見出し画像

亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏

亜鉛華軟膏と亜鉛華軟膏の共通点

亜鉛華軟膏と亜鉛化単軟膏の共通点は酸化亜鉛が含まれている事です。
酸化亜鉛の特徴は「収れん作用」です。

そもそも「収れん作用」って?

この場合の収れん作用は「被膜保護」と考えてください。
被膜を作って患部を保護する事です。
ちなみにタンニン酸アルブミンは内服する事で、荒れた腸を収れんする事、すなわち被膜保護する事で効果を示します。

ちなみに化粧でよく使われる収れん作用は「ひきしめる」と意味合いで使われます。これは血管や組織を縮める作用からきています。

少し話題とはそれますが「収れん味」という表現があります。これは酸味でもなく、渋みでもない口の中がギュッと縮められるような味を示します。
タンニンが収れん味を代表とされます。
ワインの渋みを収れん味と表現する事もあります。

今回の収れん作用は被膜保護と認識しておいてください。

亜鉛華「単」軟膏

亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏のちがいは「単」だけですが、この違いは単に「単」だけの違いではありません。

正しくは、
白色軟膏に酸化亜鉛を混ぜたものが亜鉛華軟膏、
単軟膏に酸化亜鉛を混ぜたものが亜鉛華軟膏
です。

白色軟膏の成分は
サラシミツロウ50g,ソルビタンセスキオレイン酸エステル(乳化剤)20g,白色ワセリン適量,全量1,000g

一方で単軟膏は
ミツロウ330g,植物油(ダイズ油,ナタネ油等)適量,全量1,000g

と、なってます。
成分の違いをみると動物性と植物性の油脂の違いもありますが乳化剤(界面活性剤)にあります。

ソルビタンセスキオレイン酸エステルがポイント

この乳化剤の有無がポイントです。
この乳化剤が入っている事で白色軟膏には吸水性があるとされます。
その為、亜鉛華軟膏は被膜保護をしながら浸出液などを吸い取り、患部を乾かす作用があります。
逆に亜鉛華単軟膏のは吸水せずに被膜保護を目的とします。むしろ水分は弾く成分が強くなっています。

ちなみに酸化亜鉛の濃度は?

亜鉛華単軟膏の多くは酸化亜鉛の濃度が10%、亜鉛華軟膏は20%です。
例外としてサトウザルベ20%が存在します。
サトウザルベは亜鉛華単軟膏ですが酸化亜鉛を20%を含むサトウザルベ20%があります(2023年3月末でサトウザルベは発売中止となる予定です。(2023年2月5日現在))

用途の違いは?

亜鉛華軟膏の方が酸化亜鉛の濃度が高く被膜保護以外に防腐、消炎作用が強いとされます。また、乳化剤の存在により患部を乾かす作用を有しますので、浸出液のある傷に対しては亜鉛華軟膏の方が良いとされます。

それに対し、患部が回復し浸出液も少なくなった場合、患部を乾燥させすぎるのも良くありません。その場合、油脂のみの単軟膏の方が皮膚表面の水分保持もでき、酸化亜鉛の濃度が10%と低くした方が長期使用に向いているとされています。

ややこしいですね。

この場合、唇に使う場合を推定していただくと良いかと思います。
冬場の口唇炎がひどい場合、寝る前に亜鉛華単軟膏を塗る場合があります(唇は白くなるので寝る前の方が見た目上でも良いです。)。
冬場の口唇炎は乾燥が原因ですので、サトウザルベや亜鉛華単軟膏の方が患部を乾燥させないで保護する事ができます。

その他、亜鉛華軟膏にアズノール軟膏を混ぜ合わせる処方は見たことがあるでしょうか。?
これは亜鉛華軟膏で乾かし過ぎないためにアズノールを加えて水分の喪失を減らす目的で処方されることがあります。
亜鉛華単軟膏に近づけた製剤になりますが、個人的には薄く青みがかったこの軟膏は嫌いではありません。亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏だけでは見ただけでは区別がつきませんし。

ボチシートは亜鉛華軟膏?単軟膏?

ボチシートは亜鉛華軟膏をシートの上にびっしり分厚く乗っている製剤です。
患部を保護しながら浸出液を吸収するのが目的ですので、酸化亜鉛の濃度は20%と高いですし(保護)、白色軟膏を基剤とした亜鉛華軟膏で患部の乾かします(浸出液の吸収)。
これによりボチシートは急性期の短期間使用を目的とした製剤ととらえる事ができます。

亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏・・・非常に古い薬ですが、こんなことを踏まえて調剤や服薬指導を意識してみてはいかかでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?