何かできることがあれば何でもやりたい
僕は高校時代に空手道部だった。
強くない学校だったので、経験者のアドバンテージがある僕は、稽古も張り合いなく、なんとなく過ごしてしまった。それに生徒会を兼務していて、どっちつかずな掛け持ち状態であった。
同級生の小菅くんは、初心者で身体も小さく、おっとりとした性格が魅力的な男子で、一見、空手向きではなかったと思われる。
小菅くんは音楽が好きで、当時流行り出していたハイスタなどのメロコアを教えてくれて、たしかギターもやっていたんじゃないかな。
彼は日本代表でもあった先生を師事して、メキメキと上達。僕がライブハウスで遊んでいて上った柵から転落して腕を負傷し、昇段審査を受けられなかった間に、団体戦で全国大会まで行ってしまった。
最後の方の稽古では僕とどっちが上手かったのかなんて覚えてないが、高校の部活という短く濃厚な期間のなかで、センスやフィジカルを超えて、まともな実力があったのは小菅くんだった。間違いない。
小菅くんは「自分が家を継がなければいけないのは名前の漢字から決まっている」と言って、空手の修行を終え、今度は京都に修行に行ってしまった。
彼の家業は旅館だった。
僕は進学のため上京し、関東で就職した。もともと学校にあまり行ってなかったこともあって、同窓会に呼ばれることもなく、地元は縁遠くなってしまった。
だけど、小菅くんが実家を継いでがんばっている、というのをFacebookで見かけて、会いに行った。
彼の作る料理は、田舎ではお目にかかれないではと思うくらい丁寧で繊細で美味しかった。
先日、GWで帰省した時には立ち寄れなかったが、いつかまた伺いたかったし、帰省の度に我々家族の会話にも彼のお店の話は出ていた。
今朝、地元の兄からLINEで連絡があった。
小菅くんちが燃えてしまった。
messengerで連絡を入れてみた。無事を祈る。
何かできることがあれば何でもやりたい。
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/224547
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