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる医薬品です。医療用医薬品として実績のある薬や、比較的効果がマイルドな薬に限り販売が認められていますが、患者さまだけで判断することは決して簡単ではありません。

と言うのも、体質や症状に適した医薬品であることはもちろん、他に服用している処方薬や健康食品との飲み合わせなどにも気を付ける必要が。薬剤師は、国家資格を持った薬の専門家として、要指導医薬品や第一類医薬品を含めたすべてのOTC医薬品を販売する際に、薬を安心安全に使用できるように適切な情報提供を行うことが求められています。

(3)セルフメディケーションの実現に向けたサポート

セルフメディケーションが健康維持の重要な手段として有効活用されるためには、薬剤師がセルフメディケーションの主体者である国民から求められ、積極的に関わっていくことが求められています。

これまでの薬剤師業務は、薬効、用法・用量、副作用などの服薬指導が中心でしたが、セルフメディケーションの実現には疾患の幅広い知識や食事・生活の指導の能力が求められます。患者さまとの対話を通じて、疾患や病状を正しく見極め、治療方法の適切な選択を行わなくてはなりません。

ときには、医療機関の受診勧奨を行うこともあります。身近な医薬品の専門家として医療の窓口となることが、これからの薬剤師には求められています。

(4)患者さまを継続的にサポートする「かかりつけ薬剤師」

セルフメディケーションを行う上で、自分の体質や状態、既往歴を把握する「かかりつけ薬剤師」を持つことが重要視されています。

医療用医薬品はもちろんのこと、OTC医薬品や健康食品、サプリメントを使用する場合にも、それぞれに相互作用が起こる可能性も。

薬物治療と並行して行う運動療法においても、専門的知識無しに行えば、よかれと思って行った運動が逆効果になることもあるでしょう。気軽に相談することのできる存在であるかかりつけ薬剤師は、医療における幅広い専門知識を持ち、適切な健康増進や治療をサポートすることが求められます。

4.患者への対応の具体例

セルフメディケーションの時代において、薬剤師の活躍できる分野は広がりつつあります。ここでは、患者さまへの対応の具体例をご紹介します。

(1)風邪・鼻炎・頭痛などを訴える患者さまに、OTC医薬品を提案を

これまでは、風邪・鼻炎・頭痛などの症状が現れたら、医療機関を受診して医師の診察を受けて、処方箋によって調剤薬局で医薬品の交付を受けることが一般的でした。

一方で、セルフメディケーションの時代にあっては、ドラッグストアで医薬品を購入して自分自身で治療を行うことが求められます。薬剤師は具体的な症状を聞き取り、数あるOTC医薬品の中から患者さまに適したものを選び、適切に使用できるように指導しなくてはなりません。マスクなどの衛生用品や、うがい薬の使用を提案することもあるでしょう。

また、重篤な疾患の可能性がある症例については、医療機関の受診勧奨をすることも重要です。患者さまの病状を即座に見抜いて、適切な対応を行いましょう。

(2)生活習慣病の予防や身体の悩みの相談には、適切なアドバイスを

セルフメディケーションが活躍する分野は、簡単な疾患の治療のみにとどまりません。軽度の高コレステロールや高血圧、高血糖が見つかった場合には、健康食品やサプリメントを使用することで、生活習慣病の症状の発現を防ぐことが期待できます。

壮年性の脱毛症や不眠症、軽い尿漏れ、肥満などの身体の悩みの解決にも、セルフメディケーションは力を発揮します。しかし、これらの予防や治療を適切に行うためには、疾患や医薬品の専門的知識が必要です。

このような場面で、身近な医療の専門家である薬剤師は、患者さまの悩みの相談に乗り、適切なアドバイスをすることが求められています。

(3)かかりつけの薬剤師として患者さまのQOLを高めるアドバイスを

「かかりつけ薬剤師」とは、薬による治療や疾患全般、予防、健康維持に関する豊富な知識と経験を持ち、患者さまのニーズに沿った相談に応じられる薬剤師を表しています。

複数の医療機関にかかる患者さまも増えており、相互作用やポリファーマシーが問題となることも。そうした中で、かかりつけ薬剤師は服薬の状態を適切に把握して、治療のサポートを行うことが求められています。

また、処方箋にもとづき調剤するだけでなく、生活習慣病の予防や健康の増進に取り組む患者さまには、健康食品やサプリメントを提案することもあります。患者さまのQOL(生活の質)を高めるために、セルフメディケーションを有効に活用していきましょう。

5.まとめ

近年では、自分自身の健康は自分で守りつつ、身体の軽い不調や健康への不安を感じたときは、すみやかに処置を行うことが求められています。

そのためのセルフケアの手段として、OTC医薬品やサプリメント、健康食品などが用いられますが、これらを専門的な知識を持たずに使用することは、非常に危険です。

薬剤師は身近な医薬品の専門家として、患者さまのセルフメディケーションをサポートしていくことが求められています。疾患や医薬品の知識はもちろんのこと、患者さまと良好な関係を築き、悩みを打ち明けてもらうことも重要です。日々の業務で薬剤師としての知識と経験を磨き、患者さまから信頼される薬剤師を目指していきましょう。

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