見出し画像

【2021 次期衆院選】群雄割拠の戦国時代!289人の殿様たちを占う選挙制度

衆議院の任期満了まで約半年———。選挙が大好きな私にとって、衆議院465議席(小選挙区289、比例区176)の雌雄を決する、戦国時代さながらの“大戦(おおいくさ)”が楽しみでならない。そして、議員にとって重要な意味を持つ“選挙制度のあり方”に強い関心を持っている。

不思議なことではあるが、衆参国政の選挙制度は当事者の国会議員が決めることになっている。選挙制度自体が法律であるため仕方ないが、自分たちで決める制度が公平かつ正確になるかは疑問だ。近年は裁判所の要請に応えるかたちで、違憲と判断されないように、各党が集まって「一票の格差」を是正する議論がされている。

皆さんも一票の格差という言葉をご存知だと思うが、憲法では14条1項で「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」として、一人一票の原則を守るよう要請している。選挙区は市区町村の単位など地理的な要因も考慮されているため完璧を求めるのは不可能だが、これまでも衆参の国政選挙がある度に、有志の弁護士グループによる訴訟がおき、裁判所の判断が注目されてきた(過去に違憲状態はあるが、無効判決による選挙のやり直しはない)。

ちなみに、衆議院の小選挙区289の中で、最も有権者が少ないのは鳥取1区(233,060人、令和2年9月時点有権者数・総務省発表、以下略)で、最も多い東京10区(481,534人)との差は2.066倍だ。最高裁判決では、小選挙区の格差は2倍以内を許容しているが、すでに2倍を超える選挙区は全部で21におよんでいる(前回衆院選では、区割りの変更で最大格差が1.98倍だったため、合憲判断が多数だった)。鳥取1区に続いて288番目の選挙区はというと、鳥取2区(233,864人)である。そして、鳥取1区と2区の有権者(計466,924人)を合わせても、最多の東京10区より少ないのが現状だ。

画像1

これが意味することは何か。裁判所から是正を求められ、国会が格差の解消に動くことになれば、いずれ鳥取1区と2区は一つの選挙区にせざるをえなくなるわけだ(2022年以降、衆議院の小選挙区は「一人別枠方式」を廃止し「アダムス方式」を採用する予定)。江戸時代に例えるなら、徳川将軍家は幕府がはじまった最初の50年で、外様大名などを中心に約130近い家を改易(取り潰し)し、全国の大名(殿様)を強制的に整理したが、今の時代では「一票の格差」という名の下に、鳥取1区は取り潰しにされ、鳥取県内にいた2人の殿様(国会議員)のうち、どちらかが追い出されることになる。鳥取1区は自民党の重鎮・石破茂衆院議員の選挙区。石破氏に限らず、どんなに選挙が強く権勢を振るっている議員でも、今後、大事な地盤を失う可能性があるということだ。

今通常国会で、衆議院選挙制度の定数是正は一切話題にでていない。周知期間を考えても、次期衆院選は現在の制度のままで執行されるはずだ。そして、選挙後に間違いなく「一票の格差訴訟」が行われ、裁判所は国会に対してさらに強い是正を求めてくるだろう。

着実に進む都市部と地方の人口格差。それは、安定した地盤で選挙を勝ってきた地方の有力国会議員にとっては心穏やかでない問題だ。守るべき城を失った殿様は隠居(政界から退場)するしかない。コロナの時代を経て、日本の人口構造がどう変化していくのか。一票の格差という視点で政界を見ていくと、新しい未来の勢力図が見えるかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?