島根、聖火リレー直後から感染者数が減少へ 聖火リレー批判は何だったのか

 島根県で5月15・16日、聖火リレーが開催された。同県の丸山知事は一時、聖火リレーの中止を検討していたが、飲食店事業者の支援施策への影響を理由に中止を見送り。聖火リレーは大きな問題も生じず無事に完了した。

 聖火リレーについてはSNS上でコロナ感染拡大につながるとの批判が勃発。感染状況によって中止を判断した自治体も複数ある。

島根県の聖火リレー

 筆者も2日目の島根県の聖火リレーを某所の沿道から観ていた。沿道には人が多く集まっており、間隔が1mよりも近づく場面もあったが、おおむねソーシャルディスタンスが保たれていた。

 気になる場面はいくつかあった。スタッフ同士が密になっている場面があり、特にスポンサーの某飲料メーカーのスタッフが密集して大声を出しながら写真撮影を行っていたため不安を覚えた。また、かなりの大音量で音声が流されており、沿道の雰囲気との違和感を覚えた。

 スポンサー車両については、リレーのスタート地点である福島県において、これと同じと思われる車列を東京新聞が「かなりうるさい」と批判していたほか、県知事がスポンサー車両の不参加や音量制限を大会組織委員会に求めたところ、音量の制限については「検討可能だ」との回答を得た経緯がある。

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スポンサー車両。スタッフの誕生日を祝って記念撮影をしていたようで、大きな声を出しつつ密になる場面も見られた。
(筆者撮影。画像は加工しています)

 リレー走者がやってくると、その周りを多くのスタッフが囲んでいた。走者に合わせて沿道で並走する人がいたが、スタッフが「留まって」と呼び掛けていた。走者はマスクを着けていないが、マスクを着けたスタッフらとの間隔は維持されたままであり、マスクを着けていない走者同士のトーチキスでも間隔があけられていたため、屋外という常時換気されている環境であれば問題ないと思われる。

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ゴール地点に灯った聖火(筆者撮影)

 空は曇っており、今にも雨が降り出しそうな中、リレーは無事に執着地点まで繋がれた。そしてゴールして十数分ほど経った頃に土砂降りとなったため、絶妙なタイミングであったと驚かされた。沿道の参加者は「色々あったが、見れてよかった」「ゴール直後に降り出すとは」と話していた。

島根県では感染者が減少

 島根県では4月下旬、それまで感染者を1日あたり0~1人程度に抑えていたところ、感染者数が増えだし、10人を超える日も出てきた。そして感染者が連日、何人も出続ける中、聖火リレーの当日を迎えた。この期間、島根県の新たな感染者の多くが、変異ウイルス検査によって変異ウイルスの感染者だと確認されたか、そう推定される

 しかし、聖火リレーの直後の18日に1日あたりの感染者数で20人というピークに達して以降、感染者数は減少へと向かった。聖火リレーを原因として感染が大きく広がっている場合、リレー数日後から数週間後にかけて感染者数が増え続けるはずだ。また、この18日の20人についても、聖火リレーではなく飲食店のクラスターが複数確認されたことで数字が押し上げられたものだ。

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島根県の感染者数の推移
NHKのデータを用いて筆者作成。赤い線は週平均)

 結果として、島根県では聖火リレーが原因で感染者数が増えたとは考えられない。

 だがこれは結果論というより、当然予想された事であっただろう。スポンサーについては一定の不安があったものの、聖火リレー自体は屋外で実施されていたため3密環境は発生しえない。したがってクラスターは屋内施設と比べると発生しづらいと考えられ、聖火リレーで感染者が大きく広がるのであれば公共交通機関やスーパーマーケットを原因として拡大するリスクの方が大きくなるのではないか。

 もちろん、人口が多い自治体だと沿道の観客が増え、また観客整理に多くのスタッフが投入される事で接触機会が増える。屋外ならば絶対に感染が広がらない、というわけではないので、状況に応じた感染対策が求められる。しかし経済活動を頭ごなしに否定すれば、コロナ禍においても「ウィズコロナ」で地域経済を再開させるチャンスを奪う事になる。科学的・合理的な議論が必要だ。

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