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独断的エンターテック近未来予見〜アフターコロナの課題

 2012年から毎年元旦に【独断的音楽ビジネス予測】を書いてきました。マクロ的視点で、世界の音楽界のトレンドから「今年起きること」を予測してきたのですが、その間、日本の音楽業界はデジタル化を先送りして手を打たないまま、長期低落を続けています。
 気が付けば、「世界で一番デジタル化が遅れた国」になっています。

 そして、コロナ禍で最もダメージを受けたのが音楽業界です。デジタル化が遅れていることもダメージが大きい要因のなのですが、危機的な状況に陥った機会を、DXの好機に変えたいですね。
 2022年の音楽業界の年間予測を行うことに意義を感じないので、エンターテインメント✕テクノロジーという観点で、数年タームで日本人が行う「べき」ことについてまとめていきたいと思います。テーマは変わっても「独断的」であることは相変わらずなのでご了解ください

デジタルファーストの徹底

 もう言うまでもないことで、わかっている人にはあたり前のことですが、エンタメビジネスは全てにおいて、デジタルを最優先するべき状況です。というか「デジタル以外って何があるんだっけ?」見落としても大きな問題はありません。
 ところが、高度成長期〜バブル期の成功体験を忘れられない高齢者が決定権を持つことが多い、日本のメディアコンテンツ業界は「デジタル以外」のことを優先した意思決定がしばしば行われてしまいます。何らかの方針が自分が所属する会社や団体が出た時に、それが「デジタルファースト」から外れていた場合は、疑念を持ち、異議申し立てをしておきましょう。
 それでも変わらない集団とは関わらない方が自分の成長にはプラスです。

グローバル前提の考え方

 これも何度も語ってきたことですが、デジタルとグローバルはコインの裏表です。グローバル市場に展開するためにはデジタルファーストは必須だし、デジタルをやると自然にある程度はグローバルにアクセスできるようになります。端的に言うと、「YouTubeにアップしたら、世界中の人が観られる」時代に僕たちはもう随分長い間、暮らしているということです。
 日本は日本語話者人口を対象に、東京発のマスメディアで発信することで豊穣な市場にアクセスでき、大きな収益を上げることができました。その成功体験が染み付いている僕たちは、「まず日本で」と考えがちです。ところがグローバル市場時代にその考え方は、効率が悪いだけではなく、マイナスです。
 今やデジタルサービスは、Tiktokに代表されるように、SpotifyもNetflixもアルゴリズムでリコメンドされる時代ですが、統計的に「日本人が最初にたくさん消費したコンテンツはグローバルヒットしない」というデータがどんどん蓄積されています。日本でヒットしたがゆえに、それ以外の国ではオススメされにくいというアルゴリズムがおそらく僕たちを取り囲んでいます。これを変えるためには、ニッチな層からでよいので、グローバルに広める事例が必要なのです。
 「まず日本である程度、成功して、次は世界へ」という発想はアルゴリズムの壁が立ちはだかると知っておきましょう。

日本人の優位性を意識する

 韓流/K-POPの成功事例を見て、アメリカユースカルチャーにアクセプトする方法が世界で成功する方法と考えがちです。もちろん国内市場が崩壊した時に世界に活路を見出して結果を出した韓国から学ぶ姿勢は重要です。ましてはK-POPは韓日合作で始まった歴史がありますから、韓国にできて、日本ができなかったのは、やらなかったからとの認識は重要です。


 同時に、世界で戦う時には、「日本人だから得意なことは何か?」という発想も重要です。グローバル市場に本気で挑んだことがない人ほど「日本とか日本人とかくくられたくない」と言うものです。本気で勝とうと考えたら、自分が持っている強みと弱点ついて徹底的に考え、使えるものは何でも使おうとする=「日本人としての強みを活かすには?」と考えるものです。  日本のサッカーのレベルが上ったいく中で、選手達から「自分たちらしいサッカー」という発言が増えていったのが象徴的だなと思います。

