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小説とかドラマとか映画とか

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他のマガジンに含めていた映画評や書評などを抜き出してここに独立させました。
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2023年3月の記事一覧

読書という競技について

他人が書いた書評を読んでいると、「えっ、そんな感じ方をする人がいるのか」と驚くことがあります。 いや、僕の理解が正しいのであってその人の読み方がとんでもなく勘違いな読み方だなどと言いたいのではありません。良いとか悪いとか言う以前に、まず自分と他人の違いに純粋に驚くわけです。 たとえば先日、上田岳弘の『引力の欠落』を読みました。芥川賞作家とは言え、ベストセラーでもなんでもなく、割とマイナーな作品なので、これを例として取り上げても共感していただくのは難しいかもしれませんが、一

あなたが泣いた映画は何ですか?

もう随分昔になるが、親しい仲間との宴席で、「それぞれが泣いた映画を披露し合う」という企画をやったことがあって、結構盛り上がった。いや、盛り上がったのは僕の時だけかもしれない。 というのは、僕だけがなんか毛色の違う作品を挙げたからだ(笑) 僕は「泣ける映画」みたいな宣伝をする映画が大っ嫌いで、そういう宣伝文句を聞くだけでもう観る気が失せてしまうタイプである。どんな映画を観ていても、映画の作り手が泣かせようとする素振り(わざとらしい台詞や無理やりな進行、大仰なBGMなど)が見て

その洋画の邦題、それでいいですか?

そのタイトル長くない?『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観ました。で、映画自体は大変面白かったのですが、そのタイトルはちょっとないんじゃない?と思いました。 もちろん映画の邦題というものは、どういうタイトルにしたらその映画が当たるかを考えて付けるものだから、そういう観点からはこの邦題が良いと判断したのかもしれません。でも、だからと言ってふさわしい邦題を一から考える努力を放棄しないでほしいなと思うのです。 こういう傾向は 20年以上前からあって、当時自

映画評を書く時に何故カメラワークに触れないのですか?

こんなタイトルにするとなんか挑発的かつ高圧的で我ながら嫌な感じ(笑)なんですが、まあそのほうが読んでくれるかなと思ってそうしました。お許しください。 でも、僕が言いたいのは「映画について書く時にカメラワークに触れないなんて失格だ」みたいな偉そうなことではなくて、「もし映画を観るときに今そういうことに目が行っていないのであれば、その辺りに注目すると映画がもっともっと面白くなると思いますよ」ということです。 僕はもう何年も前から、自分が観た映画の評を自分のブログなどに書いてお