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人口が増える地域、減る地域!本格化する「自治体間競争」

あたりまえのことではあるが、全国の市区町村の人口は毎日のように動いている。子どもが生まれれば出生届、亡くなった方は死亡届、就職や進学などによる転入・転出。各自治体の窓口では、このような手続きが毎日のように行われている。

人口動態は、まさに地域力のバロメーターといえる。人口が増える地域では、スーパーや飲食店など新しいお店ができ、新しい駅がつくられたり(その逆で駅ができたから人口が増加する場合も)、街の賑わいにつながっている。また、行政においては「住民税」、地価が上がれば「固定資産税」、地域の消費が増えれば「地方消費税(地方は2.2%、国税部分は7.8%で消費地の自治体に配分される)」が入ってくる。税収が増えれば、住民サービスの向上や、さらなる振興施策にも使えるだろう。つまり、極端ではあるが、自治体を会社に例えた場合、人口増は増益、人口減は減益の要因になるといえる。

一方、国は「地方交付税」として、地方自治体に財政支援をしている。税収が少ない自治体に対して、住民サービスが極端に低下しないよう、国が調整機能を果たしてきた。2018年度の地方交付税依存度(税収に対する地方交付税の割合)のトップは北海道の南富良野町で62.21%。依存度が半分の50%を超える自治体は80近くにのぼる。かたや、地方交付税を一切受け取っていない自治体もあり状況は千差万別だ。

では、国が支援している限り、地方自治体の破産はないのかというと、皆さんご存知のように、2007年に北海道夕張市が「財政再建団体」に指定された。2010年の法改正で、名称が「財政再生団体」に変更されたが、国の同意を得けなければ、新たな予算計上や独自の事業を実施できず、事実上国の管理下に置かれた。

破綻によって夕張市は住民税だけでなく、水道料金や公共施設の利用料など住民負担が増加した。市役所の職員も半数以下になり、給与も平均で40%カット。聞いて驚いたのは、管理職のうち課長級の3人を残して50人近くが一斉に退職したらしい。これは事実上のリストラなのか、それとも火事場から逃げ出したのか、捉え方は人それぞれだが、公務員とはいえ会社(自治体)の倒産を受けて、人生が一変したことになる。自分の住む自治体が同じような状況になったら…住民と自治体は運命共同体だと感じてしまう。

この夕張市の再建に奮闘してきたのが、当時・東京都の職員をしていた鈴木直道北海道知事だ。夕張市長当時の活躍は、下記の記事で詳細に紹介されているが、経済的な理由で大学進学を断念し、高校を卒業して東京都庁に入庁した苦労人の鈴木氏にとって、都職員として夕張市に派遣され、そこで得た経験は知事としての大いに役立っているだろうと想像される。

結論として、人口減少社会を見据え、全国を舞台に人口を奪い合う、自治体間競争がより進んでいると感じている。市長などの首長には、コスト感覚や経営感覚が求められ、行政職員には地域の魅力を高めるための知恵や努力が求められる。残念ながら、この競争に負けた自治体は、住民が離れ、徐々に衰退の一途をたどることになるだろう。その点、住民側も首長選や議会選挙を通じて、厳しく行政を監視していく必要があるだろう。

現在、東京一極集中と呼ばれ、都市部と地方の人口格差が着実に進んでいる。大学は都市部に多い、若い人に仕事がないなど、理由は様々あると思うが、デジタル化が進み住んでいる場所と仕事に垣根が無くなるなど、人間の働き方や社会構造は日々変化している。その流れを無視したり、対応が遅れた自治体は残念だが淘汰されていくのは止むを得ない。既得権益につかまるかのように、"自分は安心"という時代ではない。人口というものに着目すると、これまでの取り組み、そして未来に向けて今何をしようとしているのか(成功と失敗の検証も含めて)、より各地域の真剣さが問われる時代に入っていると思う。

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