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衆議院選挙「比例代表復活」の是非⁈

10月31日に投開票された第49回衆議院選挙。序盤の情勢を覆すかたちで自民党は微減にとどまり、単独で絶対安定多数を確保した。結果はさておき、今回の選挙で注目されたのが、与野党ともに大物ベテラン議員や大臣経験者の小選挙区落選だ。

まずは、何といっても自民党の甘利前幹事長が神奈川13区で落選。現職の自民党幹事長が小選挙区で敗れるのは史上初だそうだ。2009年、政権交代の際も選挙区で落選し比例復活したが、今回は幹事長という要職につきながらであり厳しい結果だったといえる。派閥の領袖、元幹事長で東京8区の石原伸晃氏も選挙区で敗れ、比例復活もできずに落選が決まった。"石原家"といえば、誰もが知る政治家一家。64歳と比較的若く、今後の復帰があるのか気になるところだ。緊急事態宣言中に外出し銀座のクラブに行き、自民党を離党した神奈川1区の松本純氏、自民党税調会長等を歴任し当選16回の熊本1区・野田毅氏も落選。他にも、デジタル庁初代担当大臣である香川1区の平井卓也氏や数々の迷言や失言で話題になった千葉8区の桜田義孝元五輪担当大臣も小選挙区で敗れ、比例で復活当選した。

野党にも波乱があった。17回連続当選の小沢一郎氏が岩手3区で初めて敗れ比例復活。岩手といえば"小沢王国"と呼ばれ絶対的な強さを誇ってきただけに、まさかの結果といえる。秋田1区の寺田学氏、茨城7区の中村喜四郎氏、静岡6区の渡辺周氏も選挙区で敗れ、比例で復活当選した。また、大阪10区の辻本清美氏、立憲民主党代表代行で大阪11区の平野博文氏が小選挙区で敗れ、比例での復活も叶わなかった。

1994年の法改正で重複立候補制度が認められ、1996年から「小選挙区比例代表併用制」がスタートして25年。1対1の構図が知名度のある大物議員にとって有利な選挙制度だと考えられてきただけに、改めて選挙の怖さを証明する衆院選となった。

今回、私がテーマとしたいのが、選挙の度に話題となる「比例復活」という仕組みだ。私は各ブロックで"小選挙区ないし比例区"のどちらかで全候補者が当選した場合、勝手に「パーフェクトブロック(PB)」と呼んでいる。自民党は今回の衆院選で、北関東B、北信越B、東海B、中国Bの4つでパーフェクトブロックを達成。大勝した前回2017年の衆院選では北関東B、南関東B、東京B、近畿B、中国Bの5ブロックで達成していて、北関東B、中国Bにおいては連続だ。これらのブロックは、小選挙区で勝てる強い候補が多くいるため、小選挙区の落選議員が少なく、立候補した全候補が、結果に関わらず全員当選しているのだ。

これが意味していることとは——。つまり、自民党議員は小選挙区の支部長にさえなれば、議員になる可能性が一気に高まるということだ。党内での人脈や派閥の影響力を行使し、支部長のポストさえ押さえ、選挙区の勝ちと比例復活を続けていければ(いちよ自民党は比例復活が2回以上続く場合、原則として重複立候補を認めない方針)、簡単に議員バッチを失うことはない。この比例復活とい制度は「議員の身分保証的」な意味合いが強いといえる。

私は多くの議員が、この状況を分かった上で毎回の選挙戦に臨んでいると思えてならない。特に自民党候補は選挙協力する公明党の推薦をもらえれば、ある程度の組織票も見込める。逆風さえ吹かない限り、自身の支持基盤を着実に固め、情勢を五分五分まではもっていければ勝機がみえてくる。後は時の運で、競り勝つ選挙もあれば、僅差で敗れても比例復活で当選する場合もある。そういった計算をしつつ、選挙に臨んでいるのではないだろうか。

四半世紀続いてきた衆院選の小選挙区制は「一票の格差の問題」など課題も多いが、特にこの比例復活については、再度、制度を検討すべきだと感じる。大相撲の角番のように、2回連続の重複立候補はできないとか、通算で2回までしか復活できないなど、ある程度の制約があっても良いだろう。政党にとって重要な議員であれば、比例区の上位名簿に登載し、小選挙区では立候補しないことも検討すべきだ。

そうしないと、有権者の審判が無意味になってしまう。選挙は当選して欲しいと積極的な投票もあれば、落選して欲しいとの理由で相手候補に投票する場合もある。今回のように、大物議員が落選した選挙区では、有権者からNOを突きつけられたわけで、本来であれば政治家を続ける資格はないのではないか。国民の民意という選挙の結果を十分に重くとらえ、過度に議員の身分が保証されない仕組みに変更されることを望みたい。

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