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2024.6.15 八甲田周回(大岳・井戸岳・赤倉岳)

朝7時半。酸ヶ湯の入り口にある湧水を1ℓほど汲み、いつもの反時計回りで出発する。下界26°、最初から半袖短パンで歩き出したが樹林帯の登りですぐに滝汗をかく。
初めて歩いた時は最初の登りも楽しかったような気がしていたのだが、2回目からは暗くて単調なイメージになっていた。地獄沼までは無心で登る。下の道から人の叫び声や、ウィンウィンという警告音のようなものがしてなかなか騒がしい。ちょうどこの辺りで採れる根曲がり竹の旬なので、山菜採りの人だろう。
標高1200mくらいのところからいっきに開ければ、活火山の荒々しさと変化に富んだルートになって楽しい。

開けたところから急に火山感が出る
穏やかな湿原

自然の美しさは人間が太刀打ちできない厳しさと表裏一体なわけだが、活火山のお花咲きみだれる登山道を歩く時が1番それを感じる。
初めて来た時のことを思い出しながら歩く。大岳と小岳の分岐までの間に、ばーっとチングルマのお花畑があったように記憶していたが、今日がはまだ大きな雪渓が残っていた。雪解け水が小さな流れを作っている。

この辺りでお花畑に感動していたような気が


分岐を大岳の方に登っていくと、更に雪渓!こんなところに雪渓が残っているのは初めてかも。まだまだ分厚そうな雪渓は踏み抜く感じでもなく、ツボ足で登る。

雪渓


大岳はいつも風が強いが、今日の風はそこまで強風でもなく、ほてった体に気持ちよく吹きつけてくれる。山頂までのヴィクトリーロード、6月のお花畑は初めてにしても、こんなに晴天だったのは初めてだったっけ。岩木山もくっきり見え、こんな景色だったっけ?こんなに大パノラマだったっけ?と少し混乱。

チングルマと、奥に岩木山


思えば過去5回?真っ白か超強風で景色見る余裕なかったかのどちらかだったかも。晴天か、それ以外で、山は全く違う表情になる。

別の山のように穏やかな八甲田

頂上に着くと、これもまた初めて、山頂にはたくさん人がいて、座ってご飯を食べている人まで。大体立っているのがやっとの強風なのでそそくさと写真だけ撮って退散する山頂なのに。

大岳山頂看板の写真に他の人が写っているの初では?

本当に別の山に来たみたいな気分になった。風が弱くて、晴天で、お花真っ盛りだと、こんなにおだやかでたおやかな山になるんだな、5回登ってやっと知る八甲田の新しい一面。私は基本的に何度も同じところに行けない性分だが、気に入った同じ山に何度も登る人の気持ちが少しだけ分かった。

ミヤマキンバイ(多分)とイワカガミ


暑いし、なぜか朝から腰が痛いし、無理しない方がいいかなーと弱気になった瞬間もあったはずなのに、ヴィクトリーロードあたりからアドレナリンが噴出、ここからは当初の予定通り井戸岳、赤倉岳を縦走する。頂上を後にすると、向かい側の井戸岳へと至る斜面に木の階段が見えた。これから歩く道が見渡せるとテンションが上がる。歩いたことのない道だと尚更だ。

これから歩く道にテンションが上がる!!(右側のぐねぐね道)

一旦毛無岱との分岐まで降り、降りの雪渓で一緒に四苦八苦していた老夫婦に「あら、ここでさよならね〜」と言われながら右の井戸岳に向かう。大岳鞍部避難小屋を過ぎて、井戸岳へ登り返す。登り返しはキツいものだが、お花の季節と紅葉の季節は疲れが半減する。人間の身体って面白いよなあ。

