奈良・薬膳と薬草ツアーレポート~薬草料理編
2022年11月6日、11月7日の二日間に渡り、奈良県宇陀市へ薬膳・薬草研修ツアーに参加して来ました。
ツアー先の宇陀市は奈良市の南東部にあり、611年に推古天皇が日本で初の薬狩り(薬草の収集)が行われたことが日本書紀に記載されている、薬草の里なのです。
たくさんのプログラムをご用意いただきましたが、ここでは、主に、食と漢方薬に関することを中心に二回に分けて記します。
今日はその1として食に関するレポートです。
日本書紀に出て来る場所が宇陀
プログラムは、柿本人麻呂が夜明け前に「ひむがしの野に かぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月かたぶきぬ」の歌を詠んだとされるかぎろひの丘からスタート。
この方角に空が真っ赤になり山が影が黒く浮かび上がる日の出の「かぎろひ」を見て歌ったものだとのこと。同じ場所に立つと感動します。
スタッフの方が、こんな風に見えるのは冬で寒い日、雪も降らず晴れの日にしか見えないのだと説明してくださいました。
その後は、薬草料理をいただきに大願寺へ。
薬の歴史は寺社から
薬が発祥する前は、病魔から身を守るために神々への祈りに頼っていたのですが、次第に大陸の文化や学問が伝来するようになり、自然の中にある草、木の根、木の皮などを薬にするようになりました。
その象徴がが薬狩り。
飛鳥時代になると、薬草や木を栽培するようになり、朝廷や僧侶が調整して民衆に施すようになります。
この辺りはヨーロッパでは修道院でハーブやハーブを蒸留したエッセンシャルオイルやアロマ水を使って治療をしたのと同様ですね。
大願寺でいただいた薬草料理は、彩りよく繊細なお味で動物性のものは一つも使われていないのにボリューム満点。
普段お伝えしている薬膳の観点とはまた違い、ただただ美味しくいただきました。
前菜なのに、いただくのがもったいなくて手が付けられなかったのがこちらです。
真ん中の白いのは、マコモダケの酢の物。涼性で下半身の浮腫み取りに良いとされる最近人気の野菜です。たけのこのような触感が美味しい。
デトックス作用のあるものは苦味で涼性・寒性が多いのですが、これは甘味。ただし、冷やして通便効果などもあるためお腹が冷えて下しやすい胃腸虚弱タイプは注意が必要です。
これくらいの量なら特に問題はないでしょう。お酢で味付けして冷やす性質をなかったことにしてありますね。
広がりを感じた金針菜の調理法
こちらの小鉢は金針菜とごぼうの煮物です。
金針菜は、本カンゾウというユリ科の花のつぼみを乾燥させたもの。
別名「忘憂草(ぼうゆうそう)」と呼ばれ、気持ちの落ち込みや憂鬱感を解消すると言われるのは、金針菜にはほうれん草の18倍とも20倍とも言われる鉄分が含まれるとされます。
されますと言うのは、ほうれん草の鉄分は食品成分表に記載されていますが、金針菜は記載が見当たらないのです。
どのサイトを見ても「20倍の鉄分を含むと言われています。」と書かれているのです。誰か本当かどうか調べた人はいないのか(笑)
鉄分と言えば酸素を運搬する働きがあるので、不足すると頭痛・動悸・倦怠感などの症状が現れます。いわゆる貧血ですね。
憂鬱な気分を忘れさせてよく眠れるようになるということで「忘憂草」なのであれば、鉄を豊富に含んでいることは確かでしょう。ほうれん草の何倍なのかは今のところはっきりわかりませんが。
なぜなら、中医学では血不足の「血虚」の症状の一つが夜眠れないとか、メンタルが安定しなくて憂鬱になったりイライラしたりと言うのがあるからです。
小鉢のお料理は、ごぼうと金針菜を煮たものでした。金針菜を煮物にするのはあまりしたことがなく、スープやみそ汁に入れていました。
大量の金針菜を水戻ししなければならないため、その時出る戻し汁にもエキスが出るのでスープや汁物が合うのですが、戻し汁を煮汁に使えば同じこと。
ごぼうも冷やす性質なので、冷え性の人は生姜など温める食材を合わせてなかったことにすることも必要ですが、金針菜とマコモダケやごぼうとの組み合わせは、血に関わる女性の不調におすすめ薬膳料理と言えます。
金針菜は油との相性が良いので、きんぴらのように先に油で炒めてから煮るのが良いです。
絶品!黒米だけのもちもちご飯
エイジングに関わる五臓の腎のための色は黒。
なので、黒い食材はよく使います。
黒豆、黒ごま、黒きくらげ、黒酢などがそれ。
黒米はもち米で玄米なので、浸水時間を多めにして2合の白米に大さじ1杯くらい入れて炊くと、薄い紫色のご飯が炊けます。
1時間くらい浸水しても芯が残るのが嫌だった黒米。
これは黒米だけで炊いたご飯なのに、ふっくらもちもちして美味しい!
こんなに美味しく炊く方法を教えていただこうとしたら、やはりいろいろ試行錯誤されていて、全部は教えていただけませんでした。
ただ、研ぐときにしっかり米と米をこすり合わせて少し傷をつけるのがコツだとのこと。その方が水を含みやすいからですね。
一度ここまで黒いご飯を炊いてみたいのでトライしてみます。
ちなみに赤米はうるち米で、黒米はもち米だそうです。
なので、炊きあがりが違いますよ。
冷やす食材を使ったシャーベット
夏の和食のデザートとして寒天が出ることがよくあります。
寒天は強く体を冷やす性質なので、夏場のデザートには良いのですが、もともと冷え性だったり胃腸が冷えやすい人が寒天を食べるとお腹を下すことがあります。
脳天まで冷やすから寒天と習いました(笑)
天草なので食物繊維も豊富ですからお腹が弱い人がお腹いっぱい食べた後は危険かもしれません。
今回珍しいデザートが出ました。
ドクダミのシャーベット!!
左端がそれです。
ドクダミの香りや味はたぶん抹茶で弱められていたような。
ドクダミは十薬と言われる生薬です。解毒作用が強く便通促進効果が高いのです。
そのため先ほどの寒天と同じようにお腹が冷える人はシャーベットになったドクダミには気をつけた方が良いかもしれません。
もともとお腹が冷えている人は注意ですが。
右端にあるのは甘酒です。
甘酒は消化を促進させてお腹を温めます。
なので、一応デザートではドクダミシャーベットの冷やす性質は甘酒でなかったことになっていると考えます。
ただ、このお料理には大和当帰の葉やよもぎなど温める性質を持つ葉の天ぷらも出たので、バランス的には冷やし過ぎにはならないでしょう。
とにかく、様々な薬草や食材を使って色どり良く作られたお膳。
バランスよくの一つは色も緑・赤・黄色・白・黒の五色を使うということになります。
五色は五臓それぞれに良いと言う食材。
なかなかここまで準備することはできないので堪能させていただきました。
日本最古の薬草園見学は明日レポ―トします。
【関連記事】
なかったことにする薬膳が学べる7日間の無料メール講座を配信中です。下のバナーをクリックしてお申込みください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?