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僕たちにも、インスタ映えの権利を

 先日、一人で吉祥寺に出かけることがあった。
 親戚の人が「マットレスを捨てたいけど、ヘルニアのため運ぶことができない」ということで僕が手伝いに行くことになった。

 8時に回収業社の人が来てくれるらしいので朝の6時に吉祥寺に向かい、無事マットレスを回収場所まで運び仕事終了。
 マットレスを運んでいるとき、高校生の頃、友人と一緒に引っ越しの日雇いをしに行ったことを思い出した。
 もやし体型の僕にとってあれは地獄だった。
 だけど、仕事終わりに友人とくだらないことを語り、笑い合ったあの帰り道のおかげで楽しい思い出に昇華されている。

 マットレスも運び終わったので、親戚のおばさんと一緒にモーニングを食べに行くことに。
 ロッチの中岡さんを、ドラえもんの秘密道具「きこりの泉」に落としたような爽やかイケメンな中岡さんが店主のカフェに行った。

 「昔、そのお店に一人で行ったことあるんだけどさ」
 「うん」
 「私は普通に席に案内されたんだけど、私の後に二人の若い女の子が注文したんだけどさ」
 「うん」
 「その子たちは注文し終わった後に、『階段のほうにインスタ映えするインテリアがあるので写真を撮ったりしてお待ちください』って言われてたの」
 「二人で来てたからじゃない?」
 僕は慰めるようにそう言った。
 「別に写真撮る気はないけど、なんかモヤっとした気持ちになったよね」
 「たしかに、そうなる気持ちわかるかも」
 そんな会話をしながらお店へと向かった。


 「いらっしゃいませ」
 「モーニングセット2つで、ドリンクはカフェオレ2つお願いします」
 「かしこまりました」

 お店は1階と2階があって、朝なのにお店はほぼ満席で一階の小さなテーブル席に案内された。
 しばらくして、二人の女性客がやって来た。
 そのお客さんがひと通り注文し終えた後に、爽やか中岡は「写真を撮ってお待ちください」と女性客に伝えた。
 僕とおばさんは目を合わせニヤッと笑った。
 不思議と目だけで会話をしているような感覚になった。
 (ね、言ったでしょ?) 
 Mr.都市伝説、関暁夫のように目で伝えてくるおばさん。
 (見た目は爽やかだけど中身はスケベな中岡さんだね)
 僕は、そう伝えた。

 スケベ中岡さんが焼いてくれたパンと、淹れてくれたカフェラテは目が覚めるくらい美味しかった。
 マットレスを運んでくれたお礼として、おばさんがお会計を支払ってくれることに。
 (はたから見たらママ活をしているように思われてるだろうな)。
 そう思った僕は、キョロキョロしていたらもっと怪しまれると考え、中岡さんのパーマヘアーから煙が上がるくらい一点集中で見つめていた。
 
 お昼まで時間があったので、おばさんの家でまったりすることに。
 「この前の金曜ロードショーでやってたグーニーズ観る?」
 「面白い?」
 「リクは世代じゃないから面白いと思うか分かんないけど、私の世代はみんな知ってると思うよ」
 「時間あるし観てみよっかな」

 映像の画質や小道具など、どれも当時の時代を感じるものばかりだった。

 物語は「王道」冒険アドベンチャー作品っていう印象だけど、その王道を作ったのがこの作品なのかな。
 お父さんやお母さんはこういう作品を観て育ってきたのか。
 おばさんは今、当時のことを思い出しながら観ているのかな。
 僕が生まれるずっと前に上映されていたのに、どこか懐かしく感じる。
 そんなことを考えていると僕もなぜだか、おさな心に戻って作品を鑑賞していた。

読んでいただきありがとうございました。