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運動音痴が40歳で森林整備にハマった理由 ~森林ボランティアに参加しよう!~

ご担当者様
初めてご連絡します。
森林整備に興味があり、次回の定例活動に体験参加させていただきたく、メールを差し上げました。
……

今から10年前、私は意を決してこのようなメールを送信した。

当時私は40歳目前で妻と二人暮らし。
妻と共通の趣味は音楽鑑賞と居酒屋めぐり。それから山登り。
大阪に住んでいるので、月に一度は中之島の公会堂やフェスティバルホールでクラシックを鑑賞したあと居酒屋で一杯やって帰宅する。あるいは、大阪近郊の山々に登って山頂でプシュっと乾杯する。

会社勤めの傍らで週末はこんなふうに妻と二人で楽しい暮らしを送っていた。(単なる酒飲みじゃないか!)

とは言え、週末いつもふたり一緒に過ごしているわけではなかった。共通ではない趣味もあるのだ。

私は中島みゆきが好きで、家でゴロゴロしている時やドライブの時にはいつも聴いている。
妻の趣味は「テニス」だ。
このテニスがいけない! 私は運動が苦手だ。
小学生の頃、スポーツテストのボール投げでクラスの女子に負けたし、サッカーでゴールキーパーをさせられた時には、私が思いっきり蹴った(つもりの)ゴールキックが目の前にいた相手めがけてコロコロと転がった。
それに体は硬いし、腰痛持ちだ。一応は何度か妻と一緒にテニスをしたけれど、すぐに卒業した。
そういったわけで、週末はどうしても家で一人になる機会が多くなってしまった。

ひとり家で中島みゆきさんの曲を聴いたりテレビを見たりして過ごすのももちろん楽しいのだが、スナック菓子のおかげてお腹がドラえもんみたいになってしまった。

「やばい! このままでは、やばい!」

どうしたものかと頭を悩ませ続けていた。
そんな中とある週末、久しぶりに妻と一緒に大阪高槻市の山歩きをすることになった。

「やっぱり山はいいねー」

などと楽しく会話しながら歩いていると、

「只今、ボランティア活動中。倒木注意!」

と書かれたボードを見つけた。

ほどなくして、

ブルン ブルン ブルン ブルルルルルルルルルルルルルルーー!!

とチェンソーの轟音が響いてきた。

バキバキッ バァーーーン!! ガサガサカサカサ……

次は木が倒れる音だ。

道沿いからも、木々の合間に作業をしている人たちの姿が見えた。
チェンソーを持つ人以外にも、倒した木の枝をノコギリで切って一か所に積み上げている人もいた。草刈りをしている人の姿も見えた。みんな和気あいあい、生き生きとしている。

「ワオ! なんて楽しそうなんだ!!」
正直、ワクワクした。

子供の頃は、近くの雑木林へ行って早朝友達とカブトムシやクワガタを取りに行ったり、公園で蝶を追いかけまわしたりしたものだ。

虫たちには迷惑な話だが、林の中や草むらの中を散策したり走り回ったりするのはとても気持ちが良かった。

そんな記憶があったので昔から山歩きは好きだったし、自然の中で出来る仕事ができたらいいなーという漠然とした夢を持っていた時期もあった。
けれど、運動神経や体力に自信がない私には、森林組合などの山仕事を生業とするのは夢のまた夢、野球で言えばメジャーリーガーになるようなものだった。

しかし、今、目の前で森林整備を行っているボランティアの人たちを見たとき、

「もしかしたら、ボランティアだったら、私にでも続けられるかもしれない」

素直にそう思った。
一人ぼっちの週末を楽しく過ごせるようになるかもしれないし、少なくとも美容と健康にいいのは間違いなさそうだ!

