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【薬剤師】かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師について

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

日本では超高齢社会を迎え、2025年には団塊の世代が後期高齢者となるなど、さらなる高齢化に歯止めがかかりません。高齢者への適切な医療の提供は、薬剤師にとって切っても切り離せない課題です。地域全体で高齢者を支える地域包括ケアシステムにおいても、薬局や薬剤師に地域密着の役割が求められています。

このような状況を受けて2016年度の保険薬局の調剤報酬改定からはじまったのが、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」制度です。国をあげて、薬局や薬剤師が地域包括ケアシステムの一端を担うことが期待されています。

今回は、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師についてまとめたいと思います。


1.かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師とは?

2015年に厚生労働省は、地域包括ケアシステムにおいて薬局や薬剤師が地域密着で患者さま主体の業務へシフトしていくことなどを目的に、2025年までにすべての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つことを目標とする「患者のための薬局ビジョン」を発表しました。

かかりつけ薬剤師は、薬や健康、介護などに関する豊富な知識や経験をもとに、患者さまの相談に応じ、健康管理をサポートするなどのサービスを提供できる薬剤師のことです。1人の患者さまに対して、1人のかかりつけ薬剤師がお世話をします。

一方、何でも気軽に相談できる唯一の薬局のことをかかりつけ薬局と呼びます。かかりつけ薬局では、かかりつけ薬剤師が知識やスキルを十分に発揮できるようにするために、薬剤師の育成や関係機関との連携などの環境整備が必要です。

かかりつけ薬剤師・薬局は、地域住民による主体的な健康の維持・増進の支援を行う健康サポート機能を有し、服薬情報や受診歴を一元的に管理し患者さまを中心として多職種をつなぐ核となりながら、より患者さまに寄り添うことを目指しています。

2.かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師のメリット、デメリット

<メリット>

  • 成分が重複している薬は処方されていないかを確認できる

  • 患者さんのアレルギーに対する副作用はないかを確認できる

  • 注意を必要とする飲み合わせの薬はないかを確認できる

  • 患者さんの体質を考えて配慮しておくことはないかを確認できる

  • 患者さんが薬を飲んでいて困っていることや不安に感じることはないかを確認できる

<デメリット>

  • かかりつけ薬局を決めたものの引っ越す場合、緊急の場合に不便を感じる

  • かかりつけ薬局で自分が飲んでいる薬を取り扱っていない可能性がある

  • かかりつけの薬局が閉まっている場合や休診日の場合、別の薬局を利用することや急な対応が難しい

  • かかりつけ薬局によってサービスや接客の質が異なることがあるため、不満がある場合、他の薬局に変えることが難しい

3.かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師に求められる役割

対物業務から対人業務へシフトしていくなかで、かかりつけ薬剤師制度の登場により、薬剤師に求められる業務はこれまで以上に患者さま本位となりました。地域の医療機関が一体となり、多職種連携による医療の提供がますます重要になっています。

ここでは、かかりつけ薬剤師や薬局に求められる役割について確認していきましょう。

(1)服薬情報の一元的、継続的把握

薬物治療において、薬の副作用や効果の確認は不可欠です。また異なる診療科で処方された薬の飲み合わせ(薬物相互作用)が、薬の効果の増減や副作用を発症させて問題となることも少なくありません。さらに処方薬だけでなく、市販薬、健康食品、サプリメントなどでも同様に注意しておきましょう。

このようなリスクを防ぐため、かかりつけ薬剤師は主治医と連携したり患者さまからヒアリングしたり、さらにお薬手帳(電子版を含む)の内容把握などを通じて、服用薬を一元的・継続的に把握したうえで薬学的管理および指導が必要です。

そして、副作用リスクや注意事項などがあれば患者さまに指導やアドバイスを行い、場合によっては医師に連絡して処方を変更することもあります。患者さまに複数のお薬手帳が発行されている場合は、手帳の集約化も行います。

(2)24時間対応

かかりつけ薬剤師には、休日や夜間などの開局時間外でも薬の使い方や飲み間違い、副作用など患者さまからの電話相談を受けられるよう準備しておくことが求められます。

薬局単独での実施が難しい場合は、調剤体制について近隣の薬局や地区薬剤師会などとの連携も必要になるでしょう。

(3)在宅医療への対応

病院や介護施設ではなく、住み慣れた地域で気心の知れた家族と過ごしたいと考え、在宅医療を選択する患者さまが増えてきました。また、国としても増加の一途をたどる医療費の削減のための受け皿として、在宅医療を推進しています。

このような背景があるなか、地域包括ケアの一環として患者さまの適切な薬物療法をサポートするため、かかりつけ薬剤師による在宅医療への積極的な参加が求められているのです。

具体的な在宅業務は、在宅医療の患者さまに対する処方箋の調剤や服薬状況の確認、副作用・相互作用のチェック、残薬管理、医療福祉関係者との情報共有、服薬アドヒアランスの向上に貢献するなど多岐にわたります。

かかりつけ薬局では、在宅患者さまの症状悪化時などのニーズに応じて、夜間・休日も調剤を実施し在宅サービスを提供します。地域包括ケアの一環として患者さまが安心して自宅で医療を受けられるよう、24時間体制でのサポートが欠かせません。

