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残り物に福はあるか ~OTJ 青黒ジャッカル調整録~

あらすじ

この物語は、サンダー・ジャンクションの無法者(OTJ)環境における隠されたドラフトアーキタイプを開発しようとしたJD達の、期待と現実を綴った物語である。


きっかけ

筆者はゆる速というdiscordサーバに日頃お世話になっている。

そしてこのゆる速内では時折「ゆる速バトルシティ」という名の卓ドラが開かれる。
MOATランキングと提携する形で管理人のばぐさんの管轄下で定期的に行われるものもあれば、野良で勝手に開かれるもの(通称、闇ゆバシ)も存在する。
事の発端は、そんな闇ゆバシにおける一幕である。

OTJ環境の全員の理解が十分に深まった頃、5/3, 4, 17と三度この闇ゆバシは開催された。
MTGアリーナに常設されているプレミアドラフトやクイックドラフトにおいては、緑白乗騎を筆頭とした緑系ミッドレンジが明確にTier1であるのがOTJ
環境に関する集合知である。
しかしながら、有識者の集まる卓ドラにおいては、なんと3回連続で青黒が優勝(3-0)という傾向が見られていた。

もちろん卓の混みやすさ次第ではあるが、有識者の集まる卓ドラでは緑が必然的に混みやすくなり、その結果中途半端になった緑系アグロやミッドレンジを比較的空いていて完成度の高い青黒コントロールが往なす、という構図は理解しやすい。
実際にプレミアドラフトにおいても上位層はグリクシスコントロールを上手く使いこなしている印象はあった。
そのため、5/3, 4に青黒コントロールが優勝した際は特にメンバーに驚きは生まれなかった。

しかしながら、5/17の闇ゆバシにおいて優勝した青黒は、大変驚きをもって迎えられた…

そう、青黒アグロである。
作成者はかの有名なおだんご氏だが、このアーキタイプの開発者というより、直近対戦して楽しそうだったデッキを再現してみた、とのこと。

このデッキの特徴は、特に2マナ域の生物に表れている。

プレミアドラフトであれば一周どころか最後まで流れていても何も驚かない、《泉の飛沫散らし》(通称、カエル)と、《けばけばしい伊達者》(通称、けばけば)。
青黒コントロールやその他の青系デッキですら今まで使用を躊躇われたカード達である。
それもそのはず、カエルのGIH WRは49.7%(青コモン全体14/15位)、けばけばのGIH WRは50.3%(青コモン全体12/15位)と、指標が「使うと負ける」と明言しているレベルのカードなのだから。

にも関わらず、この激安・激弱な2枚をふんだんに使用した青黒アグロが、OTJ環境末期のドラフト強者も集まる中での卓ドラで好成績を収めたのである。
環境理解が深まるにつれ、これらのカードは理論上安くなっていくはずであり、再現性の塊とも言えそうなアーキタイプである。

なお、先ほどの卓ドラにおいておだんご会長はカエルを2-1で確保していた

カフカの補足

この日を境に、この激安なカード達を集めて戦う、青黒ジャッカル(通称、青黒廃材)の開発が有志によって進められた…


イカれた調整メンバーを紹介するぜ!

おだんご会長

言わずと知れた最強配信者であり、青黒ジャッカルアーキの発掘者でもある。
闇ゆバシの運営も会長あってこそ。会長なので逆らうと怖い。

顎無

本来ニチャコンスキーなのに廃材ジャッカルに最も魅せられていたJD。
魅せられすぎて封印されし声帯が復活したレベル。
発言はいささかヤバいが声質はいたって普通。

ぶちょう

おだんご杯準優勝2回の雄。アグレッシブサイドボーディングの鬼。
特に第1回おだんご杯決勝はあまりにも有名。
ゆる速ではオフ会幹事も務める。ていかーではないためとても良いパパ。

もれちゃん

ゆる速の良心。
多くのメンバーが完走リストばかりを上げる中、負けリストもしっかりと共有できる賢者。
今回も大多数がカエルに魅せられる中でけば型の開発に集中し、(自然発生した)調整チームメンバーとしての有能さが表れていた。

いずみん

無限プレミ担当。
リミテガチ勢の視点から一歩下がった位置から発言するため、仮想敵の分析においては重要。
ていかーおぢ臭もするが、今回の調整においては発言もよくされていた。

星乃衛介

輝くスターであり、輝くスター杯主催でもある、迷惑系非配信者。
練習不足のためインマネできず、アバターは永遠に動かない。
カード評価に悪い意味で定評があるため、司会進行と書記を務めた。

mikka

ゆる速では××担当だが、なぜか今回は撮影(録画)担当。

山辺カフカ

お色気担当。やっぱり華がないとね!


他にもゆる速には愉快な仲間たちがいっぱい!
(単純に調整時にいたメンバーを覚えきれていない)


青黒ジャッカルガイドライン

議論の前に有志メンバーによる青黒ジャッカルの試し打ちが始まる。
顎無氏による提案の下、主に氏の狩場であるマッチドラフトイベントにて、青黒ジャッカルを決め打ちに近い形で各人が取り組み始める。
これにより積み上がった青黒ジャッカルの実績は確かに悪くなく、何より再現性の高さは他のアーキタイプの比ではないと感じられた。

そして数々のトライアルを終えた上で、ゆる速サーバ内にて会長からの愛の鞭を受けながら、青黒ジャッカルアーキの完成形について白熱した議論を行った。
この議論により、青黒ジャッカルはカエル軸のカエル型とけばけば軸のけば型で完成形が異なり、個別評価も分けるべき、との総意が生まれる。