大岳の降ってきた道と、大岳鞍部避難小屋

この道には、初めて見たミヤマオダマキがたくさん咲いていた。可憐で、独特の淡いカラーが他と一線を画していて好きな花になった。

ミヤマオダマキ。花は下を向いているが、キツい坂の下からだと真正面を見せてくれた

稜線に出るとわーっと1人歓声を上げてしまった。荒々しい井戸岳の噴火口ががばっとあいて、プチお鉢巡りのような稜線が続いていた。

渾身の自撮りでは全体が写らないのが悲しいところ

右には八甲田の深い森を見ながらうきうき歩くと井戸岳の頂上に到着。

井戸岳

そこから今度は赤倉岳への稜線に入る。ここも短いながらザ・稜線で、とても気持ちがいい。

あの道をこれから歩くと思うと嬉しさが腹の底から湧き上がる気持ちがする
空に向かう稜線
歩いてきた道が見えるのも至福
これがザ・稜線だぁ!

歩いて行くと、もっと荒々しい赤倉岳が見えてきて、もうひと歓声あげる。スライドしたソロのお兄さんの「最高だ〜」と呟く声が風に乗って聞こえてきてニヤリとする。いや、本当に最高だ。

これ全部歩けるの?!やばい!って1人で言ってたところ
断崖×残雪=かっこいい
同じような写真を量産
自分がこの素晴らしい景色の中にいたことを絶対に記録したい
自分がこの素晴らしい道を歩いたことを絶対に記録したい
断崖の上の稜線
ストーリーを知るとより愛せる

火山爆発でできた断崖の上の稜線を行くとひらけた場所に出たのでここでお昼休憩とした。モンベルで売っていた簡単パスタキットを試してみたが、なかなか美味しかった。

山の上で食べたものって味や食感まで思い出せる
カフェ赤倉岳、私だけの景色
山の上珈琲はやめられない

休憩を終えると、毛無岱まで300mほどひたすらに降る。
樹林帯に入るとじめっとして道も細く、あまり楽しい道ではないが、小さい子供連れの欧米人家族に「コンニチワー」と言われてほっこりしたりしながらなんとか歩き切った。この先の湿原の素晴らしさを知っているのも励みになった。だけど、知らなかったら、あの風景がばあっと広がったときに泣くほど感動するかもしれない。私にとって知らない美しさに出会うことってすごくすごく重要なんだよな。

美しいもの1:イソツツジ
美しいもの2:チングルマ群生
美しいもの3:カメノコテントウ
美しいものその4:アオモリトドマツ(オオシラビソ)の葉芽

さて、上毛無岱に出ると、チングルマのお花畑が迎えてくれた。
ワタスゲも揺れているし初めて見る花にも出会えた。

祖母の1番好きだった花、チングルマ
淡いピンクのショウジョウバカマ
綿毛になりかけのチングルマ
質感がすてきなイワイチョウ
初めてみた!ミツガシワ 天才的な造形
3〜4年に1度咲くらしいコバイケイソウ すごく可愛いけど猛毒


下毛無岱に降る階段の上に立ち、初めてここに立った時の感動を思い出した。家族で来た初めての八甲田で、北東北の湿原の素晴らしさに震えた瞬間だった。

ここからの下毛無岱の美しさは実際に歩いてこないと分からない
素晴らしい湿原その1
素晴らしい湿原その2

毛無岱を(心で)スキップしながら満喫し、いつも最後に座る休憩スペースでいつものように降りたくないなーと思いながら名残を惜しみ、酸ヶ湯に向かった。

きっとまた来るね、ありがとう八甲田

梅雨前、お花真っ盛りの八甲田山に登れてとても良かった。いつも厳しかった八甲田が、今までで一番穏やかな表情を見せてくれたのも嬉しかった。
ちなみに初めてきた八甲田が素晴らしかったと記憶していて、今回も「あ〜、あの時良かったから比べちゃうな〜」などと思いながら登っていたのに、当時の写真を見返したら、雨だった。下毛無岱を見下ろした感激が記憶を改竄したのだろうか。

帰り道の岩木山が神々しいところまで完璧な山行だった

今回の軌跡


※ 私が登った翌週、登山道からそう離れていない場所でツキノワグマによる人身事故が立て続けに起こり、今も入山規制中。


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