(4)近隣の医療機関との連携

24時間対応や在宅医療への対応を実現するためには、近隣の医療機関との連携も不可欠です。

また、普段の業務においても、医師の処方内容をチェックし、必要に応じて疑義照会や処方提案、副作用や服薬状況のフィードバックを行うことも薬剤師の大切な仕事です。なお、2018年の改定では「服用薬剤調整支援料」が新設され、処方医への提案も重要な役割として求められました。

患者さまからの医薬品や健康相談に応じるなかで受診の必要があると判断したり、夜間の相談で救急対応が必要になったりする場合もあります。すばやく患者さまに適切な医療を提供できるよう、普段から地域の医療機関と協力体制を構築しておきましょう。

4.かかりつけ薬剤師になったら何をすれば良い?

前提として、かかりつけ薬剤師になるには複数回来局している患者さまの同意が必要です。服薬指導でかかりつけ薬剤師の業務内容、意義・役割、費用、必要性などをお伝えし同意いただけた場合や、患者さまから要望があった場合などに「同意書」を取り交わします。

1人の患者さまに対して、1人の薬剤師のみが「かかりつけ薬剤師指導料」を算定できます。そのため、かかりつけ薬剤師の情報をお薬手帳に記載して、ほかの医療機関を受診した際にはかかりつけ薬剤師がいる旨を患者さま本人から申告してもらうよう伝えておきましょう。

実際にかかりつけ薬剤師となったら、おもに以下のような業務を行います。

(1)患者さまの服薬管理

患者さまが服用している処方薬(ほかの薬局で調剤された薬も含む)や要指導医薬品および一般用医薬品、さらには健康食品やサプリメントなどについて一元的に管理、継続して把握し、その内容を薬剤服用歴(薬歴)に記載します。

そのうえで、多剤服用(ポリファーマシー)による有害事象が起きていないか、飲み合わせが悪い薬はないかなどを確認しましょう。必要に応じて血液検査の結果の薬学的な確認も行います。また、患者さまの理解の程度に応じた服薬指導も行いつつ、服薬指導の内容などをお薬手帳に記載することもあります。

調剤した後も、定期的に服薬状況を把握し、お薬に関する情報提供や指導などを実施し、それらの内容を薬歴に記録しましょう。必要に応じて医師へ情報提供したり、処方変更を提案したりすることも重要な業務です。

残薬がある程度認められる場合は、患者さまの意向に沿って、残薬状況や残薬が生じている理由などをお薬手帳に記載し、医療機関に情報を提供することもあります。そのほか、患者さまにバッグなどを渡して、薬局への服用薬の持参を促したり(ブラウンバッグ運動)、患者さまの家に行って、服用薬の整理を行ったりする場合もあります。

(2)患者さまからの相談対応

患者さまからの相談には24時間応じることのできる体制をつくる必要があります。

薬局の開局時間外の連絡先を伝え、また患者さまがかかりつけ薬剤師のいる時間を把握できるよう、勤務表を作成し患者さまにお渡しするなどの工夫が大切です。かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が相談に対応する場合はあらかじめ患者さまに説明し、代わりの薬剤師の連絡先を伝えておきましょう。

患者さまからの相談は、薬に関わる内容だけとは限りません。日常生活の健康や介護などについても、患者さまからお話しがあれば相談に応じる必要があります。また、在宅医療を受ける患者さまの自宅に訪問することもあるでしょう。

5.かかりつけ薬剤師になるための要件

かかりつけ薬剤師になるためには、所定の要件を満たさなければなりません。具体的には、以下すべてをクリアしておく必要があります。

  • 薬局への勤務経験が3年以上ある

  • 同一の薬局で週32時間以上勤務している

  • 同一の薬局に継続して1年以上在籍している

  • 研修認定薬剤師(認定薬剤師)を取得している

  • 医療にかかわる地域活動に参加している

要件のとおり、ある程度の薬剤師経験が必須であることがわかります。この要件を満たした薬剤師がいない薬局は、かかりつけ薬剤師料を算定することができません。

とくに認定薬剤師については、「自己研鑽により資質向上の努力を継続している薬剤師」として調剤薬局企業からの評価につながるでしょう。

単位取得には様々な方法があります。かかりつけ薬剤師の要件にかかわらず、継続的な自己研鑽として認定薬剤師を目指すことをおすすめします。

6.まとめ

今回はかかりつけ薬剤師・薬局について詳しく解説しました。かかりつけ薬剤師として患者さまの役に立つためには、ある程度の経験と認定薬剤師などのスキルが必須です。

患者さまの一元的・継続的な服薬管理や24時間の相談対応、在宅医療への参加、ほかの医療機関の連携などはハードな面が多いのも事実ですが、自身のスキルアップや経験値の上昇につながります。

今後、かかりつけ薬剤師を任せられる薬剤師の存在はますます重要視されていくでしょう。自身のスキルアップやキャリアアップのためにも、継続的な自己研鑽により、患者さまはもちろん薬剤師市場からも求められる薬剤師となれるよう意識していきましょう。

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