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白濱裕太(元広島)ドラフト答え合わせインタビュー全文公開!【前編】狙いが外れても割り切れたから會澤翼はレギュラーになれた

絶賛発売中の『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』では、NPBの現役から離れた6名のインタビューを行いました。
嶋基宏(元楽天、ヤクルト)、坂口智隆(元近鉄、オリックス、ヤクルト)、内海哲也(元巨人、西武)
白濱裕太(元広島)、寺島成輝(元ヤクルト)、吉持亮汰(元楽天)
アマチュア時代から取り上げてきたからこそできる、内容の濃い、プロ生活を振り返る「ドラフト答え合わせインタビュー」ができました。

noteでは本誌4ページに収まりきらなかった部分も含めた全文を前編・後編に分けて、公開しちゃいます!
【後編はここをクリックしてください】

●目指していたのはオンリーワン
 
――19年間の現役生活、お疲れさまでした。前身誌「野球小僧」(白夜書房)ではドラフト候補だった広陵高時代の白濱さんも頻繁に掲載させていただきました。
白濱 そうでしたね。取材にも来てくださりましたよね、ドラフトの前に。覚えてます。
――高校3年生の白濱さんにインタビューしたのが昨日のことのようです。今日は当時、掲載した記事コピーを持参しました
白濱 うわー、懐かしい……。これは当時読んでますね。20年前ってことですか。
――「今年の高校生捕手では総合力ナンバーワン」「弾むようなフットワーク。キャッチング、リードの両面で超高校級」「高校通算28本塁打。スター性を秘めた強肩強打の持ち主」といった評価が並んでいます。インタビューの最後に「縁があってプロに入れたら、いままでにいなかったような選手になりたいです。周りと同じようなのって、なんかイヤなんです」と答えていたのが印象的でした。
白濱 目標にしてもらえるような、オンリーワンの捕手になりたいと思ってました。取材で「目標とする選手は?」と質問されても「特にいないです」と答えていたと思います。
――2003年秋のドラフトで広島から1位指名を受け、プロ入り。入団の際に描いた成功イメージ、目標はどのようなものだったのでしょうか。
白濱 12球団で12人しかいない、チームの1番手捕手になることですね。現役の間に最低でも数年、できれば10年以上レギュラーを張れる捕手になりたいなと。
あと「38歳まで現役を続けたいな」と思いました。「なんかいけそうな気がするな」とも。なんの根拠もなければ、38歳という年齢に深い意味もないんですけど。
――そうだったんですか。
白濱 これはいま、初めて言いました。
――現役最後のシーズンが37歳。ほぼ当たっていますよ。
白濱 あと1年でしたね。
 
●自分は評価が難しいタイプ
 
――1軍通算出場数は90試合。うちスタメンマスクは55試合。通算安打は23本。通算打率は1割5分3厘という成績でした。
白濱 僕しかいないですよね、多分。これだけ1軍の試合に出てなくて19年も現役を続けた選手は。
――そういう意味では「いままでにいなかったオンリーワンの選手になりたい」という目標は達成しているのかもしれませんが……。
白濱 達成したかもしれませんね。ちょっと角度は違いますけど(笑)。
――「こんなはずじゃなかった」という思いが強いですか?
白濱 その思いが強いですかね。プロ野球選手はやっぱり1軍でプレーしてナンボなので。その一方で19年も現役をやってしまっている。プロ人生を評価するのが非常に難しい選手だな、と自分で思います。僕、言いたいことは言うタイプですし、ゴマとかもすれないので……。この成績でなぜ19年もプレーできたのかは、自分でもよくわからない。思い当たる節がゼロなんです。
――ケガは少なかったですよね?
白濱 プロ4年目に膝の半月板を損傷して手術をしましたが、大きなケガはそれくらいです。でも健康体であっても成績が伴わなければ契約してもらえない世界ですからね……。
――レギュラー獲得のために足りなかった要素はなんだったと思われますか。
白濱 バッティングですね。15年あたりからは「あとはバッティングだ!」と言われ続けましたから。
 
