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本格的にスタートしたワクチン!今後の円滑な接種に期待

ワクチン接種が日本でも本格的にスタートしている。

日本経済新聞の「チャートでみる日本の接種状況」で、少なくとも1回目の接種を終えた人は1300万人(国民の1割・6月7日現在)を越え、大規模接種会場の開設、個別接種を増やすなど、国・地方をあげてワクチン接種が加速している。“日本の接種は遅い”と批判の声も多くあったが、輸入されるワクチンが十分に届くようになった今、次の課題は打ち手や会場の確保など、新たなステージに移ってきたといえる。

その中で、5月24日に開幕したWHO年次総会でのテドロス事務局長の発言に衝撃を受けた。これまでに世界で行われたワクチン接種の75%(つまり4分の3)は、わずか10カ国に集中していると指摘。テドロス氏はワクチンの不公平感を打破し、すべての国で9月までに人口の1割が接種を受けられる供給体制へ協力を呼びかけた。

前述のデータ・世界編「チャートでみる世界の接種状況」を見ると、ワクチン接種の完了人数トップは1.4億人を超えた米国(6月8日現在)で、インド、英国が続いている。ワクチンの開発メーカーがある国(ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなど)ほど先行している現状だが、感染の拡大に歯止めが掛からなかった国々でもあり、自国民優先で接種が進むことはやむを得ない。しかし、予想通りだが、世界中で“ワクチンの争奪戦”が行われていると改めて実感した。

対して、日本のワクチン接種の状況はどうだったか。20年8月には海外メーカーとの基本契約が結ばれ、順調にワクチン確保へ動き出したようにみえたが、OECD加盟国のなかでも接種率が最低レベルといわれるほど、接種の開始が大幅に遅れた。原因はなんだったのだろうか。いま、主流となっているファイザーのワクチンは、昨年7月に各国で治験がスタートした。当時、日本では感染者が少なく、結果が出るのに時間がかかるとして、治験の開始は大幅に遅れ3カ月後の10月からとなった。12月に米国でワクチン接種が開始されたのに対して、日本がファイザーのワクチンを特例承認したのは、今年の2月14日。そのころには、世界中でファイザー社製ワクチンの需要が大幅に高まったため製造が追いつかず、予定していた調達スケジュールが困難になったと政府は説明している。せっかく早い段階で基本合意を締結できたにも関わらず、治験や承認の作業が大幅に遅れた。有事にも関わらず、対応が後手になってしまったことは残念でならない。将来的な日本の感染症対策として、緊急時における治験や承認のあり方など、しっかり検証して今後に生かすべきだと思う。

その上で、自国産ワクチン開発が遅れている中、日本でも無事にワクチン接種が始まったことは本当に良かったと思う。先進国の日本ならワクチン接種が行われて当たり前と思うかもしれないが、そもそも海外メーカーとの交渉が難航していれば、ワクチンの確保すらできなかった。相手は国ではなく民間企業だ。交渉も詳細な条件が提示され、繰り返し議論されたはずだ。“日本の接種は遅い”と批判するのもわかるが、改めてワクチン確保に向け尽力された皆さんの働きに心から感謝を申し上げたい。今後も円滑なワクチン接種が進むよう、国は地方自治体と綿密に連携を図り、好事例を他の自治体にも展開しながら、接種率アップに取り組んで欲しいと思う。

いま、懸念されるのは「変異株」への対応だ。“既存のワクチンで変異ウイルスに対応できるのか”と心配の声もあるが、ファイザーやモデルナ等が開発した「mRNAワクチン」は、ワクチンの製造工程を容易に変更でき、新たな遺伝子の配列さえ把握できれば、有効性を確保した上で再製造できるそうだ。ある専門家は「mRNAというワクチンの製造方法は将来のワクチン開発を一変させた」とも評価している。ワクチンの普及により、①感染を防ぐ、②もし感染しても発症させない、③重症化を防ぐ作用があると、ウイルスへの感染は3段階でブロックできるそうだ。世界中でワクチン接種が進み、「人類が新型コロナウイルスとの戦いに打ち勝った」と呼べる日が必ずくると期待して待ちたいと思う。

最後に、政府の新型コロナ対策への評価は賛否あるが、ワクチン接種については、国民全員分の確保に成功し、副反応などの補償制度を法制化、あわせて無料での接種を実現するなど、一定の評価がされるべきだと思う。政府は途上国へワクチンを供給する枠組み「COVAXファシリティー」に880億円の追加拠出も決定した。誰が悪い何が悪いと議論していてもはじまらない。日本また世界で、まずはワクチンの接種を着実に進め、新型コロナの収束へ連帯して進んでいく必要がある。そのためにも、今まで以上に、政治が強いリーダーシップを発揮し、国民の信頼を得ながら、コロナ対策を前に進めて欲しいと願っている。

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