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生まれながらのファンブラー【交流企画:ガーデン・ドール】


「こんにちは、アルゴ先生。的あて5回やってみたいんだ……いいかな?」


学園祭が始まって、機構魔機構獣の討伐も終わって。
ヤクノジはやっとあちらこちらの出店を回ろうと思う気になった。

学園祭が始まってすぐに出店は出したのだが、マギアビーストが映画館で好き勝手している状況は止めねばならない。


そうしたこともあって、少し遅れたもののヤクノジは出店を回ることにした。


目についたのは、人型教師AIのアルゴが出している店だ。
的当て、と書いてあるテントには、片手で投げるには丁度いいサイズのボールと、少し離れた場所に板切れのような的。


「……あれって、いいのかなあ……本人じゃないからいいのか……」


木製ではあるが、その板切れを見て連想が出来ないヤクノジではない。

どう見てもセンセーを模した板切れ、センセーを模した的である。

つまり、センセーにボールを投げろということか。

本人というか本体ではないから許されるということなのだろうか。


「いらっしゃいませなのですよ~!コイン2枚貰いますなのです!」


自分より幾分背の低いアルゴにコインを渡し、ボールを受けとる。

アルゴのことは未だによく分からないというか掴みかねているが、こうして学園祭の出店を出している辺り、楽しいことは好きなのかもしれない。


「それでは5回、ボール投げてくださいなのです!」

「こういうの、初めてだから……変でも笑わないでね?」

ヤクノジはふふふ、と笑う。


秋祭りというのもあったらしいが、それはヤクノジがガーデンで目覚める前のことだった。
なので、学園祭というイベントに実は期待を寄せている。

話には聞いていたお祭りというもの。それが自分も楽しめるとは思わなかった。


「せーの!」

一投目。

「お、イイ感じなのですよ!」

集中して投げたボールは、綺麗に的へと当たる。


そうして、二投目、三投目。

「ファイトなのですよ~!」

「がんばります!」


ボールは色々な軌道を描いて、的へ当たる。
危なっかしさもあるが、それでもそれなりに。


「がんばってくださいなのです!」

「あと2回!」

アルゴの応援に頷いて、残りのボールをしっかりと握った。


そして力一杯、的に向けてボールを投げる。


そのボールは。


「ぎゃ!!!」


アルゴの頭にすこーん、と直撃した。


「あっ、わわっ!ごめんアルゴ先生!大丈夫!?」


やってしまった。


どうにも、こういう時の力加減が上手くいかないことがある。

ある程度の日常的な行動では失敗することは少ないものの、マギアビースト討伐や仮想戦闘などでその傾向があった。

日常生活に悪影響を及ぼしていないからと深く考えてはいなかったが、自覚している以上に力のコントロールが出来ていないのかもしれない。


「ちゃんと的を狙ってくださいなのです!!!」

「狙ったんですよ〜!」

ごもっともな声を上げるアルゴと、たじたじのヤクノジ。

それでも投げた最後のボールは、まだ気が動転していたのだろう。大きく軌道を歪めつつ、的に当たった。


「景品はこちらなのです!」


言われながら渡されたのは、少々というには水分が多めなアルゴ特製のラーメンパンに、折り紙で作られたラーメンどんぶりが三つであった。


「特別報酬目指してまた遊びに来てくださいなのです!」


どれもラーメンが関わる商品ばかり。
それをにこやかに渡してくれるアルゴの顔を見れば、彼が本当にラーメン好きなのだということがびしびしと伝わってくる。

アルゴのことはまだまだよく分からないところだらけだが、今日はひとつ彼のことを知った。
ラーメンに対しての真っ直ぐな熱意。
何があろうとブレそうにないその熱意を知れたことが、ヤクノジには嬉しかった。


「ありがとうございます、……ふふ、アルゴ先生って本当にラーメンが好きなんですね。今度、アルゴ先生オススメのラーメン食べてみたいです」


特別報酬は貰えなかったが、アルゴのことがひとつ知れたそれだけでもヤクノジは満足だった。
細やかなことでも……むしろ細やかなことだからこその喜び。

もらった景品を抱えて、アルゴに手を振る。


「また遊びに来ます!ありがとうございました!」


賑やかで穏やかな学園祭は、まだまだ続く。



#ガーデン・ドール
#ガーデン・ドール作品
企画運営:トロメニカ・ブルブロさん

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