●読む力を打撃に生かせなかった
 
――キャッチャーは相手バッテリーの配球を読むのが巧く、それを自分の撃にも生かすという話をよく聞きますが、白濱さんも配球を読むのは得意だったのでしょうか。
白濱 そうですね。ベンチから試合を見ている時に、相手バッテリーが何を次に投げるのかを当てる時の正解率は高かったですね。けっこう当たります。狙い球を相談されてアドバイスを送ることもけっこうありましたね。
――その読む力は白濱さん自身の打撃にも生かしていたのでしょうか。
白濱 いや、生かせてなかったですね……。いざ自分が打席に立つと、ストレートの甘い球を見逃したくない、という気持ちが強く働いてしまうんです。
――次は高い確率で変化球が来るとわかっていても、変化球一本に絞っていけない?
白濱 そうなんです。変化球を狙っている時に、ストレートでポンっとストライクを取られるのがすごく嫌なんです。その球が甘ければ甘いほど嫌で。そういう形でストライクを相手にあげる余裕もなくて。
――狙い球がこなかったら仕方ないか、という割り切りの中での大胆なヤマ張りはしなかった?
白濱 しなかったですね。割り切れないんですよね。
――それは性格なのか、考え方なのか。
白濱 まぁ、性格なんでしょうね。
――割り切ったほうがトータルでは結果は出るかもしれないという感覚はあったのでしょうか。
白濱 あったけども、嫌だったんですよね。狙い球じゃない甘い球を見逃すのが。
――嫌なものは嫌ですものね(苦笑)
白濱 そうですね。調子がいい時は狙い球以外の球が来ても咄嗟の反応でヒットが打てることもありますが、実戦で打席に立つ機会も少ないですし、そんないい状態はめったになかった。
――打席に立つ機会が少ない分、巡ってきた打席は大事に打ちたいという気持ちも働いたのでしょうか。
白濱 働いていたと思います。だから大胆に狙い球を絞れない。「狙い球が外れたら仕方ない! ごめんなさい!」ができない。どの球を投げられても甘い球を見逃さずに済むよう、複数の球種を頭に入れた待ち方になってしまう。
――いま振り返って、必要だったのは割り切りの世界?
白濱 そうですね。會澤(翼)はそれができるんです。
――割り切れる。
白濱 「このピッチャーはこのカウントでこの球種を投げる可能性が高い」というデータが出ていたとしたら、會澤はその球だけを狙っていける。「それ以外の球は振りません、ごめんなさい」という感じで割り切れる。でも、その球が来た時はきちんと仕留めてアジャストする。會澤はそれができるんです。
――レギュラーとして毎試合4打席がもらえる立場が手に入っていれば、待ち方も変わっていたかもしれない?
白濱 そうですね。もう少し割り切った待ち方ができたのかもしれませんね。
 
●最後まで目指したレギュラーの座
 
――プロ12年目の15年頃から「あとはバッティングだ!」と言われ続けていた、ということは、裏を返せば守備に関してはレギュラークラスとの評価を得ていたことになりますよね。15年以降の1軍出場数は11試合にとどまったものの、アクシデントが発生した際のバックアップ捕手として絶大なる信頼を得ていたイメージがあります。
白濱 15年頃から、2軍に落ちる際には「なにかあった時には頼むな」と言われてました。〈保険〉としては認められていたのかもしれないです。
――ある時期から「自分はバックアップ捕手として生きていくんだ。そのための最善の準備をするんだ」と割り切っていたわけではないですよね?
白濱 そんな気持ちになったことは一度もないです。「レギュラーを奪うんだ、スタメンで試合に出るんだ!」という気持ちは最後の最後まで持っていました。2軍の試合にも1軍の試合に出ている時と同じ気持ちで出ていましたし、最終回、満塁の大ピンチのようなプレッシャーのかかる状況を常にイメージしていた。1軍のゲームはすべて見ていましたし、相手チームの打者もチェックしていました。でも、それは保険でなく、レギュラーを目指す上での当然のルーティンだと思ってやっていたことなので。
――レギュラーを目指す姿勢を最後まで保てたからこそ、バックアップ捕手としてチームの有事にも対応できた。
白濱 僕はそう思っています。契約更改の席でフロントの方に「守備面は評価している。すごく信頼している。来年も1軍の捕手陣になにかあった時は頼む」と言われた時に「すごくありがたい言葉ですけど、僕は保険だと思って練習してないです。レギュラーとしてスタメンで試合に出ようと思って練習しています」と言ったことがあるんです。
スタメンを獲るつもりでやっているからこそ、保険を担えるだけのキャパが自分の中にできあがる。保険を見据えた練習だけをしていたらその保険の役割すらも果たせない、という意味合いのことを言いたくて。フロントの方には「おおお、そうか……」みたいな反応をさせてしまいましたが(苦笑)。
――最後の3シーズン、1軍出場は6試合にとどまりましたが、捕手陣の負傷退場やコロナの集団感染で苦しむチームのピンチを見事に救いましたね。
白濱 20年の途中出場は特に印象深いですね。ファウルチップが直撃した會澤に代わって9回から急遽出場したのですが、緊迫した展開ながらすんなりと試合に入っていけましたし、チームも勝った。試合後、佐々岡(真司)監督から「お前がおってくれてほんとよかったわ」と言われた時に「常に万全の準備をしてきてよかった」と思いました。その言葉がほしくてやっていたわけではないのですが、気持ちの上で救われた部分はありましたね。やってきてよかったなぁ、と。

白濱裕太プロフィール

『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ1998-2022〈増補改定・完全保存版〉』のインタビュー全文公開はいかがだったでしょうか?
本からnoteにお越しいただいた方は、いままで読むことができなかった、未掲載部分を読み、いかがだったでしょうか?
まだ誌面を未読の方、このような深く、独占情報満載のインタビューがあと5本掲載されている『別冊野球太郎ドラフト答え合わせ』をどうぞよろしくお願いいたします!