ah- 面白かった
吉田拓郎というのは僕にとってとても大きな人で、中学以来、彼の音楽に励まされ、刺激を受け、助けられて生きてきた。
細かいことは書かなないけれど、彼の歌があったからこそ僕は自殺もせずに生き延びてこられたのだと思っている。何度も何度も「越えて行け そこを 越えて行け それを」(『人生を語らず』、詞・曲・歌:吉田拓郎)と唱えながら、苦しい時代を乗り越えてきたという思いがある。
そんな“大いなる人”であり、かつ、中学時代からもう何十年も聴いてきた人だがから、僕はなんとなく吉田拓郎が死んだらその日は喪に服して会社を休もうと思ってきた。
年齢を考えると彼のほうが僕より早く死ぬのが順当である。彼が死ぬのは残念だが、しかし、人が死ぬのは避けられない。だったら、その日はせめて会社を休もう。どんなに大事な打合せや会議やイベントがあっても、何が何でもその日は会社を休もうと決めていた。
その吉田拓郎がラスト・アルバムを出した。『ah- 面白かった』という、なんともハッピーなタイトルである。これが本当にラスト・アルバムになるにしても、幸いにして彼はまだ生きている。
しかし、僕のほうはと言えば、雇用の年限を超えて会社から追い出されてしまい、もう休もうにも休めなくなってしまった。これは全く予想していなかった。お互い長生きしたものだ(笑)
それで、どこにも行く予定のない昼下がりに、『ah- 面白かった』を聴いた。
拓郎自身による長文のライナーノートがついている。こういうのは珍しいのではないか。
一般論としては作家が自ら作品を語るのはあまり好ましくないことである。しかし、ここでは拓郎はその作品をいちいち語るのではなく、その曲を書いた時に感じていたことや、間接的に繋がっているかもしれない漠とした思いについて書いている。これは面白い。
そして、音の面では、いやはや全くもって拓郎節健在である。生涯を通じての大ファンのように書きながら、実は僕は今世紀に入ってからの吉田拓郎はあまり聴かずに過ごしてきたのだが、久しぶりに聞くと、これは紛れもない拓郎節である。
如何にも吉田拓郎という感じの、どこへ飛んでいくか分からないコード進行、いや、例えば、最初の4小節はオーソドックスな進行なのに次の4小節の頭が予想外のところから始まったりする。この行ったり来たりする感じは昔からよく聴いてきた拓郎だ。
同梱されていた DVD の中で、鳥山雄司と武部聡志が口を揃えて「予定調和を嫌う人だから」と言っていた。そうか、彼独特のコード進行は予定調和を嫌った結果なのかと今ごろになって合点が行った。
しかし、その一方で『雪』を『雪さよなら』と改題して(歌詞も少し書き足したかな?)、セルフ・カバーで再録している。こういうものすごく素直で流麗なメロディ・ラインも確かに拓郎にはある。そのことをしっかり思い出させてくれた。
そして、この曲に乗っているのが小田和正によるコーラス。拓郎が、決して自分には思いつかないハーモニーと評したコーラス・ワーク。
編曲で堂本剛が、ジャケットのタイトル文字で堂本光一が参加、DVD のナレーションは篠原ともえがやっている。
有朋自遠方来、不亦楽乎。
7/21 の『LOVE LOVE あいしてる 最終回』の放送が待ちきれない。
(以上は 7/12 に自分のブログに書いた記事のほぼ完全コピーです)
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