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2024年ドラフト候補の打者が際立った 侍ジャパン大学代表候補強化合宿レポート【Vol.2】

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過去最高レベルの呼び声も高い投手陣を紹介した侍ジャパン大学代表候補強化合宿レポート【Vol.1】に続く【Vol.2】は、現2年生、つまり2024年ドラフト候補が際立った打棒を披露した「野手編」をお届けする。

異例の「要望」に対応できた3年生たち

「盗塁や走塁面で消極的だったので、午前の紅白戦が終わった時点で『もっと積極的に行きなさい』とコーチから選手たちに言ってもらいました」

例年、静かに選手の適性を見極める代表候補選手強化合宿としては、異例ともいえる侍ジャパン大学代表・大久保哲也監督からの「要望」だった。

実際に2日目・午前の紅白戦を終えた13イニングの時点で得点は両軍合わせて8得点。盗塁は野間翔太郎(近畿大1年)の1個のみ。【Vol.1】にも記した通り、今合宿では投手陣の出来が素晴らしかったとはいえ、「冬を越えてどうなるか、ですね」と話すプロのスカウトの言葉には明らかに「もっとできるでしょ?」という渇望が含まれていた。

ただし、その中でも光る野手はいた。その筆頭格は松浦佑星(日本体育大3年)。最終日の50m走でも2位となる5秒95を計測した韋駄天は、午前中の第二打席では参加選手中唯一のセーフティーバントを試み失策を引き出し、2日目午後の紅白戦でも中前安打で果敢に二塁を陥れるなど、自分から仕掛ける姿勢を見せた。紅白戦3試合すべてに安打を放っての6打数3安打以上の好印象を残した。

松浦佑星(日本体育大3年)

先述の野間も50m6秒27と、タイム自体は抜群に速いわけではないものの、盗塁技術の高さで2盗塁。6打席4三振と打撃面では大きな課題を残したが、2025年ドラフトまでその成長を追いかけたい素材である。

一日の長があった「ハーレムベースボールウィーク」組

今回の合宿では、「日替わりキャプテン制」がはじめて採用された。初日は辻本倫太郎(仙台大3年)、2日目は上田希由翔(明治大3年)、そして最終日は進藤勇也(上武大3年)。いずれも2022年7月に開催された「第30回 ハーレムベースボールウィーク2022」に参加した面々である。

プレーでも彼らには一日の長があった。捕手の進藤は常時1.9秒台の二塁送球と本人も「収穫があった」と振り返った大胆かつ細心なリードが光り、上田は最終日のフリーバッティングで柵越えを放つなど長打力をアピール。「もっと打撃をレベルアップさせたい」と6打数1安打の紅白戦結果に反省しきりの辻本も、守備の堅実性は流石の域だった。

上田希由翔(明治大3年)
進藤勇也(上武大3年)

加えて日替わりキャプテンには指名されなかった「ハーレムベースボールウィーク組」も好パフォーマンスを披露。廣瀬隆大(慶應義塾大3年)は「まったく見えなかったので、ストレート一本に合わせた」と、冨士隼斗(平成国際大3年)の151キロストレートを見事に左中間スタンドに運べば、宗山塁(明治大2年)も今秋リーグ戦4本塁打の対応力を見せつける右翼線二塁打含む6打数2安打。宗山には今後2年に渡って学生球界をリードするような存在感のある攻守に期待したい。

廣瀬隆大(慶應義塾大3年)
宗山塁(明治大2年)

最もインパクトを残したのは「2年生スラッガー」

その他の野手にも触れていこう。

捕手では友田佑卓(日本大3年)はスローイングの安定感が高まれば、コンパクトなスイングができるだけに面白い存在。宮崎恭輔(慶應義塾大3年)はスローイング時に後ろが大きくなる癖を修正したい。明らかにコンディションが悪かった有馬諒(関西大3年)は完調な状態でもう一度見たいところ。また、打撃面で出色の出来だった印出太一(早稲田大2年)は常時1秒9台の二塁送球タイムが縮まれば、2024年のドラフト候補に当然入ってくる。

印出太一(早稲田大2年)

他の内野手で多かったのは「打撃重視型」。

柳舘憲吾(國学院大2年)今泉颯太(法政大3年)はやや精彩を欠いたものの、1日目の紅白戦において決勝適時打を放った生島光貴(筑波大3年)、東京六大学リーグ屈指の二塁手である熊田任洋(早稲田大3年)。そして、川久保瞭太(同志社大2年)下山昂大(中央学院大3年)は、力強いスイングが印象に残った。いずれも50m走では6秒4秒~6秒5台と脚力は目を見張るほどではないだけに、まずはコンタクト率の高さでアピールしたい。
 
先述した野間も含め、外野手は多士済々。中島大輔(青山学院大3年)が50m走で5秒98(チーム3位)の俊足を披露すれば、桃谷惟吹(立命館大3年)がフリーバッティングで柵越え。井上幹太(金沢学院大2年)は2日目午後の紅白戦で2安打を放ち、北陸大学リーグ三冠王の片りんを示した。

中島大輔(青山学院大3年)

この秋、5本塁打で関西六大学リーグ新記録をマークした打棒のまま、紅白戦でも6打数4安打と暴れたのが渡部聖弥(大阪商業大2年)だ。この合宿にMVPがあれば、間違いなく選ばれたであろう活躍だった。

広陵高時代から定評のあった1球目から仕留めにいく積極性に加え、高校時代はやや外回りの傾向があったスインク軌道が、「昨年の冬からポイントを近くして振るようにした」ことで格段に良化した。「高校時代から10キロ近く増えた」と語る体重86キロでも50m6秒15のタイム叩き出す脚力を考慮すると、現時点ですでに「大学ナンバーワン」と言っても過言ではない。渡部にはぜひ2024年の「ドラフト1位競合」を目指し、さらなる高みを目指してほしい。

渡部聖弥(大阪商業大2年)

今回取り上げなかった3名の野手については、【Vol.3】で取り上げるので楽しみにお待ちください!!

取材・文=寺下友徳