楕円銀河M87のブラックホールは、自転していることが判明!

 10月2日の朝日新聞デジタルに、「謎だったブラックホールの自転の存在、23年分の観測でつかんだ証拠」という記事が出ていますが、有料記事で、かつ読める部分が短いので、ネタ元であろう国立天文台にホームページを見ると、「国立天文台の最新ニュース」9月28日付けで、「歳差運動するM87ジェットの噴出口―巨大ブラックホールの「自転」を示す新たな証拠―」というタイトルの記事が出ていました(より詳細な内容はこちら)。

 多くの銀河の中心には巨大ブラックホールが存在し、「なかには、周りのガス円盤から物質が降り積もって銀河の中心核が明るく輝いたり、ジェットを噴出したりする活動的な銀河も多く」、楕円銀河M87の中心のブラックホールはその代表格です。「アインシュタインの一般相対性理論によると、自転と質量はブラックホールの基本的性質や周囲の時空構造を決める重要な要素とされ、理論的には自転していると考えられて」きましたが、「ブラックホールが自転しているかどうかについては観測から見極めることが難しく、自転のはっきりした証拠は得られていませんでした」。

 それを今回、国立天文台の研究者を中心とした多数の研究機関の研究者からなる国際研究チームが、「過去20年以上にわたって得られた170枚にも及ぶM87のジェットの電波画像を分析し」た結果、「ジェットが噴出する向きが変化していることはこれまでにも知られていましたが」、そのジェットの噴出方向が約11年周期で変化していることが初めて分かり、「さらに観測結果を理論シミュレーションと比較した結果、巨大ブラックホールの自転が引き起こすジェットの歳差運動(首振り運動)に起因する現象であることが明らかになりました。M87の巨大ブラックホールが自転していることを示すとともに、強力なジェットの発生にブラックホールの自転が深く関与していることを裏付ける」ことまでが明らかになりました。

 「「短期的な研究成果の創出が求められる昨今にあって、今回の成果は、長年の地道なデータの積み重ねが大きな発見につながることを示す好例と言えます」」という研究チームの中心を務める国立天文台水沢VLBI観測所の秦 和弘助教のコメントは、学問に向き合う際の本来の姿勢を思い起こさせてくれます。

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