 僕が考える日本の強みは「多様性と歴史の蓄積」です。選択と集中でK-Popで活路を見出した韓国に対して、日本はクリエイティブにおける多様性と蓄積された作品から学ぶこと、活かすことが他国にない強みになると考えています。外国人DJから端を発したシティポップブームは、その一例と言えるでしょう。
 同時に、製造業で優位性が無くなり、IT後進国になっている日本にとって、最大の資産は「広義の文化力」になっています。コミック、アニメ、音楽、美容、食、建築物、等々等々多様性と蓄積のある「文化資産」をグローバル市場の中で活かしていくことができるかどうかで日本の未来の不沈が決まると言っても過言では有りません。

コミュニティ/人的ネットワークの重要性

 特に音楽ビジネスにおいて、顕著に起きている構造的な変化は、「個へのパワーシフト」です。デジタル革命が、原盤制作/流通/宣伝といった音楽ビジネスの各工程を安く簡単に個人でもできるようにしました。
 たしかに、レコード会社や事務所はマストで必要ではなくなりましたが、一人で何でもできるわけではなく、戦う時はチームが必要です。どういうチームの組み方が適切なのか、始まったばかりの「個の時代」では、試行錯誤の状態です。


 僕は、セルフマネージメントできる音楽家と、音楽愛を持った音楽マーケターの組合せが、音楽ビジネスの最小ユニットになると予見しています。
 ただし、天才音楽家と天才マーケターによる奇跡を期待するのでは無く、個の時代になったからこそ、自立した個人同士の人的ネットワークと、助け合って、成長していけるコミュニティの重要性が増していくことを確信しています。
 これが僕が、コーライティングを得意とするプロ作曲家コミュニティCo-Writing Farm音楽マーケター研究会に期待する理由です。

web3.0/メタバースへの準備

 デジタル革命はまだゴールは見えていません。web3.0という考え方が提唱される機会が増えました。メタバースへの期待は加熱してるとも言えるでしょう。
 ブロックチェーン技術を基盤としたweb3.0の世界は遠くない将来に必ず来ると僕も思っています。エンターテックエバンジェリストとしてのポジショントークも入るので、多少割り引いて受け取っていただきたいのですが、メタバースの時代は、エンタメの存在意義が著しく上がる時代です。
中村伊知哉さんの『超ヒマ社会をつくる』  という著作にもあるように、AIとロボットとドローンが活用されると、人間がやらなければいけないことは減って、伊知哉さん曰く「超ヒマ」になります。遊ぶことが人間の大きな役割になるし、可処分時間におけるエンターテインメントの比率は上がっていくことになるのでしょう。
 メタバースでは、どのプラットフォームが勝ち組になるのかという点に注目が集まっているようですが、僕は「メタバースだからこそ楽しめるユーザー体験をどう提供するか」が肝になると思っています。エンターテック分野の新規事業を起業家とともに創出するスタートアップスタジオ  StudioENTRE代表としては、web3.0時代のエンタメ体験についてフォーカスした動きをしていくつもりです。
 昨年ローンチしたNFT音楽マーケットプレース.mura(どっとみゅーら)は、アーティストファーストのフィロソフィーのもと、メタバース時代のユーザー体験のUPDATEに先駆的に取り組んでいきたいと考えています。

「アフターコロナ」を日本再生の好機に 

 このままでは日本は本当に壊滅的に駄目になると強い危機感を持っています。同時に、障害物をどけさえすれば、デジタルネイティブ世代の日本人が、世界に冠たる作品やサービスを産み出してくれると、日本の文化力の蓄積と強さを信じています。

 バブル期の日本を知り、地上波テレビの黄金時代やCDバブルを体験した僕たちの世代は、次の世代のために、邪魔なものをどけて、「整地」する責任があると認識しています。過去の成功体験に囚われた発想から出していかなければなりません。保身を優先して、なんとか逃げ切ろうとしている同世代は、日本の国力を下げる「国賊」ですから、しっかり罵倒し、引きづりおろしていくつもりです。
 「アフターコロナ」のここからの数年間は、構造変化の好機です。2022年年頭に、デジタルとグローバルへの構造変換に取り組むことを改めて宣言します。一人一人は、自分の持ち場で自分のできること、やりたいことをやっていくしかありませんが、デジタルとグローバルを最優先で考えて取り組む人は僕にとって同志です。連携していきましょう!

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