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ふつうの日記 2021.09.21『お茶色の空気』

・お茶

 お茶が上手く飲めない日が続いている。なんというか、コップと口の距離感や角度を測るのが著しく下手になっているのだ。一昨日はコップを勢いよく傾けすぎて飲み込めない量のお茶が口の中に溢れ、盛大にむせた。昨日は口の手前でコップを傾け、胸元にだばだばこぼした。もったいない。茶葉に顔向けができない。
 今日は近場へ外出をしたのだけれど、思いの外日差しが強かったのでペットボトルの麦茶を買った。ひとけのない場所で立ち止まってマスクを下ろし、やれやれ飲むぞとペットボトルを構える。そのとき、私の脳裏に一昨日、昨日のことが鮮明に蘇ってきた。もう二度とあんな思いはしたくない。私は慎重に確実に飲み口を唇につけ、ゆっくりとペットボトルを傾けた。
 だば。
 ゆっくりとゆっくりとペットボトルを傾ける手の、止めどきが分からなくなった。麦茶は私の唇の端からあふれ、顎を伝って落ちていく。大慌てでペットボトルを口から離しフタを閉め、服の汚れを確認した。麦茶のシミが残るかも、と胸元から裾までくまなく見るが、不思議とどこも濡れていない。と、顎の下にタプンと水の重みを感じた。
 マスクに麦茶が溜まっていた。私が呆気にとられている間に、不織布が水分を吸収していく。白いマスクには茶色いシミができ、私は予備のマスクを持っていなかった。
 そして世界は麦茶のにおいになった。むせ返るような麦茶の香りが、私の鼻を麻痺させていく。麦茶の湿気のこもった空気に息苦しさを覚えつつ、私はどうにか家に帰りついた。
 お茶が上手く飲めない日が続いている。明日こそは慎重に確実に飲み口を唇につけ、ゆっくりとコップを傾け、そして適切な角度で止めてみせたい。


・「スポンジ・ボブ」

 子供の頃から納得がいってないんだけど、スポンジ・ボブでなくてもズボンは四角いので、「ズボンも四角」というフレーズではスポンジ・ボブの四角さを強調しきれていないのではないか。朝まで生討論、本日の議題です。


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