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五輪の無観客開催が決定 いったい何のためのワクチンなのか

 東京オリンピックは、ほとんどの会場で無観客開催となることが決定した。感染者の第5波が東京に到来しているとされるが、高齢者へのワクチン接種が順調に進み、日本国内のコロナウイルス感染者の死者が減少し続けている中の決定である。

 「コロナはただの風邪」というのは誤った認識であったが、現にそういった状況に近付いている。感染者の死亡者の大半を高齢者が占めている現在、少なくとも新型コロナウイルス感染症は命を危険にさらす病気ではなくなりりつつある。そして気温が上昇すれば感染が抑えられるとの研究報告まである

 しかし菅首相・小池都知事は東京五輪の無観客開催を決定。多くの会場で無観客開催となってしまう。筆者は「7月末に高齢者接種完了」という政府目標は五輪を意識したものだと考えていただけに、期待を裏切る決定に驚いた。接種を受けていない若年層はまだまだ多いが、しかし命の危険がある高齢者への接種がほぼ完了してもなお、観客数制限があり特に厳格な対策がとられると予想される五輪ですら有観客開催できないとなると、ワクチン接種の意味を考えてしまう。

スポーツ大会の感染拡大例は僅少

 日本国内ではスポーツ大会に関係した感染例は少なく、見つけるのが難しいくらいだ。数少ないクラスターの例として、6月に富山県で発生した、中学生のスポーツ大会に関係するクラスターがある。

欧州選手権の例は極端

 海外に目を向けると、EURO2020(サッカー欧州選手権)では関係者に大量の感染者が出ているとされる。スコットランドからロンドンに向かった観戦者の1294人で感染が確認されたと報じられているが、注意が必要だ。スタジアムで観戦したのはこの3割ほどで、残りはパブなどで応援していたという。

 また、日本と状況が大きく異なる。イギリスではワクチンの接種が進んでいるとはいえ、大会では観客が密集し、ほとんどノーマスクだったという。1つの会場に多くて6万人を超える観客が入った(収容上限の75%)。日本では仮に五輪を有観客で開催したとしても観客数は収容上限の50%以下かつ1万人以下となるだろうし、マスクは当然必須だ。

 日本では1日2千人ほどの感染者が出ている段階で五輪の無観客開催が決まったが、イギリスでは現在、万単位の感染者が出ている。しかし重症化は抑えられているとして、規制を緩めていく方針だ。

五輪もワクチン接種証明を要求するべき

 欧州選手権では、観客に陰性証明を求めていたりする。それでも感染者は発生しているが、五輪でも参考になるのではないか。

 日本ではスポーツ大会での感染例があまりない。これは、ワクチン無しでも各大会で感染対策を徹底できているためだろう。入場口や最寄り駅では混雑が予想されるが、感染者がマスクを外して他人の顔に向かってくしゃみしたり、マスクを外して長時間近くで発話し続けない限り感染は大きく広がらない。壁や手すりなどにウイルスが付着していても、手洗いと消毒を徹底すれば問題にはならない。

 日本はこれまで「3密回避」で感染者を少なく抑えてきた。ごくわずかなウイルスに触れるだけで感染するわけではなく、いくつかの条件が重なって初めてクラスターが発生する。屋外の五輪会場なら座席間隔を取れば十分だろうが、そのうえ応援自粛やマスク着用など求めれば万全に思える。

 しかし、それでも不安に思う人は当然いる。そこで、ワクチン接種を条件にしたらどうか。日本で接種が進められているワクチンは「発症予防効果」だけでなく「感染予防効果」も各国で示されている。ワクチンの接種証明を条件とすれば、会場内にウイルスを持ち込むリスクを減らせるうえ、会場内での感染拡大リスクも大きく減らせる。そのうえで観客数上限なども受ければ、世界一安全な有観客大会を実現できるだろう。

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