「よし! 試しに森林ボランティアに参加してみよう!」

そんなわけで、私は冒頭のメールを近隣の町、大阪府三島郡島本町の森林ボランティア団体に送ったのだ。

返事はすぐに、メールを送った次の日に返ってきた。

体験参加の申し込みありがとうございます。
次の日曜日、朝9時に阪急水無瀬駅前でお待ちしております。
飲み物とお弁当はご用意ください。
また、軍手と動きやすい長袖長ズボンを着用し、軽登山靴など底の丈夫な靴をご用意ください。
ヘルメットとノコギリはお貸しいたします。
……

意を決して送ったメールなので、迅速かつ丁寧な返信メールはとても嬉しかった。

そして、実際に活動に初めて参加した日のことは今でも忘れない。

全くの森整備の初心者だった私は、竹林へ行った。そこで、竹の安全な伐り倒し方を丁寧に教わった。

教えられたとおりに、まずは倒れる方向をコントロールするためのロープを竹の上部にかけてサポート役の人に渡す。その後、周囲の安全確認をしてから竹をノコギリで伐っていった。

ギーコギーコ。ギコギコギコギコ。メリメリッ。バリバリバリッ。

という感じで、人生初めて竹を伐り倒した。

見上げるとそこには、周囲の竹の葉っぱに囲まれた青い空と白い雲が、まるで万華鏡のようにキラキラと輝いて見えた。

……カ・イ・カ・ン!

その日の作業が終わった後に改めて竹林を見渡すと、そこには美しい竹林が、テレビの旅番組で見たことがある京都嵐山の竹林のような美しい竹林が広がっていたのだ!

こうなるともうやめられなかった。

もっと上手になりたい。効率よく作業したい。チェンソーや刈払機も使えるようになりたいし、ちょっと冒険して急な斜面での作業もしてみたい。

などなど、ふつふつと沸き起こる欲望に、自分でも驚くばかりだった……。


こんな風にして、私は10年近く森を整備する森林ボランティア活動を続けてきたのだが、そこで出会った仲間たちは実に様々な経歴を持っていた。自動車メーカーで工場を作るために世界中を駆け巡ってバリバリ働いてきた人。公務員で森林管理に携わっていた人。電力会社で鉄塔を建てていた人。大工さん。中には、若いころに山で炭焼きをやっていた80代の仙人みたいな人もいた。
このように職業や経験は様々。そういう私は医薬品の研究開発をしている。
正直、仕事での経験や知識は森林整備にはまったく役には立たない。しかし、ボランティア活動は間違いなく私の仕事に素晴らしく良い影響を及ぼしている。なぜなら、森林ボランティアに参加して仲間と和気あいあい楽しく作業をすることは、大きな刺激になるとともに心身がリフレッシュできるからだ!
実は、一週間の中で私が最も元気になるのは、森林ボランティアの活動の後の日曜日の夕方なのだ!! 本当に不思議なのだが、ボランティアを始めて10年たった今でもそれは変わらない。

一日森の中で体を動かすというのは、こうも心身をリフレッシュしてくれるのか! と大変驚いている。

そうは言っても始めた当初は、体力面の心配はあった。
しかし、それは全く問題にはならなかった。難しい作業、しんどい力仕事の時には、仲間が自然と集まってきて私を助けてくれる。反対に私がヘルプに行くこともある。

それから、これはここだけの話にしてほしいのだが、春には筍、そして季節の変わり目には原木シイタケが収穫できる。これらは、活動に参加した仲間たちで分け合うのだ。そして、たまーに鹿肉バーベキューをしたり、作業小屋に集まって焼き芋を焼いて楽しんだりすることもある。

とにもかくにも楽しいことがいっぱい! 無理なく出来るときに参加して、年齢も職業も全く違う仲間たちと力を合わせて取り組む。その結果として美しい里山が次の世代へと受け継がれていく……。

私みたいな運動音痴な腰痛もちでも続けられるのだから、少しでも興味を持ったあなたなら全く心配ない!

私たちは、皆さんと一緒に汗を流して、ひとりでも多くの人と森林整備の楽しさと達成感を味わいたい! といつも願っている。だから、未経験の森林初心者が、森林ボランティアに興味を持って体験参加に来てくれるのは心の底からうれしい!!!

一度、お近くの森林ボランティア団体をネットで検索してみてほしい。
一緒に森林整備の楽しさを一緒に体験してみよう!!

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