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キリコミコカリコミコの話。

知識が豊富で尊敬に値する人を師匠と呼びたがる性質がある私だが、もれなく登山道にも師匠がいる。街にいると違和感を感じるほどの山族で、登山経験の豊富さはもちろん、山の楽しさを伝えたいという思いが人一倍強い人だ。

師匠であり、雷鳥さん

師匠との山行でも忘れられない1つなのが、キリコミコカリコミコの雪道ハイクだ。この早口言葉のような名前もお気に入りポイントで、漢字で表すと切込湖刈込湖となり、2つの湖を指す。雪が積もった2つの湖で、豚汁を作って食べるという山行だ。

これまで師匠の口から、山に鍋を担いで行ってすき焼きをやっただの、寄せ鍋もしただの、おでんを作っただのという話を聞いていた。その度に、羨ましい、私も鍋山行に行きたいという思いを、結構強めの圧をかけながら伝え続けていた。
圧をかけ続けて半年、ついに念願の鍋山行に連れていってもらえることになったのだ!思いが伝わったのが嬉しくて、もう一つの夢だった山コーヒーも挑戦しようと、バーナーなどを買い込んだ。

豚汁の具材は各自分担制となり、私はニンジンと里芋を持っていくことになった。それ以外の指示はなく、どのように持っていけばいいのかと悩んだ。ただ、さすがの私でもそんな初歩的な質問を師匠にできないくらいのプライドは持ちあわせていたので、一緒に行く登山レベルが同程度の友人にそっと相談した。

我々はわからないなりに頭を巡らせ、具材はカットして下茹でをすれば良いだろうという結論に至った。その中で、“豚汁セット“というカットも下準備もされた商品があることに気づき、それでいいじゃんと盛り上がったが、お互い自分たちが“いい大人の女子“であることを思い出し、自制した。野菜も切れないと思われたらまずい、もう二度とご飯山行には呼ばれないかもしれない。おとなしく、準備をすることにした。

 
そして迎えた当日。
真っ白で誰も踏み入れていない雪道を歩くのはとても楽しかった。静かに雪に埋もれて誰かが一瞬見えなくなる瞬間とか、よろよろ足元を取られながらも歩こうとするところとか、いつもの自然道では味わえない楽しさがある。
何もしなくても笑いが込み上げてくるところが、雪山の醍醐味だ。

我々だけで真っ白を独占

お昼になり、いよいよ豚汁作りがはじまった。私は、澄ました顔で用意した野菜を差し出した。サイズも量もちょうどいいと褒められた。こういう時に料理慣れしていないと人数分以上持ってきてしまい、食べ切るのに困るケースが多いんだとか。普段料理している感が出るという、思わぬ誤解を生んだが訂正はしなかった。

お肉もお味噌もみんなのこだわりが詰まった豚汁が出来上がった。寒い中歩いた後に、晴れた空の下で食べるアツアツの豚汁は格別だった。

鍋を担ぎ料理も振る舞ってくれたお礼に、私はコーヒーをいれようと準備を始めた。

言いそびれていたが、ドリップコーヒーをいれ始めたのは(※平地でも)この山行に行く直前だった。1ヶ月前にコーヒースタンドで個人レッスンを受け、初めてのドリップコーヒーを淹れた程度だった。つまり、経験値は極小だが知識を吸収したて、という状態であった。かつ真面目なので、お湯の温度はしっかり守っていた。

初使用のケトルとしたり顔

ところがいざ自然の中でケトルを前にして、お湯の温度を見極める方法がわからないことに気づいた。自宅だとポットに温度設定機能があったので困ることはなかったので盲点だった。
95℃がどれくらいかわからない!と、プチパニックを起こしていると、すかさず師匠が「沸騰する寸前くらいだよね、気温低いしいつもよりは時間かかるかも。」といつものごとくアドバイスをくれた。さすが師匠、知らないことはないようだ。安心してタイミングを見計らってもらうことにした。

師匠のGoサインが出たので、時間を計りながら一杯ずつコーヒーを入れた。シチュエーションが最高だったので美味しかったが、いつもより味が薄い気がした。みんな喜んでくれたが、正直に味が薄い気がすると申し出た。すると、アメリカン好きだよ、と決して薄くないとは言われなかった。

 
今後のためにも、失敗点を探した。コーヒー豆もいつものやつだし量もちゃんと測った。色々考えても、お湯の温度が低かったことが原因だとしか思えなかった。見た目でお湯の温度を見極められないかと、YouTubeで調べてみた。
すると、あの日の温度は80℃くらいだったことがわかった。あの時、何の疑いもなく師匠の言葉を信じていたが、お湯の温度に関しては適当に発言していたようだ。
お湯の温度の見極め方に関しては、私に弟子入りしてもらいたい。


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