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しかしながらブリーダー界隈はめっちゃヤバかった・・・。

器用貧乏道12から続く

そうそう、とりあえずホモサピエンスはいいやとブリーダーさんのところへ電話をかけてみると、「まずは見学に来てください。」と言われた。履歴書を持って来いでもなく、住所や経歴を聞くでもなくて「まずは見学」というところに「ん?」と引っ掛かったが、まあまあそういうスタイルなのかもしれないので、早速行ってみた。

門を開けると長さ20mほどの通路があり、その右側に昔の二軒長屋のような細長い建物が連なって建っている。その脇を通り抜けていくとオープンスペースがあり、飼育員の方がお世話をしておられたので挨拶をし、案内してもらう。
オープンスペースを囲むように6畳くらいのスチール製の物置が何棟も建っていて、中を見たら天井までケージがギッシリ積み重ねられていた。

わお!
スチール製だから夏は温度がハンパなく上がりそうだけどね?と犬事ながら心配になる。まだ3月だったけれど排泄物の臭いがハンパなかったし、これって夏になったら鼻が潰れるレベルになるんじゃね?と。
ましてや、ワンズは臭覚が人間の1000〜1億倍優れているというのにである。この臭気を1000倍にしたらマジ耐え難いよね?とワンズに同情する。

とにかくそのスチール製の物置に、犬たちが、身動きがかろうじてできるであろうサイズのケージの中に押し込められていて、小型犬がワンワンキャンキャンと絶え間なく吠えていた。パピーミルという言葉が脳裏に浮かぶ。

人間ならば1畳くらいのスペースである。1畳だよ?1畳。刑務所だってもう少し広いのではないだろうか?生憎まだ行ったことないからわからんが。
で、彼らはその狭い場所で殆どの時間を過ごすらしかった。そりゃあ、吠えたくもなるだろうて。
大型犬も、中で一回転できるかどうか?というサイズ感のケージから愛らしい顔をのぞかせていたのだが、その表情たるや、哀愁やら絶望やらをごちゃ混ぜにして粘土で作ったような顔つきなのであった。

その時、脳内ではいつか見たことのある山谷の映像がモノクロフィルムで写し出されていた。
ドヤですか?
ここは。
ドヤの場合、割合はともかくとしてなんらかの自己責任があるものと思われるが、ワンズは純粋に親ガチャだろう。たまたま血統書つきの親から生まれ落ちた場所がここだった的な?

飼育員さんは言う。ブリードに使う使うって言うんだ!この言葉もどうかと思うが?)犬や猫は、5歳までと法律で決まっているので、引退したら里親さんの元で可愛がってもらって自由な生活ができるんですよ?と。いかにも法律を遵守し、動物の尊厳を守っている正統派のブリーダーであると言わんばかりの口調であった。私の表情がだんだん暗くなっていくのを感じての発言だったのかもしれない。

だが、「この子はもう引退したので里親さんを募集しているんです。」と紹介されたペルシャ猫の虚ろな瞳をいったいどう表現すればいいのだろう?
そこにあったのは、紛れも無い虚無である。
もう一年以上前の出来事なのに、あのペルシャ猫の瞳を私はまだ忘れる事ができないでいる。

たかが動物だし、四つ足だし、と、割り切れればいいのかもしれないが、猫は92%、犬は87%、我々ホモサピエンスとDNAを共有しているのもまた厳然たる事実なわけで、あまりにも彼らに申し訳なく、いたたまれない気持ちになってしまった。

建物の外に5m四方ほどのフェンスで囲われた空間があり、その中にラブラドールレトリバーが放されていた。若いラブくんは健気に尻尾を振って見せたが、飼育員が近づくと即座に2〜3歩後退りしたのだった。
ってことは、少なくとも可愛がってはいないよね?
ラブラドールレトリバーは、盲導犬にも採用されているくらい賢く従順で愛らしい犬種だ。だから、彼だってちゃんとわかっているのだ。
誰に尻尾を振り、誰から後退りすべきかを。

「これだけの頭数ですとお散歩がたいへんですね?」と言うと
「散歩には行かないんです。他の犬と出会って病気がうつる可能性がありますから。」とおっしゃる。

え?
マジか?
だって、ラブラドールレトリバーだよ?
大型犬だよ?
お散歩行かないの?
5m四方のフェンスの中に放す事が運動なの?

あり得な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!

「お気持ちが固まりましたらまたお電話ください。」と言われたが、お気持ちは徹頭徹尾下がりっぱなしで、家に辿り着く頃には水深1000mの深海に達っしていた。

その夜、夢を見た。
夜中に忍び込んだ自分が、全てのケージを開け放ち、犬や猫の皆さんを逃してあげるという夢だった。ところが、彼らは長い間閉じ込められていたせいで逃げようとしないのである。あまりにも悲しくて目が覚めた。
と、そのくらいトラウマタイズな経験だった。
実際にやったら犯罪だよね、これって。

結論。
動物好きはブリーダー界隈では働けない。

よせばいいのに、時々ブリーダーのHPを眺めてしまう。
あのペルシャ猫はまだ里親さんが決まっていない。
引き取ってあげたいのは山々だけど、先住猫がいる場合はケージに入れて慣らしていくらしい。
となると、ケージが必要だし、去勢もしなきゃだし、病気になったら医療費もかかるだろう。何よりも彼の一生をケアする覚悟が必要だし・・・。
と、グズグズしている私。

ごめんね、迎えに行ってあげられなくて。
もう少し待っていてくれる?
きっと迎えに行くから。

と、バイトを探しに行った筈が、虚な目をしたペルシャ猫が気になって仕方がないというハメに陥ったのであった。
アカンわ〜。



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