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朝日新聞の連載「現場へ! 記録を残す」は、記録にかかわる全ての人にとって、必読の連載だと思います。

 1月22日から26日の5日間にかけて連載された「現場へ! 記録を残す」は、特に歴史やアーカイブズに関する分野の人にとって、非常に良い連載だと思います。

 第1回目の22日は、「街の変遷を「定点撮影」40年 それは手書きマニュアルから始まった」というタイトルで、東京都小平市の「定点撮影事業」の話です。
 1981年から始まった「定点撮影事業」の定点撮影写真は、「こだいらデジタルアーカイブ」で見ることができますが、観測地点は218地点(地点名はこちら)もあり、市内がどのように変化してきたかを、身近な土地の写真から知ることができます。

  第2回目の23日は、「迫るデッドライン 「私たち」の映像発掘、記憶が途絶えてしまう前に」というタイトルで、「ビデオテープやカセットテープなどの磁気テープは、25年までにデジタルデータ化されなければ大半が永遠に失われかねない」という問題を提起したオーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ(NFSA)の「Deadline 2025: Collections at Risk(危機に瀕したコレクション)」により、身近な映像を発掘し、将来に残していこうという取り組みが行われているというものです。
 「Deadline 2025」は、「フィルムからデジタルへの移行期にあたる1970年代から2000年代にかけて普及した磁気テープは、再生機器の保守サービスが終了し、やがて使えなくなってしまうという」話で、そのデッドラインが2025年だということなのです(これに関する詳細は、記事にも出ている国立映画アーカイブの冨田美香・主任研究員が書かれた「マグネティック・テープ・アラート&デッドライン2025」を参考にしてください)。

 第3回目の24日は、「ウェブページを「魚拓」するしか? デジタル時代の記録、保存方法は」というタイトルで、「ウェブ魚拓」という、ウェブページを引用するためのサービスの話です。
 「ウェブを保存しないということ、イコール、日本の歴史の記録が失われるということ」と国立国会図書館の担当者がいうほど、爆発的に増え続けるデジタルの情報ですが、ウェブの記載は簡単に削除したり上書きしたりできてしまうため、このウェブ魚拓では、「保存したいウェブページのURLを入力すると、サーバーを通じ情報を取得して改ざんできない方法で保存」されるので、「「その内容が」「そのURLで」「その日時に」公開されていたことの証拠として使うことができます」。
 このサービスは、かなり便利で個人的には良いと思います。

 第4回目の25日は、「レトロなビルに残されていた47冊の手記 永遠の図書室ができるまで」というタイトルで、元陸軍大尉の方が残した3千冊に及ぶ蔵書のほか、士官学校時代の教科書や、47冊の手記や、「太平洋戦争にまつわる戦記物や小説、さらには軍歌集や水木しげるの漫画、雑誌や写真集」を中心と所蔵している、千葉県館山市にある「永遠の図書室」の話です。
 この「永遠の図書室」は、「後世に語り継いでいく」をモットーに、「歴史を守り、歴史に触れる場所」として、当時の資料や戦争関連の図書などの公開を行っており、また、当時実際に使われていた品々の収集、解析、保管活動を行っています。「民営軍事関連図書室」という非常に珍しいかつ貴重な図書室です。

 第5回目の26日は、「ウィキ型で「記憶を記録へ」刻む街 きっかけは図書館員のもどかしさ」というタイトルで、 「今昔写語」という古い写真と、同じ場所の今の写真を見比べられるサイトと、「地域情報は住民の中にある」をコンセプトに、「住民参加によるウィキ型地域情報データベース」の模索から始まった「北摂アーカイブス」の話です。
 「記録って、残そうと思わないとなかなか残せないものだと思うんです」という「今昔写語」の運営会社の社長さんの言葉は、まさにその通りです。だからこそ、今回のような「記録を残す」をテーマとした連載は、非常に重要なメッセージだと思いますので、できるだけ多くの方に読んでもらいたい内容です。


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