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【薬剤師】薬局のM&Aについて

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

平成以降、医薬分業を背景に成長を続けてきた調剤薬局業界は、近年、その在り方に変化が見られはじめています。

調剤薬局数の大幅な増加を受けて市場は成熟化の兆しを見せており、異業種からの新規参入といった新しい変化も生まれました。さらに、国は政策方針の変更を打ち出しており、調剤薬局の業界ではM&Aが活発となる傾向にあります。

今回は、薬局のM&Aについてまとめたいと思います。


1.薬局のM&Aの現状

薬局は、医師の処方箋をもとに薬剤師が調剤を行い、適正な用法とともに患者へ薬を提供します。

もともと日本では、医師が診療とともに薬の調剤まで行うのが一般的でした。しかし、欧米の医薬分業の考え方が浸透したことを受け、国内でも医薬分業が進んでいます。薬局は勢力を拡大し、その数はコンビニエンスストアをも上回ります。しかしながら、その一方で、急速に進行する少子高齢化により、医療、介護などの社会保障制度の見直し、国民医療費の抑制、薬価や調剤報酬の改正など、薬局経営は難しい局面を迎えています。

調剤薬局業界の拡大に伴い調剤薬局のM&Aも積極的に実施されており、その件数は増加傾向です。なお、調剤薬局の設置には行政への許認可も関わってくることから、調剤薬局のM&Aでは株式譲渡による経営権の移行が一般的となっています。また、事業譲渡の手法もよく採用される手法です。

2.薬局のM&Aの動向

調剤薬局業界の大きな特徴には、個人薬局が多い点があります。大手調剤チェーンや大手ドラッグストアの市場における占有率は、他業種と比較すると低い状態です。今後は大手調剤チェーンが事業拡大を図り、個人薬局や小規模店舗に対するM&Aが進む見通しです。

また、調剤薬局数の増加により飽和状態に近づきつつある点も、M&Aの増加を後押ししています。現在も新規出店は行われていますが、その伸び率は年々鈍化している状況です。新規出店数の伸び率減少と歩みを合わせるように、大手チェーンや中規模企業によるM&A件数は増加しています。

その他、異業種による調剤薬局業界への参入の動きも見逃せません。近年、コンビニエンスストアや家電量販店、鉄道会社の駅ターミナル内など、より消費者の生活に近い場所への調剤薬局出店が増えてきました。このような異業種の新規参入により、業界再編への動きはさらに加速すると予想されています。

3.薬局業界でM&Aが加速する理由

(1)薬価改定や調剤報酬改定への対応

国の医療費削減の方針により、薬価や調剤報酬はマイナス改定の傾向にあります。特に調剤報酬の改定を受け、多数の店舗を持つ大手調剤チェーンや病院に隣接された門前薬局では相対的に低い調剤報酬が適用されるため、収益減が予想される状況です。

上記のような状況を受け、大手調剤チェーンはM&Aにより事業拡大することで、スケールメリットによる収益性の確保を狙っています。また、経営資源に乏しい小規模な調剤薬局では、大手調剤チェーンに吸収されることで事業の存続を図っています。

(2)かかりつけ薬局への移行

厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」のもと、住まいの身近なところにある「かかりつけ薬局」へ移行する方針を打ち出しました。今後、かかりつけ薬剤師が一定要件で行った業務には、「かかりつけ薬剤師指導料」という名称の薬学管理料が加算されます。

ただし、かかりつけ薬局となるには在宅患者への対応や24時間での対応などが求められ、対応のための薬剤師の確保や人件費・設備費への投資が欠かせません。このような「かかりつけ薬局」への移行に対応するために、人材獲得や経営資源の集約化を目的としたM&Aが加速すると想定されています。

(3)後継者不在の問題

近年、多くの中小規模の企業・会社が抱えている共通課題に、経営者の高齢化と後継者不在の問題があります。調剤薬局業界もまた同様の課題を抱えており、高齢となった薬剤師が経営する調剤薬局の事業承継をどのようにするかは大きな問題です。

事業承継には親族内承継と親族外承継、第三者承継の3つの手法があり、従来は経営者の親族が承継する親族内承継や、社内の役員や従業員が承継する親族外承継が一般的でした。近年では後継者不在の問題から、第三者承継であるM&Aの手法を採用する調剤薬局が増加しています。

4.薬局のM&Aのメリット、デメリット

<買い手(譲受側)のメリット>

  • 仕入れ額を抑えられる

  • 従業員の確保

  • 取引関係の確保

  • 短期間での開業が可能

  • 顧客(患者)の引継ぎ

  • スケールメリットの享受

  • 許認可の手続きの省略(株式譲受の場合)

<売り手(譲渡側)のメリット>

  • 後継者不在の解消

  • 事業の安定的な継続

  • 創業者利益を得られる

  • グループ薬局の力を借りられる

  • 事業拡大の機会獲得

  • 会社清算と比べ高額譲渡の可能性

<買い手(譲受側)のデメリット>

  • 経営者の変化による従業員(譲渡先)の反発や離職

  • 経営者の変化による顧客(患者)の減少

  • 経営統合の失敗のリスク

  • 簿外債務や偶発債務発生の可能性

<売り手(譲渡側)のデメリット>

  • 従業員の待遇悪化や人員整理

  • 経営における裁量の制限

  • 競業避止義務による新規開業の制限

  • 処方元医療機関との関係悪化

5.まとめ

調剤薬局は薬の販売による利益と調剤報酬が主な収益である特性上、処方箋を発行する医療機関といかに緊密な関係を保持するかが安定的な経営をするために重要な課題でした。

しかし、厚生労働省の方針の転換を受け、調剤薬局に求められる役割に変化が見られています。また、調剤薬局数が大幅に増加し、市場が成熟しつつあることから、多くのM&Aが実施されています。

このような環境の中にある調剤薬局業界では、M&Aは今後の経営戦略を考える上で重要な選択肢の1つです。

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