その上で完成した、このアーキにおけるカード個別評価のガイドラインがこちら。

カエル型

カエル型:クリーチャー点数表
カエル型:スペル点数表

けば型

けば型:クリーチャー点数表
けば型:スペル点数表

カエル型に比べるとけば型は全体的にトライされた回数が少ない点は不安であったが、直前にゆる速のもれちゃん氏によるけば型完走リストが数多く提示され、こちらもポテンシャルを感じる。

その他、調整メンバーとの会話における統一見解は以下の通り。

・初手から決め打ちするほどの強度を持ったアーキタイプではない。あくまで逃げ道であり序盤は汎用性の高いものを優先したピックが必要。
・特に、青黒コントロールとはスペルでの共通点は多く、「青黒の強スペルから取り始めるもコントロール系の強いカードの流れが悪い」ときに向かうべきアグロという認識を持った。
・アーキを成立させる上で、他の黒系デッキとも競合しやすいコモンクリーチャーの《不吉な前兆の鴉》と《屋上の暗殺者》がちゃんと確保できるかは焦点になる。特に暗殺者は参入のサインにもなりそう。

白黒ジャッカル

また、調整メンバーとの共通見解にまでは至っていないが、黒系アグロカードを取れているが青の流れが悪い場合に備えたサブプランとして白黒ジャッカルも筆者独自に研究していた。
これは、白のアンコモンの中でもGIH WRのあまり奮わないアグロ系カードをかき集められる場合に参入可能な、青黒ジャッカルに似た細アグロである。
参考リストを以下に示す。

キーカードは頭一つ抜けて《サンダーの投げ縄》であり、次いで《オーメンポートの自警団》と《養育するピクシー》。
これらが安いことはプレミアドラフトや卓ドラフトでも比較的よく見られるため、綺麗なアーキを組みやすく実際に勝率も悪くなかった。
速報枠の《侮辱》もこのアーキでは最高に輝く。


アリーナオープン当日

最高のサブプランを擁してゆる速メンバーはアリーナオープン当日を迎える。
各メンバー順調(?)にDay1を通過しDay2へと駒を進める。
果たしてその結果は如何に…











顎無氏: 青黒ジャッカル 0-4

山辺カフカ: 青黒ジャッカル 1-3

おだんご氏: バグのため参加不可 0-0


見ての通り、惨敗である…
青黒ジャッカルは他卓の化け物緑ミッドレンジや仮想敵でない赤白アグロにコテンパンにされ、アリーナオープンは幕を閉じた…
そんなバカな…


青黒ジャッカルは弱かったのか

最後に、今回我々が結果を残せなかった原因を考察したい。

卓ドラフトとDay2第1ドラフトの環境が大きく異なった

そもそも本記事の冒頭で書いた通り、この青黒ジャッカルは「卓ドラフトでこそ輝く」アーキタイプであるのは間違いない。
アリーナオープンのドラフトはDay1を通過できた者しか(おそらく)参加していないため有識者同士の卓ドラフトに似た環境(緑混みすぎ)になることを期待していたが、それでも第1ドラフトのレベルでは緑が想定ほどは混まず、結果的に多くの緑系デッキのパワーは平均値をしっかりと超えていた。
青黒ジャッカルは「平均値を安定して超える」ことが強みのアーキタイプだが、1敗の重みの大きいアリーナオープンDay2において上振れ狙いの緑決め打ち戦略を取るプレイヤーが無視できないほどいるのは容易に想像できた。

ガイドラインの中でも触れたが、青黒ジャッカルが決め打ちするほどのアーキタイプではないことが、アリーナオープンのドラフト形式にマッチしていなかったと言えそうである。

失敗例から学べなかった

これはゆる速メンバーのリミテッド偏差値が高い故の課題であるが、調整期間中に青黒ジャッカルの成功例を多く積めた一方で、あまり失敗例を積めなかった。
特に、主戦場としたマッチドラフトのプレイヤーレベルは玉石混交であり、必ずしも成功例といえないデッキでもゆる速メンバーのプレイングによって完走してしまい、課題に気づきにくかった。
(そもそも1デッキあたり最大3マッチしかできないのも問題点の一つであった)

MTGアリーナにはマッチドラフトイベント以外に通常BO3で調整できる場がないので中々改善案を出しにくいが、例えば完走してもデッキの失敗点を積極的に挙げていく試みをもう少しすべきであった。

情が働いた

何度も述べる通り、青黒ジャッカルは決め打ちすべきようなアーキタイプではないにも関わらず、特に筆者と顎無氏のピックは半決め打ちに近いものであった。
筆者の卓の場合、緑系に向かうには厳しい流れであったとはいえ白の流れはよく、白黒や青白のアグロアーキを組む余地はあった。しかしながら、初手の《血のペテン師》からどうしても情が強く働き青黒ジャッカルに流されてしまった。
17Landsデータを信用しないピック方針になる以上、どの巡目でどのカードが見えたら参入、などのような目安もできる限り定量化すべきだった。


おわりに

今回、残念ながら私を含むゆる速の青黒ジャッカル調整メンバーからマネーフィニッシュは出ませんでしたが、筆者もこのようなジャッカルアーキの調整を真剣にしたことはなかったため、様々な教訓が生まれました。
ゆる速の調整メンバーのみなさん、ありがとうございました!
いずれ近いうちにゆる速オリジナルジャッカルアーキが環境を激変させることを願っております。

駄文となりましたが、以上をもって青黒ジャッカル調整録を締めさせていただきます。

ばいばい、さよなら、再見!


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