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大人の林間学校と体育教師の私の話。〜林間学校アナザーストーリー〜

こちらの記事で大人の林間学校の話を書いたが、裏話的な話も聞いてもらいたい。

私は、林間学校の1日目に行う授業企画で、体育の先生を担当した。企画内容を決める打ち合わせで、球技をやりたいと強く要望したところ採用された。
なぜ球技にこだわっていたかというと、[さる小]では体育館があると聞いていたので、みんなでバスケをやりたいと思っていたからだ。昨年末に、あの大ヒット映画「ファーストスラムダンク」を見て以来、「バスケがやりたいです、安西先生…」状態を引きずっていたが、バスケをやるには場所も人数も必要で難しいと、諦めを感じていた。そんな私に舞い降りた、またとないチャンスだった。これは絶対に掴まなければいけないと、鼻息を荒くしていた。
ただ、バスケはスキルもある程度必要だし、子供も参加する今回の企画内容としてはふさわしくないということで、授業の種目はドッチボールに決まった。残念だったが仕方ない。まあ、体育館があればこっちのものだ。自由時間に人を集めてやろうと心に誓い、至る所で「バスケしようね!時代はスラムダンクだよ!」と布教活動を進め、楽しみにしていた。

ドッチボールの授業内容を詰めていくにあたり、さる小の体育館の広さはどれくらいか、ボール系の備品は何があるか等、現地の情報を集める必要があったので、メールで担当者に問い合わせた。
早速回答が届き、メールを開いた。途端に頭が真っ白になった。なんと、耐久性の問題で[さる小]の体育館は取り壊しになったという。放心状態で、「バスケができないみたいです、安西先生…」と呟いた。バスケをするという(林間学校参加の裏目的だった)大きな大きな夢が、静かに散っていった。

ラジオ体操をしたら、ただの腰が痛い人になる私(左から2番目)

林間学校の2日目は、榛名山の掃部ヶ岳山行が企画されていた。榛名山に行ったことはなかったが、事前の案内でスニーカーでも登れると聞いていた。かつ、登山に初めて挑戦するメンバーを含む30人で行く山行だったので、ハイキング程度だろうと思っていた。わりかし荷物にもなるので、登山靴は持ってきていなかった。
榛名山に向かう道中、何の気なしに「今日はこのスニーカー(スリッポンのような紐なしタイプを指し)で登ろうと思うけれど大丈夫だよね。」と言った。すると、リアルに驚かれた。まあ、大丈夫だと思うけど…と歯切れが悪い。流石の私も不穏な空気を感じた。「え、榛名山って結構厳しい山?」と恐る恐る聞いた。「高尾山と同じくらい…竜ヶ岳の3分の2くらいかなー。」と返ってきた。ちょっと待ってくれ、それは割としっかり登るぞ?こんなふざけたスニーカーで大丈夫だろうか。今日はハイキングくらいと思っていたと、その不安を漏らした。「いや、でも登山って書いてあったよ。」と言われ、ぐうの音も出なかった。何も調べないくせに、楽観的に解釈する性格を我ながら不思議に思った。

まあ、今更仕方ない。運営側でかつ登山歴1年半の私は、まあまあ山に登っている方の人間だったが、誰よりもふざけた靴で参加することになった。
腹を括り、登り始めた。そんな私を嘲笑うかのように、今まで体験したこともないような急な上り坂が続いた。ふざけたスニーカーは、もちろんグリップ力だってふざけている。周りで「これは滑りやすいねー。」という会話が繰り広げられる中、私はリアルにズルズルと滑っていた。
そんな急登が30分くらい続いた頃、息が上がる以上の感覚になった。酸素が行き渡っていない感じだ。嫌な予感がして、私は休憩した。もう少しで平坦な道になるよ、と声をかけてもらい、息が整った頃に再び歩を進めた。ところが平らな道を歩いても、酸欠感は変わらない。これは本気でまずいかもしれない。下山できなくなったら大変だ、と思いまだ元気なうちに単独で下山することにした。

登る時に滑った道は、もちろん下りる時だって滑る。むしろ、登り以上に滑る。切なさと怖さでいっぱいになりながら、体勢を低くしてひたすらに駐車場を目指した。えっちらおっちらではあったが、何事もなく安全に下山できたし、仮眠を取ったら体調も回復した。
一応体育の先生だったのに、ふざけ度No1スニーカーで登り、さらには山頂に辿り着けなかったという切ない人生に思いを馳せている頃、みんなが帰ってきた。山頂まで結構まだ登りもあったから英断だったよ、と言ってくれた。確かに、それは私も偉かったと思っている。捨てる神いれば拾う神ありだ。
きっとこれからも、私の人生はこんな感じで進んでいくのだろうと感じる林間学校だった。

榛名山の山頂(私は地上で切なくなってる頃)


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